ネタバレなしの書評 / 本のあれこれ

人生を変えた出会いと水墨画。

ご来訪に感謝。

ところで、こんなことを思う時がないだろうか?

  • 水墨画に挑戦してみたい。
  • 新しい何かに出会いたい。
  • 線に、僕を描いてもらいたい。

 

ちょうどよかった。

そんな人にオススメの小説がある。

 砥上 裕將さんの『線は、僕を描く』だ。 

線は、僕を描く』は、美しくも凄みのある水墨画の世界に誘ってくれる。

 

あらすじ

 水墨画という「線」の芸術が、深い悲しみの中に生きる「僕」を救う。第59回メフィスト賞受賞作。

評価:★★★★★(星5) 

 

『砥上 裕將』とは...

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1984年生まれ。

2019年 -線は、僕を描く』で第59回メフィスト賞受賞。

 

大学時代に水墨画と出会い、大きな影響を受ける。 

 

『線は、僕を描く』とは...

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水墨画を通して自分を変える「僕」の物語。

 

322ページの果てのない水墨画への挑戦は、ある展覧会のアルバイトから始まる。

 

メフィスト賞らしくないメフィスト賞作品。

ミステリー系が多いメフィスト賞で、こういった小説が受賞するのは意外である。

 

僕は読む前、ほとんど情報やあらすじを見ない。

ただメフィスト賞受賞作というのは知っていた。

なので読んでいる途中で、誰か死ぬのかな、誰が死ぬんだろう、と不謹慎なことを頭に浮かべていた。

 

結局作中では誰も死ななかった。

それはそうだ、これはミステリーではなかったのだから。

 

本作は水墨画の物語である。

僕は今まで生きてきて水墨画に出会うことが一度もなかった。

 

だからこそ、水墨画の世界が衝撃的に映った。

なんて奥行きのある世界なのだろうか。

 

これもひとえに、筆者の描写力ゆえだろう。

素人の僕でさえも、わかりやすく、感じやすい表現。

描く人によって、こんなにも違いがあるものなのか、と感嘆する。

 

もし本作を見ていなければ、今後の人生で水墨画に注目することは無かったと思う。

もったいない人生をおくるところだった。

危ない、危ない。

 

 水墨画が人生を変える。

水墨画は難しいようだ。

本気で取り掛かろうと何をしようと、1年や2年で上手く描ける保証がない。

 

おそらく僕が今からやってみたところで、100年ぐらい経たないと納得するものは出来ないかもしれない。

 

主人公、青山霜介は、それを1年でやってのけた。

すごい才能だ。

いや、違う、すごい努力である。

 

彼には過去がある。

人生に多大な影響を及ぼしてしまった過去。

それは彼をいつの日か食いつくそうとしているようだった。

 

だが、水墨画に出会えた。

唐突な出会いだったけれど、水墨画と向き合うことで、彼は人生とも向き合う。

それは自分自身と物語に深みを与えていった。

 

にしても主人公は本当にラッキーな奴である。

こんなに良い人たちに囲まれているなんて。

 

僕もこれからは、些細な出会いでも大切にしようと思う。

 

 

ドイツの小説家『ハンス・カロッサ』は言った。

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 人生とは出会いであり、その招待は二度とくり返されることはない。

 

くり返されることのない出会いを大切にしようと思える一冊だった。