【おすすめ10冊】読書ノート#5

 管理人:宴
ご来訪に感謝。
ところで、こんなことを思う時がないだろうか?
 

 

  • 次はどんな本を読もうかしらん。
  • いろんな本を読みたい。
  • 宴が読んだ本を教えて欲しい。

 

ちょうどよかった!

今回は宴の読書記録である『読書ノートを紹介しよう。

 

 

 

 

読書ノート

f:id:s-utage:20210601103204j:plain

 

他人の顔/安部 公房

液体空気の爆発で受けた顔一面の蛭のようなケロイド瘢痕によって自分の顔を喪失してしまった男…失われた妻の愛をとりもどすために“他人の顔”をプラスチック製の仮面に仕立てて、妻を誘惑する男の自己回復のあがき…。特異な着想の中に執拗なまでに精緻な科学的記載をも交えて、“顔”というものに関わって生きている人間という存在の不安定さ、あいまいさを描く長編。(「BOOK」データベースより)

 

感想書評

顔を失った男の怨霊のように渦巻くエゴに巻き込まれて、僕の思考回路はてんやわんや。人生とは仮面です、という座右の銘を心に刻んでいるかのように、男は仮面づくりに熱中していくが、顔一つでこうも人間というのは歪んでしまうものなのだろうか。ホラーやサスペンスの要素を漂わせながらも、描き切った人間というものに、また不思議な印象をもった一冊だ。

 

 
人間は顔じゃないよ。
 

 

リカ五十嵐 貴久

妻子を愛する42歳の平凡な会社員、本間は、出来心で始めた「出会い系」で「リカ」と名乗る女性と知り合う。しかし彼女は、恐るべき“怪物”だった。長い黒髪を振り乱し、常軌を逸した手段でストーキングをするリカ。その狂気に追いつめられた本間は、意を決し怪物と対決する。単行本未発表の衝撃のエピローグがついた完全版。第2回ホラーサスペンス大賞受賞。

 

感想書評

リカさんはただの化物ではない。出会い系をし、愛を求めていたにすぎない一般女性である。ところが、いざ出会ったら一般的とはかけ離れた怪物の業が片鱗をあらわにする。だからこそ怖いのだ。結婚しておきながら、出会い系に手を出す男が自業自得なのかもしれないが…もうやめてあげて、リカさん!

 

 
愛まっしぐら。 

 

砂の女安部 公房

砂丘へ昆虫採集に出かけた男が、砂穴の底に埋もれていく一軒家に閉じ込められる。考えつく限りの方法で脱出を試みる男。家を守るために、男を穴の中にひきとめておこうとする女。そして、穴の上から男の逃亡を妨害し、二人の生活を眺める部落の人々。ドキュメンタルな手法、サスペンスあふれる展開のなかに、人間存在の象徴的な姿を追求した書き下ろし長編。20数ヶ国語に翻訳された名作。(「BOOK」データベースより)

 

感想書評

砂穴に閉じ込められた生活。謎の女。砂穴の上で見下ろす村人。密かに企む脱出計画。さぞやスリリングな脱出劇が繰り広げられるのだろう、と思いきや本作が本当に訴えたいのは砂穴からの脱出ではない。砂の流動のような男の心の移り変わりである。それは僕が今生きている世界での、仕方がない、という諦念によく似ている。この世界は砂にまみれているのかもしれない。

 

 
住めば都。
 

 

一九八四年ジョージ・オーウェル

 

“ビッグ・ブラザー”率いる党が支配する全体主義的近未来。ウィンストン・スミスは真理省記録局に勤務する党員で、歴史の改竄が仕事だった。彼は、完璧な屈従を強いる体制に以前より不満を抱いていた。ある時、奔放な美女ジュリアと恋に落ちたことを契機に、彼は伝説的な裏切り者が組織したと噂される反政府地下活動に惹かれるようになるが…。(「BOOK」データベースより)

 

感想書評

それおかしいのでは? と思っていても、それおかしい! と言えない状況に出くわした時、僕は窮屈で憤懣やるかたないのだが、ウィンストンの生きている世界はそれよりも窮屈だった。徹底した監視と、改竄に命かけています、といった体制。ウィンストンはそんな社会に戦いの狼煙をあげるが、世界を支配する巨人は強大だ。目立ちやすい狼煙をあげてしまえば叩き潰されてしまう。気をつけていただきたい。

 

 
頑張ってほしいけれど... 

 

蛇にピアス/金原 ひとみ

「スプリットタンって知ってる?」そう言って、男は蛇のように二つに割れた舌を出した―。その男アマと同棲しながらサディストの彫り師シバとも関係をもつルイ。彼女は自らも舌にピアスを入れ、刺青を彫り、「身体改造」にはまっていく。痛みと快楽、暴力と死、激しい愛と絶望。今を生きる者たちの生の本質を鮮烈に描き、すばる文学賞と芥川賞を受賞した、金原ひとみの衝撃のデビュー作。(「BOOK」データベースより)

 

感想書評

僕が若者だった頃、果たしてこんなにも溢れる熱量で生を模索していただろうか。スプリットタンに人体改造、ヤバさを体現したような風貌のアマとシバ。それらに惹かれていくルイ。危険を知らない若さは、大人と違い、それがどういう意味なのかわからなくても辞書を引くことなく突き進む。筆者のほとばしる熱量が描く物語は、不穏な匂いをそこら中に撒き散らしているので換気が必要かもしれない。

