悪意と欺瞞に満ちた奇妙なもの。

 
ご来訪に感謝。
ところで、こんなことを思う時がないだろうか?
 
  • グロテスクの意味を知りたい。
  • 女性たちの憎悪と欺瞞をのぞきたい。
  • 階級社会ってほんと嫌。

 

ちょうどよかった。

そんな人にオススメの小説がある。

それは『桐野 夏生』さんの...

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ばーん!

 

グロテスクとあらすじ。

名門Q女子高に渦巻く女子高生たちの悪意と欺瞞。「ここは嫌らしいほどの階級社会なのよ」。悪魔的な美貌を持つニンフォマニアのユリコ、競争心をむき出しにし、孤立する途中入学組の和恵。ユリコの姉である“わたし”は二人を激しく憎み、陥れようとする。圧倒的な筆致で現代女性の生を描ききった、桐野文学の金字塔。(「BOOK」データベースより)

 

 

 

どんな話?

とある事件が世間を騒がせている。あら、和恵ではないか。事件をきっかけにユリコの姉の独白が始まる。毒吐くかもしれない。

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ユリコと和恵。あいつら、くどくどくどくど。姉の語りからは悪意しか感じない。

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女性たちの重たい念のようなもので、本作はどんどん堕ちていく。幸せとは相反するグロテスクの地殻へと。

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ここがおもしろい。

 
  • 描かれるグロテスク。
  • 力強い美しさ。
  • 和恵の人生。

 

描かれるグロテスク。

 

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実際におきた事件をモチーフにしているということで、てっきり鬼も逃げ出すほどの桃太郎みたいな怪物や、身の毛立つような殺人鬼が関与するハラハラとした物語を想像していたが、全然違った。貧相な想像力を呪いたいと思う。

 

本作で描かれるグロテスクは、僕の貧相なグロテスクとはかけ離れた女性たちの女性による女性のためのグロテスク。リンカーンさんも驚くほどの情念と淫靡で飾られている。

 
彼らの周りの人たちは、きっとそう思わず、グロい! と言ってしまうかもしれない。けれど、僕は知った。良くも悪くも必死に生きていた彼女たちは、グロい! と四文字だけで表せるようなグロテスクは持ち合わせていないのだ。

 

 
グロいよ。
 

 

力強い美しさ。

 

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和恵、ユリコ、姉。彼女たちのグロテスクは、形がなく曖昧で掴みどころのないもの。大きな括りで言ってしまえば、その生き様は単純にグロいと言えるのだけれど、本作が示すグロテスクはとても力強い。

 

そして、醜悪と紙一重の美しさを感じる。形なきグロテスクは三者三様だけれど、ドロドロした怨念めいたものは、読む人の心をしっかりと捉えて離してくれない。いい加減離してほしいのに。

 

 
怖いよー。
 

 

和恵の人生。

 

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和恵の人生には息を呑んだ。女子高生からOL、そこから娼婦になり、更なる変貌を遂げようとしているかのような姿はまさにグロテスク。

 
ユリコの姉は和恵の人生を蔑んでいたが、僕はその生き様に一種の憧憬の念を抱いてしまう。そう生きたいとは決して思わないけれど、空回ってでも必死に生きた和恵はすごい。グロすごい

 
その人生は一見の価値ありだ。

 

 
人生はグロテスク。
 

 

まとめ。

 

グロテスク。単純に言葉の響きから、いわゆる、グロい! と呼ばれるものを想像して読んでいたのだが、どうやら何か違う。ここに描かれているグロテスクは僕の思っているグロテスクではないのではないか。

 
そう思い調べてみると、グロテスクには様々な意味があった。文学的な意味合いでいうと、共感と嫌悪感の双方を抱かせるような人物をグロテスクと呼ぶらしい。

 
なるほど。そう考えると、たしかに登場人物たち、主に和恵とユリエと姉はグロテスクだ。とくに姉は語り手でありながらも、グロテスクを胃もたれしそうなぐらい、撒き散らしていた。

 
また、本作は徹底して女性たちの暗い場所が描かれている。明るさをどこかに忘れてしまったのだろうか。その様は、別の意味でのグロテスクも連想されて、もうお腹いっぱいだ。腹十二分目ぐらいは、いっちゃってる。

 

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