ネタバレなしの書評 / 本のあれこれ

風味豊かな恋愛たち。

ご来訪に感謝。

ところで、こんな事を思う時がないだろうか。

  • とにかく恋愛がしたい。
  • 美しい文章に酔いしれたい。
  • 長編は苦手だ、短編がいい。

 

ちょうどよかった。
そんな人にオススメの小説がある。

山田詠美さんの『風味絶佳』だ

風味絶佳』は、香り豊かな恋愛物語に、頼んでもいないのに連れて行ってくれる。

 

あらすじ

「甘くとろけるもんは女の子だけじゃないんだから」70を超えてもグランマは現役ぶりを発揮する。20年目のマイルストーン的作品集。(「BOOK」データベースより)

 

『山田詠美』とは...

f:id:s-utage:20210212105924j:plain

山田詠美さんは、1959年2月8日生まれ。

1985年 - 『ベッドタイムアイズ』で第22回文藝賞を受賞。

1987年 - 『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』で第97回直木賞を受賞。

1989年 - 『風葬の教室』で第17回平林たい子文学賞を受賞。

1991年 - 『トラッシュ』で第30回女流文学賞を受賞。

1996年 - 『アニマル・ロジック』で第24回泉鏡花文学賞を受賞。

2001年 - 『A2Z』で第52回読売文学賞を受賞。

2005年 - 『風味絶佳』で第41回谷崎潤一郎賞を受賞。

2012年 - 『ジェントルマン』で第65回野間文芸賞を受賞。

2016年 - 『生鮮てるてる坊主』で第42回川端康成文学賞を受賞。

 『風味絶佳』とは...

f:id:s-utage:20210212105930j:plain

甘さと苦み、そして鼻腔を漂う風味よい恋愛短編集。

『シュガー&スパイス 〜風味絶佳〜』のタイトルで映画、『もうひとつのシュガー&スパイス』のタイトルでドラマも放送された。

 

 甘くとろける文章。

文章たちに甘くとろけてしまい、僕はチョコレートなのかもしれない、体臭がカカオになってないかしらん、と不安に駆られた。

 

これはもう技術もそうだが、山田詠美さんにしか書けないし、生まれてこない芸術作品。

その甘美な世界観は、僕の全発想力をもってしても出てきてくれはしない。

僕は死ぬまで山田詠美さんにはなれないのだ。

いや、当たり前なのだけれど。

 

とくに女性視点の表現が素晴らしい。

僕は男性なのでわかりかねる部分があるのかもしれない。

 

だとしても、その文章や情景は僕の心の片隅に、ひょい、と椅子を置いて座りだす。

 

目をつぶると、そいつらが心の中を駆け巡る。

ああ、なんという夢心地。

 

本当に美しいものは、理解できなくても、感じればいいのだと思った。

 

癖になるアトリエ。

本作は、全てが前菜のようでもあり、メインディッシュのような複雑な食感を味わえる。

それは香り豊かで、噛めば噛むほどに味わい深い。

 

アトリエ、という物語がある。

 

甘味やしょっぱさもあり、バランスのよい物語だと思っていた。

が、冒頭でそっとばら撒いていたスパイスが、忘れた頃に喉元へ駆けあがってくる。

 
苦みのような、辛みのような刺激に、ぎゃああ!と驚嘆めいたものを吐き出してしまった。

 

なのに癖になるお味。

また通いたくなる国籍不明な店員がいるタイ料理専門店のような中毒性。

 

何度でも食べたくなるような物語だった。

 

古代ギリシアの哲学者『プラトン』は言った。

f:id:s-utage:20210212105921j:plain

恋する者の狂乱は、あらゆる狂乱の中で最も幸いなるものなり。


幸いな一冊だった。