 

 
大丈夫。 

 

シャドウ道尾 秀介

人は、死んだらどうなるの?―いなくなって、それだけなの―。その会話から三年後、凰介の母は病死した。父と二人だけの生活が始まって数日後、幼馴染みの母親が自殺したのを皮切りに、次々と不幸が…。父とのささやかな幸せを願う小学五年生の少年が、苦悩の果てに辿り着いた驚愕の真実とは?いま最も注目される俊英が放つ、巧緻に描かれた傑作。本格ミステリ大賞受賞作。(「BOOK」データベースより)

 

感想書評

秘められた想いと企みは、嫌がらせのように登場人物たちを苦しめていくのだが、なんてことだろう、僕は筆者にまんまと騙され、気づいていなかった。とっくの昔から始まっていた悲劇は、小学生の凰介が背負うには重すぎるけれど、彼は強かった。二回だろうと三回だろうとひっくり返してやるよ、と勢いづく物語に果敢に立ち向かっていく。幸せは自分で掴むものなのだと、知っているのかもしれない。

 

 
幸せは歩いてこない。 

 

この闇と光/服部 まゆみ

森の奥に囚われた盲目の王女・レイアは、父王の愛と美しいドレスや花、物語に囲まれて育てられた…はずだった。ある日そのすべてが奪われ、混乱の中で明らかになったのは恐るべき事実で―。今まで信じていた世界そのものが、すべて虚構だったのか?随所に張りめぐらされた緻密な伏線と、予測不可能な本当の真相。幻想と現実が混ざり合い、迎えた衝撃の結末とは!?至上の美を誇るゴシックミステリ!(「BOOK」データベースより)

 

感想書評

レイアが闇と光の中で見たもの。それはたしかな形あるものだったのだろうか。まず闇から検証していこう。彼女の闇は幻想的でおとぎ話のような世界。囚われているとはいえ、甘美な生活にはついうっとりしてしまう。さて、では光はどうだろうか。ああ、どうやらレイアには眩しすぎたようだ。闇と光を見た僕は、この世界がぐらつく音をきいてしまう。はたして闇と光は本当にあったことなのだろうか。

 

 
壮絶な闇と光だ。 

 

絹の変容篠田 節子

レーザーディスクのように輝く絹織物―。偶然、不思議な糸を吐く野蚕を発見した長谷康貴は、その魅力に憑かれ、バイオ・テクノロジー技術者・有田芳乃の協力で、蚕を繁殖させようとする。事業は成功したように見えたが、意外なパニックがまき起こる…。ミステリータッチの本格SF。第3回小説すばる新人賞受賞作品。(「BOOK」データベースより)

 

感想書評

間違いは正せるものであるが、初期消火に失敗すると、どんどん火種は大きくなる一方。こんなはずではなかった。長谷康貴の焦燥なんかどうでもいいよ、と言わんばかりのパニックに、大の虫嫌いの僕は戦々恐々。彼の変化と苦悩というメインディッシュは、技術者・有田芳乃と蚕を添えて飛び回る…怖っ!

 

 
ぎゃあああああ!
 

 

笑う招き猫山本 幸久

男と並んで愛誓うより、女と並んで笑いを取る、それが二人のしあわせなのだ!駆け出しの漫才コンビ、『アカコとヒトミ』。超貧乏で彼氏なし、初ライブは全く受けずに大失敗。おまけにセクハラ野郎の先輩芸人を殴り倒して大目玉。今はぜんぜんさえないけれど、いつかはきっと大舞台。体に浴びます大爆笑―。夢と笑いとパワーあふれる傑作青春小説。第16回小説すばる新人賞受賞作。(「BOOK」データベースより)

 

感想書評

人生とは縁である。招き猫が招いてくれた雑な奇跡は二人をお笑いの舞台へと導いていくわけだが、その道は険しきジャングル。居心地が悪くなったり、どこを歩いているのかわからなくなったりすることもあるだろう。けれど、二人一緒ならば、たまにご機嫌に歌ったりもして切り抜けることができるのではないだろうか。いちファンとして、二人を応援せずにはいられない。それぞれの人生が最終的には豊かであるように。そう招き猫にはお願いしたい。

 

 
招き猫ならなんとかしてくれる。 

 

連続殺人鬼カエル男/中山 七里

口にフックをかけられ、マンションの13階からぶら下げられた女性の全裸死体。傍らには子供が書いたような稚拙な犯行声明文。街を恐怖と混乱の渦に陥れる殺人鬼「カエル男」による最初の犯行だった。警察の捜査が進展しないなか、第二、第三と殺人事件が発生し、街中はパニックに…。無秩序に猟奇的な殺人を続けるカエル男の目的とは?正体とは?警察は犯人をとめることができるのか。(「BOOK」データベースより)

 

感想書評

カエル男の残虐性には息が詰まるほどの恐怖を感じる。そりゃ街の人もパニックになってもおかしくないだろう。けれど、ここまでやりますか? カエル男の狂気は僕が思っているよりも刺激的で、色濃いものだったのかもしれない。残虐性と狂気に歪む街と、ピアノソナタ第8番 ハ短調 作品13『大ソナタ悲愴』のような出会いに翻弄されながら、物語はそっと引っくりかえる。

 

 
怖いし、悲しい。 

 


 


にほんブログ村 本ブログへ