本と宴





残酷なのは人か、それ以外か。

 
ご来訪に感謝。
ところで、こんなことを思う時がないだろうか?
 

 

  • 神様以外何も信じられない。
  • 後味が悪い話は最高だ。
  • 犯人は○○だと思う。

 

ちょうどよかった。

そんな人にオススメの小説がある。

麻耶 雄嵩さんの『さよなら神様』だ。

 

あらすじ

「犯人は○○だよ」。クラスメイトの鈴木太郎の情報は絶対に正しい。やつは神様なのだから。神様の残酷なご託宣を覆すべく、久遠小探偵団は事件の捜査に乗り出すが…。衝撃的な展開と後味の悪さでミステリ界を震撼させ、本格ミステリ大賞に輝いた超話題作。他の追随を許さぬ超絶推理の頂点がここに!第15回本格ミステリ大賞受賞。(「BOOK」データベースより)

 

さよなら神様

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こんな時、神様さえいれば。そう思ったことが今までに100回ぐらいある。いや、それでは済まないかもしれない。

 

テスト前日に油断して熟睡してしまった時、徹夜で仮免に挑んだ時、5時間ぐらい寝坊するという冴えない奇跡を起こした時。神様がいればこの極地をのり切れる。

 

だって神様は全知全能なのだから。

 

神様は困った人の味方。

本作は僕に「そんなことはないよ」と平坦な声で語りかけてくる。そんな馬鹿な。神様は困った人の味方ではないか。

 

いやいやいや。それは人間が神様に勝手に押し付けた傲慢な願望。神様には神様の意思がある。全てを知っていても、全てを教えてくれるわけではない。

 

自称神様。

自称神様の鈴木太郎。彼は人間に「犯人は○○だよ」と、心なしか楽しそうに告げる。けれど、それ以上は教えない。なぜ? どうやって? 人間の感情でいえば気まぐれな神様はそれを教えないし、人間も聞くことはない。

 

そもそも、いきなり目の前に「神様です」と宣う人が現れたらどうだろう、簡単に信じるだろうか。僕は信じないが、ひょっとしたら、という気持ちはこびり付いたシンクの汚れのように拭えない。久遠小探偵団もそうだった。

 

挑戦状。

久遠小探偵団は「犯人は○○だよ」の宣言を挑戦状だとでも思うかのように真相へと立ち向かい、インディージョーンズのように駆け回る。そして、神様が仕組んだ史上最悪の暇つぶしなのでは、と訝るような残酷な現実に翻弄され、壊されていく。

 

 
もう聴こえないラジオのように。
 

 

後味の悪い物語。

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料理と物語は後味が大切だ。後味がさっぱりしていると芽生えた春の息吹のようなものを感じ、辛いと地獄のような苦しみを味わい、酸っぱければ梅干しのような顔になり、しょっぱければ人生の難しさを知る。

 

人生の難しさを知った。

久遠小探偵団は小学生にして人生の難しさを知った。その味はしょっぱいすぎるし、苦すぎるしで、後味最悪である。しかも、ずっと舌に残りなかなか消えてくれない。こうなったら、この後味と共に生きていくしかないのかもしれない。

 

小学生が口にしてはいけないアルコールのような苦み。どう足掻いても逆らえない運命。絶対的な神の提示。神に照らされた人間の発露。それらは久遠小探偵団に容赦ない刃となって襲い掛かる。

 

神様は何もしていない。

神様は何もしていない。しているのかもしれないが、そんな素振りは見られない。ただ久遠小探偵団に知らないでもよかった真実を与え、翻弄しただけだ。それが最高に後味を悪くさせた、悪ふざけなのだけれども。

 

久遠小探偵団は、よからぬ神様に関わってしまったようだ。

 

 
残念でした♥