悪意が作り出した小説。

 
ご来訪に感謝。
ところで、こんなことを思う時がないだろうか?

  • 猟奇殺人に興味津々だ。
  • 低身長に悩んでいる。
  • 恐るべき悪意に驚きたい。

 

ちょうどよかった。

そんな人にオススメの小説がある。

それは『ピエール・ルメートル』さんの...

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ばーん!

 

悲しみのイレーヌとあらすじ。

【異様な手口で惨殺された二人の女。カミーユ・ヴェルーヴェン警部は部下たちと捜査を開始するが、やがて第二の事件が発生。カミーユは事件の恐るべき共通点を発見する……。ベストセラー『その女アレックス』の著者が放つ衝撃作。あまりに悪意に満ちた犯罪計画――あなたも犯人の悪意から逃れられない。

 

 

どんな話?

身長は小人、風格は巨人、その名も警部カミーユ。愛する妻と信頼できるようなできないような部下や上司めぐまれ順風満帆、と思いきや、暗雲が垂れこむ。

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酷すぎる、どうしよう、嘔吐しようかなぁ、て部下が先に嘔吐しちゃってるよ。凄惨な殺人現場に立ち向かうカミーユ警部。て、え。第二の事件も発生したの?

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あれ、共通点が…それは恐るべき犯罪計画の序章、もしくは第二章ぐらいであった。まるで小説のような計画に、カミーユ警部の奥さんイレーヌも悲しんでしまう。

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ここがおもしろい。

 
  • 残忍な事件。
  • 息つく暇もない。
  • 愛しのイレーヌ

 

残忍な事件。

 

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ミステリーにおいて、殺人事件というのは凄惨であれば凄惨であるほどに食欲を掻き立てられる。ご飯をどんどんおかわりしたいと思うが、さすがに本作の殺人事件の現場はは胃もたれ気味だ。胃薬必須である。

 

それは異様すぎて、意味が判然としない。残忍な事件というものは大抵強い悪意と意思を兼ねそろえているが、何かおかしい。何かが始まっている気がするのだけれど、何が始まっているのか全く分からない。一体何が起きているのだろうか。

 

 
怖いよー。 

 

息つく暇もない。

 

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本当に凄惨な殺人現場である。いくら凄腕のカミーユ警部とはいえ、その現場を見た時は声を失い逃げ出したくなったのではないだろうか。一体犯人は誰で、何のためにこんな殺し方を?

 

と捜査をしていると第二の事件発生。次々に判明する事実。そして、発覚する共通点。息つく暇もないほどに畳み掛けてくる、ワクワクとドキドキの二重攻撃は僕を容赦なく鞭打ってくる。

 

 
気持ちいいよー。 

 

愛しのイレーヌ。

 

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カミーユ警部は奥さんであるイレーヌが大好き。もちろんイレーヌも同じ気持ちであろう。そこには幸せ以外に似合う言葉が見つからない。ただ一つ問題があるとすれば、カミーユ警部の仕事が忙しいことと、悪意を向けられやすい職業であるということだ。

 

表題『悲しみのイレーヌ』 きっとこの先イレーヌは悲しむことになるのだろう。それがどういう意味でなのか。それは筆者と犯人しか知らない。少なくとも読了前までは。

 

 
泣かないでイレーヌ。
 

 

まとめ。

 

猟奇的な殺人と悪意にまみれた犯人、それを追う警察。内容からも文章からも硬派な印象を抱いたのだが、なぜかカミーユ警部は低身長というハンデつき。けれど、これがカミーユ警部というキャラクターを魅力的に彩っている。そんな彼に不思議と惹かれてしまう。

 

彼の周りのキャラクターもしっかりとした個性で彩られ、決してその他大勢の中の一人ではないのだ、と主張してくる。これだけの要素でもう本作は面白いことが確定しているのだが、本筋は猟奇的な連続殺人事件である。

 

次々におこる展開に対して彼らは持ち合わせた個性とは裏腹に、わかっていますよ、みなさん読みたいのは僕たちのことではなく、事件の行く末ですよね、どうぞどうぞお進みください、とはやし立てる。個性を殺さず、事件も殺さず、被害者は殺す。絶妙なバランスで物語は、恐るべき悪意へと向かっていく。

 

この悪意がひどく強烈で、嗅いだことのない悪臭が漂っている。本作は一部と二部に分かれて構成されているが、二部へ入った瞬間、いや一部の終盤から、その悪意は異彩を放つ。どうもー、僕が悪意ですよー! と高らかな声で叫びに叫ぶ。

 

悪意さん、そんなことまでするのですか!?  硬派だと思っていた本作に違った印象をもたせた悪意に敬意を払うと同時に、どうか不幸のどん底へ行ってくれますように、と願うばかりだ。

 

それと、非常に残念なことが一つだけあった。続編『その女アレックス』を事前に読んでしまったことである。それでも僕は楽しめたのだが、壮大なネタバレが含まれているので、ぜひ本作から読まれることをオススメしたい。

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