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ところで、こんなことを思う時がないだろうか?
- 平凡な暮らしに飽きた。
- 出会い系をやってみたい。
- やっぱホラーっていいよね。
ちょうどよかった。
そんな人にオススメの小説がある。
五十嵐 貴久さんの『リカ』だ。
妻子を愛する42歳の平凡な会社員、本間は、出来心で始めた「出会い系」で「リカ」と名乗る女性と知り合う。しかし彼女は、恐るべき“怪物”だった。長い黒髪を振り乱し、常軌を逸した手段でストーキングをするリカ。その狂気に追いつめられた本間は、意を決し怪物と対決する。単行本未発表の衝撃のエピローグがついた完全版。第2回ホラーサスペンス大賞受賞。
リカ
得体の知れない存在リカの恐怖が、主人公に襲い掛かる。
わたしリカよ。
幽霊やお化け、妖怪。明らかに「恐怖!」と叫んでしまいたくなる事象があるが、やはり一番怖いのはベタであるが人間である。
なぜなら僕たちは人間を知っている。なのにその人間が突如として知らない存在に変わった時、人は最も恐怖に陥る。知っているはずの存在がこんなことをするわけがない、どういうことなのだ、と混乱する。
本作はまさにそんな人間『リカ』の恐怖を描いている。
メールだけだと、彼女は普通の人間である。本間も僕もそう感じていたはずである。ところが、リカは変貌する。いや、最初からおかしな奴だったのだけれど。それは徐々にやってきた。
こいつやっかいな奴だな。そうか本作はこういうやっかい人間の怖さを描いているのかな。と思っていたところに、どん!とリカの恐怖がみなさん勢ぞろいで現れる。
その時の本間と僕の恐怖はどれほどのものだったか。強制的にナイアガラの滝へとダイブさせられるような、ありえない恐怖を感じた。
本間も思ったことだろう。出会い系なんかやるのではなかった、と。
出会いにはリスクがある。
今の時代だとマッチングアプリなど、比較的安全な形で出会うことができるようなものが誕生している。と言っておきながらやっていないので安全かどうかは責任が持てない。いや、本当だ。信じて。
しかし僕の若い頃に流行していた出会い系サイトというのは無法地帯。荒れに荒れていた、と聞く。待ち合わせて行ってみたら怖いお兄さんがいたとか、特徴と全然違ったとか、金をとられたとか。おいしい思いをするにはリスクと技術が必要だったのだ。
その点本間はぬかりがない。少しずつしっかりと技術を学び、慎重に出会い系をしていた。もっと学ばなければいけないことがあるだろうに。
だが、それでも出会い系に安全という絶対なものはない。本間はそれを知らなかったのだ。合掌。
男なんて、みんな最低よ!
そもそも妻子を愛している、と言いながら出会い系をする男はどうなっても自業自得である。なぜ愛しているにも関わらずそんなことをしてしまうのか。
もちろん彼の悪友の入れ知恵もある。こいつが諸悪の根源かもしれない。だが、結婚をしている、子供がいる、そういう自覚と覚悟があるのであれば強い意志が働くはずではないか。そうだそうだ。
リカとは、大切な人がいるにも関わらず出会い系をやってしまう様なよからぬ輩に天誅を与えにきた存在なのかもしれない。
いや、違うか。