名もなき色、終わらない色。

 
ご来訪に感謝。
ところで、こんなことを思う時がないだろうか?
 

 

  • 青ってすんごい素敵な色だ。
  • ボクサーになりたい。
  • 何にでも名前をつけるのはナンセンスだ。

 

ちょうどよかった。

そんな人にオススメの小説がある。

町屋 良平さんの『青が破れる』だ。

 

あらすじ

ボクサー志望のおれは、友達のハルオから「もう長くない」という彼女・とう子の見舞いへひとりで行ってくれと頼まれる。ジムでは才能あるボクサー・梅生とのスパーを重ねる日々。とう子との距離が縮まる一方で、夫子のいる恋人・夏澄とは徐々にすれ違ってゆくが…。(「BOOK」データベースより)

 

青が破れる

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小説は僕にいろんな感情を与えてくれるびっくり箱である。喜怒哀楽はもちろんのこと、突然箱から飛び出してくる蛇のような展開や真実がそこには詰まっている。

 
ところが、たまによくわからないものが混入されていたりもする。なんだろうか、これは。感情だとは思うけれど、どうしよう、名前が付けられない。

 

名前が付けられない感情。

本作はその名前が付けられない感情を与えてくれる。本来頼んでもいないのだからクレームを入れるところなのだが、不思議なことに、僕はずっとこの感情を求めていたかのように、クレームの電話を置いた。

 
主人公であるボクサーのひとは青かった。その色にはいろんな意味が含まれるが、人はいずれその色から抜け出して、違う色でそこを塗り替えなければいけない。正直に言えばよくわからないけれど、そうしなければいけないような気がする。

 

青は終わらなかった。

だが、彼の青は終わらなかった。強制的に破れたけれど、まだ続いている。それが本当に青のままなのかはよくわからない。違うとしたならば何色なのか、名前がつけられない。

 
ハルオ、とう子、梅生、夏澄、おれ。彼らの物語は、彼らが過ごした青い時間のような文体にのり、流れていく。いつか終わってしまう、その日まで。

 

 
は?
 

 

とりあえず走る。

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生活が嫌だ。苦しい。ひょっとすると、ここは土の中なのかもしれない。酸素が足りない気がしたが、どうやら気のせいだったようだ。ここには空気が存在している。空気は僕と彼を、締め付けて離さない。

 

運命は暴力的に。

生きていることは苦痛の連続でもある。もう嫌だ。こんな自分もう嫌だ。主人公はそんな風に嘆いているわけではないが、一周回って、既に何かを諦めているような雰囲気を纏っている。

 
一見、全て受け入れますよ、というように器が大きくも見えるが、そんな器はそもそも存在しない。すでに溢れてどうしようもなくなっている。それは主人公の弱さでもある。

 
そして、運命は暴力的に彼にきばをむく。暴力反対を説いてみるけれど、全く耳をかさず、理不尽な振る舞いをおこす。その傍若無人ぶりには声を失う。

 

名前のわからない未来へ。

結局、彼は青に引っ張られているのか、それとも青を受け入れようとしているのか。それはわからない。だが、彼の名前がわからない微妙な変化は、名前のわからない未来へとひた走っていく。

 
彼も一緒に走る。そうすれ何も考えなくて済むのだから。

 

 
ヨーイドン!