
ところで、こんなことを思う時がないだろうか?
- 踊りたい、踊り続けたい。
- 勢いって大事だよね。
- 過去に押しつぶされそう。
ちょうどよかった。
そんな人にオススメの小説がある。
岡崎 隼人さんの『少女は踊る暗い腹の中踊る』だ。
連続乳児誘拐事件に震撼する岡山市内で、コインランドリー管理の仕事をしながら、無為な日々を消化する北原結平・19歳。自らが犯した過去の“罪”に囚われ続け、後悔に塗れていた。だが、深夜のコンビニで出会ったセーラー服の少女・蒼以によって、孤独な日常が一変する。正体不明のシリアルキラー“ウサガワ”の出現。過去の出来事のフラッシュバック。暴走する感情。溢れ出す抑圧。一連の事件の奥に潜む更なる闇。結平も蒼以もあなたも、もう後戻りはできない!!第34回メフィスト賞受賞!子供たちのダークサイドを抉る青春ノワールの進化型デビュー。(「BOOK」データベースより)
少女は踊る暗い腹の中踊る
何事にも勢いというのは大切なことである。大好きなあの娘への告白も、プロポーズも、走り高跳びも、キャンプファイヤーも、勢いがなければ踏みきれないし、火がつかない。
火がつかないキャンプファイヤー。それはただのキャンプですらない。木で出来た芸術と言い張る何かだ。そんな虚しいことがあっていいのだろうか。
勢いのまま綴った怪作。
本作は筆者の感情を勢いのまま綴った怪作である。ジメジメした暗い雰囲気を分断するかのような勢いある展開。それはたまに僕を唖然ともさせる。
けれど関係ない。何もかも吹き飛ばす勢いが物語を引っ張っていく。なんて凄まじい力なんだろうか。

縛られる過去。
過去の思い出は人を、これからオーブンに入れるローストビーフのように縛る。ぎゅうぎゅうにされて身動きが取れない。
それが再び目の前にリプレイ映像のように現れたらどうするだろう。やはり同じように身動きが取れず、立ちすくんでしまうような気がする。
けれど北原結平は立ち向かう。傲慢なやり方だとしても、身勝手な行動だとしてもぶっ飛ばしていく。へばりつく過去を吹き飛ばそうとするかのように。

未来へ。
北原結平。
セーラー服の少女、蒼似。
シリアルキラー、ウサガワ。
三者三様の過去は脅迫概念のように、それぞれを掻き立てる。そして物語は動き出す。
結平とウサガワの行動は異常を極めている。だが、それも全て過去のためであるし、彼らなりに未来へ向かうためでもある。
今を後悔しないために過去がある。だから彼らの行動は正しい。
もし間違っていたとしても、それは未来が決めることだ。今には関係がない。
だから思うがままに突き進むといい。
