幻想的な闇に覆いかぶさる光。

ご来訪に感謝。

ところで、こんなことを思う時がないだろうか?

 

  • 闇の中にいると落ち着くなぁ。
  • 光が眩しくて目も開けられない。
  • おとぎ話のように生きたい。

 

ちょうどよかった。

そんな人にオススメの小説がある。

服部 まゆみさんの『この闇と光』だ。

あらすじ

森の奥に囚われた盲目の王女・レイアは、父王の愛と美しいドレスや花、物語に囲まれて育てられた…はずだった。ある日そのすべてが奪われ、混乱の中で明らかになったのは恐るべき事実で―。今まで信じていた世界そのものが、すべて虚構だったのか?随所に張りめぐらされた緻密な伏線と、予測不可能な本当の真相。幻想と現実が混ざり合い、迎えた衝撃の結末とは!?至上の美を誇るゴシックミステリ!(「BOOK」データベースより)

この光と闇

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闇と光は表裏一体。

紙1枚ぐらいの薄さで分け隔てられた境界線を越えれば、そこは闇であり、光である。

けれど闇の中に光は存在できないし、逆もまた然り。

同一線上にありながら、その2つは交わることが出来ない。

 

ただ人間が体感する闇と光は、そうくっきりと分け隔てることが出来ない。

闇を経験したのなら、光に入っても、その闇は継続したままだ。

 

闇は暗い。

全てを真っ黒に包み、そこには何もない。

そんなネガティブなイメージが付きまとうが、レイアが体験した闇は一概にそうとは言えない。

 

森の奥に囚われ、盲目であるレイア。

その境遇は辛いものであったかもしれないが、父のあり余る愛は闇に囲まれてるレイアを照らした。

それは暖かい、虚構のような光だ。

 

しかし、レイアの闇は突如として終わる。

敵国が攻めてきたのだ。

 

夢見るおっさん。

美しい世界感というのは、それだけで心を掴まれる。

闇の中、レイアが生きた世界はおとぎ話のように幻想的だった。

 

素敵なドレスを身にまとい、国の諍いにより囚われの身となったレイア。

兵士に見つかると危険が及ぶため、父がいない時は軟禁状態。

花や物語、ぬいぐるみや飼い犬が彼女を優しく包む。

 

僕が夢見る少女であればうっとりとしていたことだろう。

いや、おっさんである僕でもうっとりしてしまう。

 

おとぎ話の世界で生きるレイア。

だが、光は虎視眈々と、レイアをあざ笑うように近づいていた。

 

光も闇、闇も光。

光は明るい陽。

人生で例えれば、幸せのイメージ。

 

闇は暗い陰。

人生で例えれば、どん底のイメージ。

 

レイアにとって、それは逆だったのかもしれない。

いきなり浴びてしまった光に戸惑い、闇に焦がれる。

中二病患者の末期症状のようであるが、レイアには深刻な問題だった。

 

たしかなものなんて何もないけれど。

小説は嘘の世界。

 

僕たち読み手はその中に入りこみ、それを体感し、本当だったと思い込む。

そういう前提で騙されもするし、感動もする。

 

本作は僕を惑わせた。

明瞭な答えではないが、この世界がぐらつく音を聞いた。

 

この物語は本当にあったことなのだろうか。

 

レイアが光の中で見たもの。

そして、闇の中で見たもの。

 

それはたしかな形あるものだったのだろうか。