どうか届きますように。

 
ご来訪に感謝。
ところで、こんなことを思う時がないだろうか?
 

 

  • 家族がうっせぇわ。
  • 夫婦とは何なんだろうか。
  • 思えば言い訳ばかりの人生だった。

 

ちょうどよかった。

そんな人にオススメの小説がある。

西川 美和さんの『永い言い訳』だ。

 

あらすじ

人気作家の津村啓こと衣笠幸夫は、妻が旅先で不慮の事故に遭い、親友とともに亡くなったと知らせを受ける。悲劇の主人公を装うことしかできない幸夫は、妻の親友の夫・陽一に、子供たちの世話を申し出た。妻を亡くした男と、母を亡くした子供たち。その不思議な出会いから、「新しい家族」の物語が動きはじめる。(「BOOK」データベースより)

 

永い言い訳

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僕は結婚をしているのだが、どうして結婚したの? と問われると閉口するしかない。すいません、してしまいました、と結婚に憧憬の念を抱く方々に謝罪行脚をしたいぐらいである

 

結婚する時は迷った。

そんなことしても何にもならないので、やむなく諦めるが、やはり結婚する時は迷ったし、してしまった今でも考えることがある。


結婚とは何か。

夫婦とは何か。

 
本作は、その悩みをズバッと麻酔銃を巧みの技巧で扱う名探偵のように解決してくれるわけではないが、読みながら、共に考えさせられてしまった。自然と僕の中に主人公が宿る。

 

ただ一緒に生きていくわけではない。

夫婦とは、ただ一緒に生きていくわけではない。それも1つの指針ではあるのだけれど、大事なのは、そうするためにどう生きていくか、なのだ。

 

たかを括って。

親や兄弟にもいえることだが、一緒に居る時間が長ければ長い程、人は愛することを忘れ怠る。まだ時間があると、たかを括って。

 
けれど、もし愛すべき人がある日急に消えてしまったら、僕らは愛を伝えられないし、そのことを思い出せないかもしれない。

 
本作は、単純すぎて中々気づけなかった大切なことを教えてくれた。

 

 
目からうろこが滂沱と溢れて湖が出来そうだ。
 

 

 生きているから。

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本作はいろんな登場人物の視点から主人公、衣笠幸夫が深掘りされていく。で、わかったのが幸夫は愉快な男である、ということだ。

 

その個性は。

その個性は本作の細部にまで染み渡り、重いテーマであるにも関わらず読みやすい作品に昇華させている

 

小説家たる者面白くなければいけない矜持が彼をそうさせたのか、それとも天性のものなのかはわからないが。

 

常に愉快なわけではない。

そんな彼も、常に愉快なわけではない。

 
妻が亡くなった時は、まるで時が止まってしまったかのように感情を忘れてしまう。愛することを行なった罰である。けれども同じ境遇の家族と出会い、幸夫は次第に気づき始める。

 

残されたメッセージ。

家族たちとの触れ合い、亡き妻の面影、残されたメッセージ。それらは幸夫を、ろくでなしブルースぐらいの勢いでボコボコにするちょっちゃらぁ

 
痛めつけられた幸夫の心情は計り知れない。けれどそれは、味わなければいけない痛みである。やっとそれに気いたのだ。

 

どんなに後悔しても。

だが、愛するべきだった人はもういない。どんなに後悔しても、どんなに心変わりしても、届かない。全ては生きている側の独りよがりになってしまう。

 
それでも生きている人間は、前を向かなければいけない。不思議な出会いは幸夫を変えていく

 
そんな幸夫の力強く前向きな、永い言い訳は、除夜の鐘を大砲で爆撃したかのように、僕の心の中に響いて、鳴り止まない

 

 
がんばれ幸夫。