本と宴





【おすすめ10冊】読書ノート#10

 管理人:宴
ご来訪に感謝。
ところで、こんなことを思う時がないだろうか?
 

 

  • 次はどんな本を読もうかしらん。
  • いろんな本を読みたい。
  • 宴が読んだ本を教えて欲しい。

 

ちょうどよかった!

今回は宴の読書記録、『読書ノート』をご紹介しよう。

 

 

 

 

読書ノート

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毎年、記憶を失う彼女の救いかた/望月 拓海

私は1年しか生きられない。毎年、私の記憶は両親の事故死直後に戻ってしまう。空白の3年を抱えた私の前に現れた見知らぬ小説家は、ある賭けを持ちかける。「1ヵ月デートして、僕の正体がわかったら君の勝ち。わからなかったら僕の勝ち」。事故以来、他人に心を閉ざしていたけれど、デートを重ねるうち彼の優しさに惹かれていき―。この恋の秘密に、あなたは必ず涙する。(「BOOK」データベースより)

 

感想書評

ミステリーとラブストーリーの二重構造でお買い得な物語。

 

けれど、本作が訴えている重要な点はそこではなく、毎年、記憶を失う彼女の救いかたはこれだよ、もしもそういう人がいたら参考にしてね! ということだ。彼女と小説家の賭けはその一部分でしかない。

 

記憶がなくても繋げようと躍起になる想いは、僕が今までに見たことがない種類の、大きな大きな愛。思わずたじろいでしまうような愛だった。

 

 
こんなラブストーリーはみたことがない。 

 

恋文の技術/森見 登美彦

京都の大学院から、遠く離れた実験所に飛ばされた男が一人。無聊を慰めるべく、文通修業と称して京都に住むかつての仲間たちに手紙を書きまくる。文中で友人の恋の相談に乗り、妹に説教を垂れるが、本当に想いを届けたい相手への手紙は、いつまでも書けずにいるのだった。(「BOOK」データベースより)

 

感想書評

全編手紙で描かれる圧巻の物語。

 

筆者らしいバカらしくて切ない展開には胸を締め付けられそうになるのだが、『方法的おっぱい懐疑』が全てをかっさらっていく。

 

この人は一体何を書いているのだ? と思いつつ、笑いの渦に巻き込まれた僕は、その後に訪れる哀愁にやられてしまう。情緒不安定になりそうだ。

 

 
いろんな意味でかき乱される。 

 

四日間の奇蹟/浅倉 卓弥

第1回『このミステリーがすごい!』大賞・大賞金賞受賞作として、「描写力抜群、正統派の魅力」「新人離れしたうまさが光る!」「張り巡らされた伏線がラストで感動へと結実する」「ここ十年の新人賞ベスト1」と絶賛された感涙のベストセラーを待望の文庫化。脳に障害を負った少女とピアニストの道を閉ざされた青年が山奥の診療所で遭遇する不思議な出来事を、最高の筆致で描く癒しと再生のファンタジー。(「BOOK」データベースより)

 

感想書評

親に紹介しても恥ずかしくないミステリー物語。

 

唐突に訪れるミステリー読みたい期がやってきたので、読んでみるといい意味でやられた。謎もあるし、伏線もあるのだが、そこをピークとせず、心を搔き乱し続ける展開は、ジャンルの垣根を越えて僕の涙腺を、えいや、えいや、突っついてくる。

 

感動と思いがけない切なさで胸がいっぱいで、もう張り裂けそうになっている。

 

 
感情が蠢く四日間だった。
 

 

きいろいゾウ/西 加奈子

夫の名は武辜歩、妻の名は妻利愛子。お互いを「ムコさん」「ツマ」と呼び合う都会の若夫婦が、田舎にやってきたところから物語は始まる。背中に大きな鳥のタトゥーがある売れない小説家のムコは、周囲の生き物(犬、蜘蛛、鳥、花、木など)の声が聞こえてしまう過剰なエネルギーに溢れた明るいツマをやさしく見守っていた。夏から始まった二人の話は、ゆっくりと進んでいくが、ある冬の日、ムコはツマを残して東京へと向かう。それは、背中の大きな鳥に纏わるある出来事に導かれてのものだった―。(「BOOK」データベースより)

 

感想書評

きいろいゾウと夫婦の物語。

 

田舎の人たちや家畜たちはどうしてこうもほっこりするのだろうか。ほんわかほのぼのした夫婦の生活はとても心が温まる。だが、夫婦というのは一筋縄ではいかないもの。暗雲はすぐそこまでやってきていたのだ。

 

けれど、この夫婦ならそんな物語、きいろいゾウに乗って飛び越えていくことだろう。ひょいっと。

 

 
ゾウはきいろいけれど、物語は色鮮やか。
 

 

掏摸/中村 文則

東京を仕事場にする天才スリ師。ある日、彼は「最悪」の男と再会する。男の名は木崎―かつて仕事をともにした闇社会に生きる男。木崎は彼に、こう囁いた。「これから三つの仕事をこなせ。失敗すれば、お前を殺す。逃げれば、あの女と子供を殺す」運命とはなにか、他人の人生を支配するとはどういうことなのか。そして、社会から外れた人々の切なる祈りとは…。大江健三郎賞を受賞し、各国で翻訳されたベストセラーが文庫化。(「BOOK」データベースより)

