手紙が繋ぐスイカジュース。

 
ご来訪に感謝。
ところで、こんなことを思う時がないだろうか?
 

 

  • 七つの子が好き。
  • 文通をしてみたい。
  • 日常に彩りを添えたい。

 

ちょうどよかった。

そんな人にオススメの小説がある。

加納 朋子さんの『ななつのこ』だ。

 

あらすじ

表紙に惹かれて手にした『ななつのこ』にぞっこん惚れ込んだ駒子は、ファンレターを書こうと思い立つ。わが町のトピック「スイカジュース事件」をそこはかとなく綴ったところ、意外にも作家本人から返事が。しかも、例の事件に客観的な光を当て、ものの見事に実像を浮かび上がらせる内容だった―。こうして始まった手紙の往復が、駒子の賑わしい毎日に新たな彩りを添えていく。第3回鮎川哲也賞受賞作。(「BOOK」データベースより)

 

ななつのこ

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平坦な畦道のような毎日がちょっとしたことで、ガラリと変わることがある。駒子の場合は『ななつのこ』だった。

 
児童文学のようで推理小説の素振りを見せる『ななつのこ』は、僕と駒子を魅了していく。

 

ゆっくりと浸れる温度。

ノスタルジックな世界観と主人公と不思議な女性。ファンタジーとリアルを融合したようなアンバランスさは、お風呂でいえばちょうど良いお湯加減。熱さを求める江戸っ子のおじさまたちには申し訳ないが、ゆっくりと浸れる温度だ。

 
いつまでもそこにいたいと思ったが、駒子の現実世界は慌ただしく蠢く。積み重なる謎は駒子と『ななつのこ』の作家を繋いだ。

 

全ては繋がっていた。

数々の事件と不思議な関係は、やがて1つに纏まり、駒子の胸を撫で下ろす。

 
ああ。全ては繋がっていたのか。驚きのような安堵のような、まるで『ななつのこ』のような気持ちが、僕の中をゆっくりと歩き回っている。

 

 
 胎児に追い抜かされるぐらいのスピードで。
 

 

手紙が伝えるもの。

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メールやLINEが蔓延る現代社会。確かに簡単に言葉を送れるし、牛丼よりも早い。便利である。しかし、何か味気ない気がしないだろうか。牛丼のように汁だくの想いがそこにないように思えてならない。ちょっとベタベタしているけれど。

 
その点、手紙というのは温かみがある。寒いこの時代にそっと差し出される温かい缶コーヒーのようにポカポカさせてくれる。

 

スイカジュース事件。

駒子のファンレターは別に強いメッセージ性があったわけでもないし、好きー! という想いが気持ち悪い程につらつら書かれていたわけでもなく、どちらかといえば「スイカジュース事件」がメインなのではないか、というもの。

 
僕は駒子から直接手紙を受け取ってはいないので、どんな字だったかとか、内容以外に慮ることが出来ない。だが、作家本人は手紙から溢れる駒子の想いというものをダイレクトに受け取っている。ああ、駒子、伝わってくるよ、駒子。こんな感じではないと思うが、それに似た気持ちをシャワーのように浴びてしまったのではないだろうか。

 
作者は想いに触れ、駒子に返事を送る。真摯にこたえた手紙だ。

 
それは第二のななつのこの始まりだった。

 

 
はじまり、はじまり。