本と宴





この種の犯罪は存在しない。

 
ご来訪に感謝。
ところで、こんなことを思う時がないだろうか?
 

 

  • ソ連の実態はどうなっていたのだろう。
  • 凶悪な殺人鬼を知りたい。
  • 危ない橋を渡りたい。

 

ちょうどよかった。

そんな人にオススメの小説がある。

トム・ロブ-スミスさんの『チャイルド44』だ。

 

あらすじ

スターリン体制下のソ連。国家保安省の敏腕捜査官レオ・デミドフは、あるスパイ容疑者の拘束に成功する。だが、この機に乗じた狡猾な副官の計略にはまり、妻ともども片田舎の民警へと追放される。そこで発見された惨殺体の状況は、かつて彼が事故と遺族を説得した少年の遺体に酷似していた…。ソ連に実在した大量殺人犯に着想を得て、世界を震撼させた超新星の鮮烈なデビュー作。(「BOOK」データベースより)

 

チャイルド44

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「連続殺人は資本主義の弊害によるものであり、この種の犯罪は存在しない」

 

これは当時のソビエト連邦が信じ切っていた見解である。

 

どこにそんな根拠があったのか。不思議で仕方ないのだが、そのせいで身の毛もよだつシリアルキラーが野放しにされ、ソ連を駆け回った。そいつの名前はアンドレイ・チカチーロアンドレイ・チカチーロ - Wikipedia)。

 

チカチ―ロを踏襲。

その事件を元に作られたのが本作である。

 

もちろんチカチ―ロご本人が出演しているわけではないが、本作に出てくるシリアルキラーは明らかにチカチ―ロを踏襲している。

 

子供をもてあそぶように追い詰める悪魔のような残虐性。ソ連全土にわたる犯行。50を超える被害者。その所業に感じるものは、今のところ恐怖以外見当たらない。そしてもっと恐怖なのは、国がその連続殺人を認めていなかったことだ。

 

こんなモンスターを野放しにしていた国があった、という事実は僕に驚き衝撃を与えた。

 

 
恐ろしいことである。
 

 

レオ・デミドフの戦い。

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主人公レオ・デミドフ。彼に襲い掛かる国家レベルの試練は恐るべきものばかりだった。

 

序盤の彼は良心というものを持ちながらも、国に汚染されていた。こんな国あったら嫌だランキング1位に選ばれそうな国の思想は、もちろん狂っていたので、彼も狂っていたのだろう。

 

その狂いぶりを読者に提示しながらも、僕は、レオならきっと変われるよ、と信じていた。彼には染まり切っていない、心の芯の中に何かがあるような気がしたからだ。

 

そしてそれが、ぶぉん! と爆発した時、彼は覚醒する。あれ、この国おかしくない? その疑問が、レオとシリアルキラーを繋げていく。

 

インディージョーンズのように。

物語後半の一体これからどうなってしまうんだ感。レオの変化。追い詰められていく状況。

 

当時のソ連を背景にシリアルキラーを追うレオの姿は、まるでインディージョーンズのようにかっこよかった。

 

 
そこには悲しみもあるけれど。