ご来訪に感謝。
ところで、こんなことを思う時がないだろうか?
- 京都へ行きたい。
- ふさふさの毛玉になりたい。
- 有頂天になりたい。
ちょうどよかった!
そんな人におすすめの小説がある。
『スーパーの実演販売でおばちゃんが焼いている肉全部』と『狸』って食べちゃいたいよね
どうも、宴だよ。
全部食べちゃいけないよ。
今回は『天狗と人間と食べちゃいたいぐらい可愛い狸の物語』ということで、森見登美彦さんの『有頂天家族』をご紹介していこうと思う。
天狗と人間と食べちゃいたいぐらい可愛い狸の物語
「面白きことは良きことなり!」が口癖の矢三郎は、狸の名門・下鴨家の三男。宿敵・夷川家が幅を利かせる京都の街を、一族の誇りをかけて、兄弟たちと駆け廻る。が、家族はみんなへなちょこで、ライバル狸は底意地悪く、矢三郎が慕う天狗は落ちぶれて人間の美女にうつつをぬかす。世紀の大騒動を、ふわふわの愛で包む、傑作・毛玉ファンタジー。
筆者の森見登美彦さんは、1979年1月6日生まれ。
<主な受賞歴>
2003年『太陽の塔』で第15回日本ファンタジーノベル大賞受賞。
2007年『夜は短し歩けよ乙女』で第20回山本周五郎賞受賞。
2010年『ペンギン・ハイウェイ』で第31回日本SF大賞受賞。
2014年『聖なる怠け者の冒険』で第2回京都本大賞受賞。
2017年『夜行』で第7回広島本大賞受賞。
2019年『熱帯』で第6回高校生直木賞受賞。
<他作品>
『きつねのはなし』
『【新釈】走れメロス 他四篇』
『四畳半タイムマシンブルース』
有頂天家族
狸の世界も世知辛い。意地悪な狸にはちょっかいをだされ、天狗には傍若無人な態度をとられ、人間には食べられそうになる。
そんな狸の家族である下鴨家の面々は個性豊かなメンバーで、ジャニーズグループだったら強みになったであろうが、なんせ狸なのでしっちゃかめっちゃかするしかない。
京都中を駆け巡る天狗と人間の間に挟まれた主人公、矢三郎。一体どんな展開を見せるのかと思いきや、物語は意外な哀愁で前が見えなくなる。
家族愛といつもの森見節で描かれる狸ファンタジーは今世紀のベストマッチ大賞にノミネートされてもおかしくはないだろう。
狸の物語
人間と天狗の間にぎゅっと挟まれながらも、愉快な狸たちを、ほほほ、とセーヌ川のほとりにたたずむ貴婦人かの如く、微笑ましく眺めていたら、そうは問屋が卸さなかった。
筆者が一貫したほのぼの狸ライフを描くわけがない。
気づけば下鴨家の面々に共有されていた暗い影がそっと忍び寄り、柔道の帯のようにぎゅっとしていた絆が、乱暴に緩まり、『面白きことは良きことなり!』を合言葉に、狸らしく愉快な物語だったはずが、家族の愛を描く緊張感高まる物語へと昇華していっている。
これはやられた!
筆者の描く京都と、バカらしさと、その後にしれっと、え、何かありました? といった風情でやってくる情緒は、狸だろうが人間だろうが関係なく、ずばん! と胸を突いてくる。
- 新作のゲーム。
- マンガ原作の実写化。
- 中学時代の同級生の変貌。
下鴨家の面々
下鴨家の面々は愉快である。
融通がきかなかったり、雷が怖かったり 、上手く変化できなかったり、蛙だったり、阿呆だったり、一筋縄ではいかないけれども、そこには人間の家族では描くことのできない、狸の家族だからこそのデティールと哀愁が乱舞し、もはやパーティ会場。
彼らはきっと今日も異世界京都で絆を武器に奮闘しているのであろう。
「くたばれ!」とでも言い放ちながら。
- 口だけの政治家。
- 身勝手極まりない犯罪者。
- 黒歴史を知られている中学校の同級生。
まとめ
さて、今回は森見登美彦さんの『有頂天家族』を紹介させていただいたが、いかがだっただろうか。
下鴨家の愉快な面々。
天狗と人間。
家族愛。
筆者が狸を主人公にした時点で滅茶苦茶なことになるのではないか、と疑って読んでいたが、まぁ、たしかに滅茶苦茶といえば滅茶苦茶であるが、滅茶苦茶感動もした。狸にこんな気持ちにさせられるなんて思いもしなかった。もう滅茶苦茶だ。
狸の阿呆さ加減や天狗のいい加減さ、人間の幅広い意味での人間らしさには、胸を打たれた。そして、家族って人間だろうと狸だろうと素晴らしいものなのだな、と痛感した。下鴨家の面々に幸あれ、と願う。たぶん、「くたばれ!」って言われそうだけれども。
それでは本日はこのへんで。
ごきげんよう。
ご覧いただきありがとうございました!
ぜひ読んでみてね!