ご来訪に感謝。
ところで、こんなことを思う時がないだろうか?
- ありきたりなエッセイに飽きてきた。
- 文章を読みたいのではない、感じたいのだ。
- 苦虫を食べてみたい。
ちょうどよかった。
そんな人にオススメのエッセイがある。
町田康さんの『テースト・オブ・苦虫』だ。
『テースト・オブ・苦虫』は、エッセイという概念を崩した世界へ、頼んでもいないのに連れて行ってくれる。
会話が通じない。ひょっとしたらおかしいのは自分?「コミュニケーション・ブレイクダウン」「陽気な僕ら浮気なあんたら。ハッピーなデイズ」「反省の色って何色ですか?」ほか、日常で噛みしめる人生の味は、苦虫の味。文筆の荒法師、町田康の叫びを聞け。(「BOOK」データベースより)
『町田康』とは...
1997年 - 『くっすん大黒』でbunkamuraドゥマゴ文学賞、第19回野間文芸新人賞受賞。
2000年 - 『きれぎれ』で第123回芥川賞受賞。
2001年 - 『土間の四十八滝』で第9回萩原朔太郎賞受賞。
2002年 - 『権現の踊り子』で第28回川端康成文学賞受賞。
2005年 - 『告白』で第41回谷崎潤一郎賞受賞。
2008年 - 『宿屋めぐり』で第61回野間文芸賞受賞。
テースト・オブ・苦虫(1)とは...
作家『町田康』が感情を振り乱し綴るエッセイ。
エッセイを破壊せよ。
町田康といえば、感情を流れるようにのせた文体である。
そんな人がどんなエッセイを書くのか、溢れる好奇心を剥き出しにしてページを捲ると、もうそこには町田康が溢れかえって、祭を開催していた。
なんだ、これは。
エッセイ...であっているよね?
そこには町田康の世界観と事実が織り混ざった新たな世界が開かれていた。
最高のエンターテイメント。
どこが嘘でどこが事実なのか。
そんなことは些細な問題でしかない。
このエッセイは単純に町田康の世界を楽しむエッセイなのだから。
そして、微かに見える町田康の主張するメッセージ。
そのバランスが、このエッセイを最高のエンターテイメントに至らしめている。
こんな話がある。
出版拒否事件の顛末という話。
なんだこの出版社は、という感想なのだが、そこには町田康の出版社に対する皮肉とワールドがバランスよく展開されていて、より強い皮肉が誕生しておめでたい。
けれども、全てが事実ではないかも知れないという前提であるため、読み手としては負の感情を持たずに楽しめる。
これは町田康の発明だ。
町田康は、次世代のエジソンなのかもしれない。
中国・明代の哲学者『呂坤』は言った。
欲に従う時は生臭いものにたかるようであり、まともな事を聞くと苦虫を噛んだようになる。これは最低を極めた者である。
苦虫の味を噛みしめた一冊だった。