色鮮やかな孤独。

 
ご来訪に感謝。
ところで、こんなことを思う時がないだろうか?
 

 

  • 口笛を上手に吹きたい。
  • 白雪姫になりたい。
  • 不思議な場所へ行ってみたい。

 

ちょうどよかった。

そんな人にオススメの小説がある。

小川洋子さんの『口笛の上手な白雪姫』だ。

 

あらすじ

「大事にしてやらなくちゃ、赤ん坊は。いくら用心したって、しすぎることはない」。公衆浴場の脱衣場ではたらく小母さんは、身なりに構わず、おまけに不愛想。けれど他の誰にも真似できない多彩な口笛で、赤ん坊には愛された―。表題作をはじめ、偏愛と孤独を友とし生きる人々を描く。一筋の歩みがもたらす奇跡と恩寵が胸を打つ、全8話。(「BOOK」データベースより)

 

 口笛の上手な白雪姫

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小川洋子さんは短編集の名手である。短編を任せれば右に出るものはいないともっぱらの噂である。

 

単純な物語であるはずなのに、何かがひっかかる。なんだろうか、これは。小骨?いや、違うな。

 

小骨。

まぁ、仮に小骨としておこう。僕はその小骨に心をかきみだされる。名前の付けられない気持ちが大量発生。こいつらがポケモンだとしたならば、モンスターボールを投げまくっているのだが、この気持ちはモンスターボールではとらえることができない

 

 
それを知りたくて、また小川洋子さんの短編を読むのだが、未だにわかっていない。
 

 

不思議製造機。

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小川さんの家には不思議製造機でもあるのだろうか。こんなにも不思議を作り出すのが上手い人はそうそういない。

 

本作もやはり不思議で出来ている。些細な日常に些細な不思議。それは大きな波状効果をもたらし、僕にいろんな感情を巻き起こさせる

 

乳歯。

乳歯、という物語がある。

 

主人公は、なぜだかよく迷子になってしまう。その果てに、不可思議な体験をする。それは不謹慎ながらもある種の美しさと心奪われるものがあった

 

中々抜け出せなかった。

読了後、僕はその物語から中々抜け出せなかった。語り手や登場人物たちがいつまでも脳内を駆け巡る。主張したい何かを訴えるデモ行進のように

 

喜怒哀楽ではあらわすことのできない感情がひょっこりと現れた。

 

それは、誰だ!と激昂しても答えてくれない。

 

 
その感情をなんとなく大切にしたいと思う。
 

 

 バラエティに富んだ物語。

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他の物語に対して、少し異質だなぁ、と感じる物語があった。仮名の作家、という物語である。

 

作家との恋物語が綴られているのだが、読んでいる最中、僕は言い知れぬ不安に駆られる。そこにはちょっとした恐れと呆れも加わっていく

 

それらを咥えると。

けれども、主人公の恋の高揚と繋がり、それらを咥えると物語はキレイに彩られていく不思議。一分一秒逃さず、この不思議に浸っていたくなる。それのなんと気持ちのいいことか

 

終わり方もいいのだが、他の作品に比べると、現実味に頭を小突かれる。

 

 
小川さんの不思議の幅広さには感嘆してしまう。