 

感想書評

筆者の前職は掏摸だったのでは、と疑惑をもつ物語。

 

筆者の文体がよく映えるアンダーグラウンドな世界感。そんな世界で生きる天才スリ師は、根っからの悪人ではない。けれど、木崎という得体の知れない悪意に支配されてしまった。

 

運命というものに翻弄され、心も状況も不安定だけれど、それでも生きていこうとする意思は、運命に抗うたった一つの手段なのかもしれない。

 

 
スリの精巧な技術に閉口。 

 

沈黙/遠藤 周作

キリシタン迫害史を背景とする緊迫のドラマの中に、神の存在を問い、信仰の根源を衝いて、西洋と日本の思想的対立を鋭くえぐり出す長編小説。谷崎潤一郎賞、ピエトロザク賞受賞。(「BOOK」データベースより)

 

感想書評

神とは、信仰とは何かを知る物語。

 

禁教令がえげつない。本来自由であるはずの信じることを奪われた人間たちに、なぜこうも残虐な仕打ちができるのだろうか。神とは何か。信じることとは何か。導き出した答えは、単純なようで重みのあるたった一つの真実だった。

 

宗教の矛盾ともいえるものに真っ向からぶつかった渾身の一冊だ。

 

 
自由の素晴らしさが身に染みる。 

 

零歳の詩人/ 楠見 朋彦

旧ユーゴスラビアの都市で地下生活を送るアキラを中心に繰り出される言葉は、随時、語り手を替え、詩人や兵士や市民の言葉が引用され、報告、告白、手記、詩、批評と、絶えず口調を変えながら、セルビア人にもクロアチア人にも、ボスニア人にも、アメリカ人にも書きようのないテクストを編んでいる。第23回すばる文学賞受賞作。(「BOOK」データベースより)

 

感想書評

紛争に喘ぐ人々の声に耳を塞ぎたくなる物語。

 

この痛みは誰の声? この愉悦は? この狂気は?  目まぐるしく駆け回る紛争の現実に頭がくらくらしてしまう。平和な日本にいる僕には、この感情のような物語を真から理解することは難しく、ただ圧倒されるばかりだ。

 

戦争や紛争はここまで人間を変え、残虐な生き物にしていくのかと思うと、やりきれない。

 

 
紛争の実態に苦しくなる。
 

 

スロウハイツの神様/辻村 深月

人気作家チヨダ・コーキの小説で人が死んだ―あの事件から十年。アパート「スロウハイツ」ではオーナーである脚本家の赤羽環とコーキ、そして友人たちが共同生活を送っていた。夢を語り、物語を作る。好きなことに没頭し、刺激し合っていた6人。空室だった201号室に、新たな住人がやってくるまでは。(「BOOK」データベースより)

 

感想書評

クリエイターの共同生活、の皮を被った愛の物語。

 

陰気な冒頭から、一体どんなサスペンスが始まるのか、と思いきや描かれるのは夢追い人たちの切磋琢磨な生活。意表をつかれたが、筆者は自分に何を求められているのか、決して忘れていない。後半戦からの溢れ出して止まらぬ怒涛の展開は僕とスロウハイツを揺らしていく。

 

そして、それはクリエイターそのものに対する一つの答えでもある気がする。

 
クリエイターへの憧れが増した。
 

 

子どもたちは夜と遊ぶ/辻村 深月

大学受験間近の高校三年生が行方不明になった。家出か事件か。世間が騒ぐ中、木村浅葱だけはその真相を知っていた。「『i』はとてもうまくやった。さあ、次は、俺の番―」。姿の見えない『i』に会うために、ゲームを始める浅葱。孤独の闇に支配された子どもたちが招く事件は、さらなる悲劇を呼んでいく。(「BOOK」データベースより)

 

感想書評

最悪なゲームの物語。

 

どうしても自分の中で過去というものは大きくなりがちで、逆に現在というものは曖昧で信じにくい傾向にある。それは本来比べるものではないのだが、浅葱はやってしまった。

 

浅葱が現在に生きているピチピチの愛を切り裂いてまでも手に入れたかったものは、小さな救いでしかないというのに、それが分からなかったようである。嘆かわしい。

 

 
残酷なゲームだ。
 

 

ラットマン/道尾 秀介

結成14年のアマチュアロックバンドのギタリスト・姫川亮は、ある日、練習中のスタジオで不可解な事件に遭遇する。次々に浮かび上がるバンドメンバーの隠された素顔。事件の真相が判明したとき、亮が秘めてきた過去の衝撃的記憶が呼び覚まされる。本当の仲間とは、家族とは、愛とは―。(「BOOK」データベースより)

 

感想書評

スタジオ内でおこった愛と憎悪の物語。

 

思い込みとは凄まじい力を発揮するものだが、それらを全て押し返されてしまうような展開に脱帽。よしよし、騙されおったな、と筆者に嘲笑われているようで悔しい。

 

こじれた愛の果てに起きた事件は、釈然としない部分もあるけれど、その分たくさんの余韻を僕に残してくれた。ありがたい。

 

 
まさにラットマンな物語。 

 


 


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