無色透明の殺意。

 
ご来訪に感謝。
ところで、こんなことを思う時がないだろうか?
 
  • 実は自分、透明人間なんです。
  • アイドルオタクでもあります。
  • たくさんのミステリに囲まれて余生を送りたいです。

 

ちょうどよかった。

そんな人にオススメの小説がある。

それは『阿津川 辰海』さんの...

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ばーん!

 

透明人間は密室に潜むとあらすじ。

透明人間による不可能犯罪計画。裁判員裁判×アイドルオタクの法廷ミステリ。録音された犯行現場の謎。クルーズ船内、イベントが進行する中での拉致監禁―。絢爛多彩、高密度。ミステリの快楽を詰め込んだ傑作集!(「BOOK」データベースより)

 

 

 

どんな話?

なんだかミステリがいっぱい読みたいなぁ。ミステリでお腹たぷたぷにならないかなぁ。そんな自給自足ができたら働かなくてもいいかなぁ。

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あ、あった。僕の空腹を満たしてくれるミステリが。しかも、短編集。いっぱい読めるではないか。

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ビュッフェのようにバラエティ豊富なミステリは、どんな食通も唸らせること間違いなしだ。

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ここがおもしろい。

 
  • 透明人間が潜んでいる。
  • オタクは議論する。
  • 船内で監禁される。

 

透明人間が潜んでいる。

 

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え。透明人間が密室に潜んでしまったら無敵ではないか。完全犯罪成立ではないか、と訝ったが、そうは問屋が卸さない。

 

そこには透明人間をミステリとして成り立てる設定と展開が待ち受けている。油断した僕は透明であるが故の愛と苦しみに、身悶えた。

 

透明人間になれば、あんなことやこんなことが可能だなぁ…じゅるり。そう考えていた自分が情けない。

 

 
じゅるり。 


オタクは議論する。

 

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オタクとは自分の好きなものを話したくて仕方がない習性がある。僕も小説とジャニーズを語りたい。けれど、周りに語れる人がいない。終電で寝過ごしてしまったぐらい悲しいし、切ない。

 
なのでオタクたちは議論する。何の因果なのか、たまたま集まってしまったオタクたち。好き加減の大小はいるけれども、好きという気持ちは犯罪を超えるようだ。

 
終始オタクらしい展開と着地地点は、短編ならではの面白さを見せてくれる。

 

 
オタクは最高だ。 

 

船内で監禁される。

 

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クルーズ船内のミステリイベントで起きたもう一つのミステリの、どうなるんだ、どうなるんだ、という鼓動の高鳴りで、僕はクライマックスを迎えそうになった。

 

時間と共に進行していくミステリイベント。その謎と監禁生活。やがてそれらが合流した時、物語と僕はクライマックスを迎える。その瞬間、僕は盛大なサプライズをされ、隠れていたみんながクラッカーを鳴らしまくっているような心境だった。

 

うわああ、ありがとう! と筆者に言いたい。こんな素晴らしいミステリを僕に送ってくれて。

 

物語は更なるサプライズも用意してあって、もう僕のお腹はパンパンである。

 

 
涙サプライズだ。 

 

 まとめ。

 

ああ、お腹いっぱいだ。苦しくなってしまうので、いつも腹八分目を心がけているのだが、本作は僕のお腹の中に隙間なくミステリを詰め込んでいった。破裂しそうである。

 

短編集であるのに、どれも長編かのような満足感。全てにおいて抜かりのない、しっかりと腰を据えたミステリ。筆者の妥協のない物語作りにミステリへの愛を感じる。

 
また、ミステリは砂の数だけあるわけだが、そんなミステリの砂浜の半分を占めているのではないか、と思う程に本作は幅の広いミステリで構成されている。

 

透明人間の犯罪。からのアイドルオタクたちの愛が溢れた?議論。音からたどり着く真相。イベントで交わる二つのミステリ。

 
お腹いっぱいのはずなのに、まだまだ入る。胃が四つにでもなったのか、と訝るぐらいに、もっとちょうだい、もっとちょうだい、という欲が湧いてくる。

 
僕がもしも5歳児だったならば、盛大に駄々をこねて、親を困らせていたところだ。よかった、三十歳超えていて。

 

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