小学四年生の刺激的な遊び。

 
ご来訪に感謝。
ところで、こんなことを思う時がないだろうか?
 
  • 神様を信じている。
  • 小学生に目がない。
  • 真実はいつも1つだ。

 

ちょうどよかった。

そんな人にオススメの小説がある。

麻耶 雄嵩さんの『神様ゲーム』だ。

 

あらすじ

小学四年生の芳雄の住む神降市で、連続して残酷で意味ありげな猫殺害事件が発生。芳雄は同級生と結成した探偵団で犯人捜しをはじめることにした。そんな時、転校してきたばかりのクラスメイト鈴木君に、「ぼくは神様なんだ。猫殺しの犯人も知っているよ。」と明かされる。大嘘つき?それとも何かのゲーム?数日後、芳雄たちは探偵団の本部として使っていた古い屋敷で死体を発見する。猫殺し犯がついに殺人を?芳雄は「神様」に真実を教えてほしいと頼むのだが…。(「BOOK」データベースより)

 

神様ゲーム

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神様は何でも知っている。今年のM1の優勝者も、サザエさんのたまの声が誰なのかも、名探偵コナンがいつ終わるのかも、あの事件の犯人までも。

 

全知全能の存在に不可能はない。ただ、私は神だ、と自称する人にはご用心だ。そいつは人を騙すことしかできない

 

物語において。

物語において神という存在はジョーカーである。何でもできるからこそ使いどころが難しい。場合によっては物語が破綻してしまう。

 

とくにミステリーにおいては最悪だ。せっかく主人公が必死の思いで犯人を捜しているというのに、神が「あいつだよ」と発しただけですべては終わる。興ざめだ。神は未来は読めても、空気は読めない

 

でも、待てよ。

でも、待てよ、これ逆におもしろいのではないだろうか。これを逆手にとれないだろうか。そんな試みで筆者が本作を書いたのかはわからないが、神様という存在をミステリーに組み込む大胆さは、金魚すくいでとった金魚を10年間育て上げたような気持ちになる。驚きだ。

 

だが一番驚いたのは小学四年生の芳雄だろう。いきなり「神様なんだ」と言われても「わかりました、信じます」とはさすがにならない。

 

この半信半疑な部分が物語を複雑にし、やきもきさせる。頼むからはっきり言ってくれ。お願いです。

 

しかし残念ながら本作の神様は善人ではない。気まぐれにもほどがある。それはそうだ。神様が善人であれば、世界中の凶悪犯罪の犯人を知らせる行脚に出て、世界中平和だね、ちゃんちゃん、となるがそうは問屋が卸さない。

 

 
鈴木君は本当に神様なのだろうか?
 

 

描かれた小学生。

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子供の頃に戻りたい。あの可愛くて純粋で何一つ間違いを犯していない時に。願い続ければ夢は叶うと教わって生きてきたので、寝る前に願ってみるも未だに夢は叶えられていない。神様どうしてでしょうか。

 

本作は徹底して小学生というものを描いている。誕生日を喜び、プレゼントに期待を寄せる。同級生と好きなアニメの話をし、その真似をし、Tシャツを着て、一喜一憂する。

 

ああ、やはりこの時代に戻りたい、と改めて思う。羨ましい。僕もアニメのTシャツを着て秘密基地でだべりたい

 

 けれど僕は忘れていた。

けれど僕は忘れていた。彼らは悪魔でもあるということを

 

純粋であるがゆえの残酷さ。大人からすればわかりあえるようなことを、彼らは納得せずに拒絶する。あっけなく人を傷つけたりもする。それが一生取り戻せない傷になろうとも

 

僕が芳雄であったならトラウマを通り越して、銀河の果てまでイッテQだ

 

 
芳雄の心のダメージは計り知れない。
 

 

いろんなところから撃たれまくる芳雄。

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鈴木君は探偵ではない。神だ。真実を提示することはできるが、その道筋は語らない。聞けば言うのだろうけれど、芳雄は小学四年生。頭もメンタルも強くない。

 

芳雄と僕は、真実までの道中を埋めなければいけない。なぜこんなことがおきたのか、なぜこうなってしまったのか。

 

小学四年生並の僕と芳雄は悪戦苦闘。そんなことが起きるわけないではないか。そう訝るも、事実は無情。芳雄は現実に叩きつけられてしまう

 

意味の分からない真実に芳雄は静かに眼を閉じた

 

 
誰か芳雄を幸せにしてあげてほしい。