熱くても熱くても。

 
ご来訪に感謝。
ところで、こんなことを思う時がないだろうか?
 

 

  • トンネルを愛している。
  • 熱い場所が好きだ。
  • 命がけの仕事に就きたい。

 

ちょうどよかった。

そんな人にオススメの小説がある。

吉村 昭さんの『高熱隧道』だ。

 

あらすじ

黒部第三発電所――昭和11年8月着工、昭和15年11月完工。人間の侵入を拒み続けた嶮岨な峡谷の、岩盤最高温度165度という高熱地帯に、隧道(トンネル)を掘鑿する難工事であった。犠牲者は300余名を数えた。トンネル貫通への情熱にとり憑かれた男たちの執念と、予測もつかぬ大自然の猛威とが対決する異様な時空を、綿密な取材と調査で再現して、極限状況における人間の姿を描破した記録文学。(「BOOK」データベースより)

 

高熱隧道

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車やバスで長旅をすると、やがてトンネルに出くわす。

 

子供の頃なんかは、徐々に近づいてくる暗闇に異世界の入り口のような、怖さとワクワクが入り混じった、怖ワクさんが僕の頭の中でゴロリと一緒に工作をしていた。かわいい思い出だ。

 

しかし、大人になるとそんな純粋な気持ちは下水道に吐き捨ててしまい、なんだ、ただの通過ポイントか、ぐらい味気ない気持ちしか湧いてこなくなった。嫌な大人代表である。

 

トンネルに対する思いは一転。

そんなトンネルであるが、本作を見て僕のトンネルに対する思いは一転怖ワクさんという謎のキャラクターを作り出してしまったのが、申し訳なくなった。こんな気持ちでいたことが居た堪れない。

 

今となれば。

今となれば技術も発展しているだろうから、危険なことはほとんどないのだろう。トンネル工事で使用したダイナマイトが自然発火し~というニュースを僕は聞いたことがない。

 

昔は違う。

でも昔は違う。もちろん全てのトンネル工事が危険なものではなかったとは思う。だが、本作の状況は命がけでトンネルを掘らなければいけなかった。

 

多くの犠牲者を出しながらも進んでいったトンネル工事。それを思うと、当たり前に見えていたトンネルが、少しだけ怖くて切ないものに見えてくる。

 

 
トンネルの見方が変わった。
 

 

 やるしかなかった工事。

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岩盤最高温度165度という高熱地帯。当たり前だがそんな場所にトンネルを掘るのは、例え現代だろうと危険なのではないだろうか。サウナであればクレームが入るのではないだろうか。

 

襲い掛かる様々な試練。

人間の限界。

掘るために使用するダイナマイトの自然発火。

魔術のような大自然の驚異。

 

襲い掛かる様々な試練が、いたずらに犠牲者を増やしていく。

 

この光景は地獄絵図。

なんでこんなことをしなければならないのか。身もだえるほどの苦しみと恐怖が伝わり、僕は自然と歯を食いしばっていた。この光景は地獄絵図だ。

 

無情にも進んでいく。

それでも彼らにはトンネルを掘る理由があった。現代からすると、それは馬鹿げているかもしれない。だが、当時の状況と事情は、彼らに命をかけさせてしまった。

 

臨場感と緊迫感にあふれた命がけの工事に、僕の胸は何度も熱くなる。そして、試練を乗り越えながらも工事は、無情にも進んでいく。

 

 
多くの犠牲者を出しながら。