2人を招いた猫。

ご来訪に感謝。

ところで、こんなことを思う時がないだろうか?

 

  • お笑いの世界を見たい。
  • 女芸人ってすごいよね。
  • 自分には夢がある。

 

ちょうどよかった。

そんな人にオススメの小説がある。

山本 幸久さんの『笑う招き猫』だ。

あらすじ

男と並んで愛誓うより、女と並んで笑いを取る、それが二人のしあわせなのだ!駆け出しの漫才コンビ、『アカコとヒトミ』。超貧乏で彼氏なし、初ライブは全く受けずに大失敗。おまけにセクハラ野郎の先輩芸人を殴り倒して大目玉。今はぜんぜんさえないけれど、いつかはきっと大舞台。体に浴びます大爆笑―。夢と笑いとパワーあふれる傑作青春小説。第16回小説すばる新人賞受賞作。(「BOOK」データベースより)

 笑う招き猫

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人生とは縁である。些細な出会いだったとしても気づけば心の支えになっていたり、自分を高めてくれる人がいる。この人に出会えてよかったな。そう思われてい一心で、僕は今日もいい人を演じている。誰か優しくさせてくれ。

 
アカコとヒトミ。彼女たちの出会いは特別で愛おしい。招き猫が招いてくれた雑な奇跡は2人をお笑いの舞台へと導いていく。けれどその道のりは簡単ではない。嫌なことも裏切られることもある。自分たちの笑いに迷う事もあれば、事務所の意向だってある。

 
お笑いの道は険しいジャングルだ。どこを歩いているのか、時としてわからなくなることもあるだろう。でもアカコとヒトミなら、笑いながら、たまに歌いながら抜ることが出来るのではないだろうか。


いちファンとして、2人を応援せずにはいられない。

 

女芸人なめたらあかん。

お笑いの世界の内情をよく知らないが、漠然としたイメージではやはり男社会な気がする。本作でもそんなイメージを増長させるような場面があった。男とは馬鹿な生き物で、調子にのる時はとことん調子にのってしまうのだ。

 
そんな中に入り込む女子2人。居心地いいわけがない。世渡り上手な人もいるのだろうが、アカコとヒトミは生憎そうではない。波乱の幕開けである。

 
けれど、それでも2人は自分たちの道を進む。人としても芸人としても、その姿勢には無類のカッコよさを感じた。

 
危うさも感じるけれど。

 

 人生は紆余曲折。

芸能人全般に言えることかもしれないが、彼らは1人の力で売れるわけではない。どんなにすごい才能を保持していても、知られなければないも同じである。相方はもちろんのこと、マネージャーや社長、芸人仲間、いろんな人の支えがなければ、その世界で生きていくのは困難だ。

 
アカコとヒトミにも信頼を寄せる人がいた。この人と一緒にやっていけば大丈夫だと思っていた。けれどこういう世界。事情があればやめたり、消えてしまったりするのはよくあることだ。

 
切ないけれど、それぞれの人生が最終的には豊かであるように。

そう招き猫にはお願いしたい。

 

歌は2人を繋ぐ。

アカコとヒトミは歌う。いや、別に彼女たちはリズム芸をやっているわけではない。

プライベートで歌う。ビブラートではない、プライベートだ。

 
即興ならではのオリジリティと面白さを秘めた歌は、どんな時も2人を繋ぐ。そして物語に笑いと柔らかな丸みを加算するのだ。

 
例え売れて状況が変わったとしても、2人には聴けば聴くほど訳のわからぬ歌を歌い続けてほしいと、切に思う。