ネタバレなしの書評 / 本のあれこれ

いろんな形の恋愛短編集。

ご来訪に感謝。

ところで、こんなことを思う時がないだろうか?

  • 恋愛を見つめ直す旅に出たい。
  • 長編小説は疲れる。
  • 自分はポラリスだ。

 

ちょうどよかった。

そんな人にオススメの小説がある。

三浦しおんさんの『君はポラリス』だ。

君はポラリス』は、一筋縄ではいかない恋愛を、頼んでもいないのに教えてくれる。

 

あらすじ

どうして恋に落ちたとき、人はそれを恋だと分かるのだろう。三角関係、同性愛、片想い、禁断の愛…言葉でいくら定義しても、この地球上にどれひとつとして同じ関係性はない。けれど、人は生まれながらにして、恋を恋だと知っている―。誰かをとても大切に思うとき放たれる、ただひとつの特別な光。カタチに囚われずその光を見出し、感情の宇宙を限りなく広げる、最強の恋愛小説集。(「BOOK」データベースより)

評価:★★★★☆(星4) 

 

『三浦しをん』とは…

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1976年9月23日生まれ。

2006年 -まほろ駅前多田便利軒』で第135回直木賞を受賞。

2012年 -舟を編む』で本屋大賞。

2015年 -あの家に暮らす四人の女』で織田作之助を賞。

2018年 -ののはな通信』で第25回島清恋愛文学賞及び第7回河合隼雄物語賞を受賞。

2019年 -愛なき世界』で、作家としては初めてとなる日本植物学会賞特別賞を受賞。

 

2004年から雑誌『Cobalt』にてCobalt短編小説賞の選考委員、2008年から太宰治賞の選考委員、2009年から手塚治虫文化賞の選考委員、2012年からR-18文学賞の選考委員を務めている。

 

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いろんな形の恋愛が詰め込まれた短編集。

 

400ページの感情の宇宙は永遠に完成しない二通の手紙からはじまる。

 

2択では括れない。

恋愛は難しいものである。

まれに簡単と言ってしまう人がいるようだが、本気で底なし沼に沈めばいいと願ってやまない。

 

ではなぜ難しいのだろうか。

言ってしまえば恋愛は2択のはずである。

好きか、嫌いか。

 

だが、それは僕の四畳半ぐらいにわたる視野の狭い思い込みだった。

本作が僕に訴えかけてくるものは、好きか、嫌いか、では片づけられない慕情である。

 

2択で括れないものこそ、本当の恋愛なのかもしれない。

 

 読めば画鋲が刺さる。

痛いけれど、我慢できないほどではない。

けれど抜くと、小さな傷がついている。

それはしばらく消えてくれない。


同性を好きになってむふむふしたり。

嫁が子供の大事なものを咥えてるのを見てふがふがしたり。

実は僕は犬で人間に恋をして、わぉんと言ったり。


異性であれば簡単な恋。

けれど同性であれば、簡単に好きなんって言えない。

 

嫁が子供の大事なものを咥えている。

そんな光景を見たとしたら、場合によっては発狂ものだ。

 

もしも僕が犬だったら。

その恋は永遠に叶わない、伝わらない。


恋愛とは一概にこれが恋愛、とは言い切れない奥深いものだと、僕は本作で知ることが出来た。

奥へ行けばいくほど、難しくて複雑になっていく。


恋愛が楽しくてしょうがない人も、恋愛に愛想を尽かした人も、ぜひ本作を読んでいただきたい。

 

きっと画鋲がささったような微かな痛みと恋愛の素晴らしさを感じることが出来るだろう。

同時に切なさと儚さも。

 

アメリカの作家『ソロー』は言った。

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よりいっそう愛するより恋に対する治療法はない。

 

恋の治療になりうる一冊だった。