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ところで、こんなことを思う時がないだろうか?
- 芸能界って大変そう。
- アイドルが書いた小説が読んでみたい。
- NEWSはやはり加藤シゲアキ一択。
ちょうどよかった。
そんな人にオススメの小説がある。
加藤シゲアキさんの『ピンクとグレー』だ。
『ピンクとグレー』は、芸能界の一端を担う存在するかもしれない闇へと、頼んでもいないのに連れて行ってくれる。
大阪から横浜へ越してきた小学生の大貴は、マンションで同い年の真吾と出会う。性格は全く違う2人だったが惹かれあい、親友に。やがて高校生になった2人は、雑誌の読者モデルをきっかけに芸能活動をスタート。同居も始めるが、真吾だけがスターダムを駆け上がっていくことで2人の仲は決裂してしまうが…。ステージという世界の魔法、幻想に魅入られた幼なじみの2人の青年の愛と孤独を鮮やかに描いた、切ない青春小説。(「BOOK」データベースより)
『加藤シゲアキ』とは...
加藤シゲアキさんは1987年7月11日生まれ。
2003年 -『NEWSニッポン』でCDデビュー。
2014年 -『ピンクとグレー』で小説家デビュー。
2020年 -『オルタネート』で第164回直木三十五賞候補。
『ピンクとグレー』とは...
芸能界に生きた2人の苦しみや葛藤を書いた小説。
アイドルグループNEWSのメンバー『加藤シゲアキ』の処女作である。
小説を書くアイドル。
小説とは、女心と同じように難しいものである。
いざ書いてみると、話がどこか遠くの空へと昇って行って、もう帰ってくることはない。
だからこそ、僕は本作が心配で心配で、2日に1度しか熟睡することができなかった。
ところがいざ読むと、それは完全な小説。
アイドルを甘く見ていた、という先入観はあったが、忙しい最中、ここまでのものが出来上がるとは思っていなかったのだ。
過去と現在を織り交ぜる手法。
アイドルらしからぬ、文章に滲む重厚感。
ダークな雰囲気。
アイドル、加藤シゲアキの味方が180度変わってしまった。
芸能界の光と闇にクラクラする。
本作には芸能人であるが故の苦しみが、ゴロゴロと転がっている。
僕は恐ろしさで身震いし、それを拾い上げることが出来ず、呆然とそれを眺めていた。
茫然と眺めていたそれは、2人の芸能人を蝕んでいく。
気づかない内に芸能界の扉を通過していた大貴と慎吾。
やがて2人はそれぞれ違う芸能界の光と闇を垣間見る。
それは金の匂いや、闇の香りがするものではなく、もっと精神的なもの。
けれども、きっとそれが一番怖い。
芸能人としての自分はどうあるべきなのか、という迷い。
自分以外の影響で、自分が自分ではなくなっていく恐怖。
そうでなくてはいけないという葛藤。
ただただ燦然と輝いて見える芸能界だったが、それだけではなかった。
そういう煩悶を越えて、芸能人たちは輝いているのかもしれない。
現役アイドルがこういう小説を書くというのは衝撃的だ。
小説家『太宰治』は言った。
ああ、人間は、お互い何も相手をわからない、まるっきり間違って見ていながら、無二の親友のつもりでいて、一生、それに気附かず、相手が死ねば、泣いて弔詞なんかを読んでいるのではないでしょうか。
芸能界に生きた2人の生きざまが衝撃の一冊だった。