【おすすめ10冊】読書ノート#16

 管理人:宴
ご来訪に感謝。
ところで、こんなことを思う時がないだろうか?
 

 

  • 次はどんな本を読もうかしらん。
  • いろんな本を読みたい。
  • 宴が読んだ本を教えて欲しい。

 

ちょうどよかった!

今回は宴の読書記録、『読書ノート』をご紹介しよう。

 

 

 

 

読書ノート

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第三の嘘/アゴタ・クリストフ

ベルリンの壁の崩壊後、初めて二人は再会した…。絶賛をあびた前二作の感動さめやらぬなか、時は流れ、三たび爆弾が仕掛けられた。日本翻訳大賞新人賞に輝く『悪童日記』三部作、ついに完結。(「BOOK」データベースより)

 

感想書評

『悪童日記』三部作の終わりの物語。

 

戦争がそうさせたのか。はたまたそういう運命だったのか。チクチクするような感情のすれ違いが生んだ悲劇が連鎖していく。三部作の完結篇ではあるが、ここには全ての答えも、納得のいく終わりもない。第三の嘘というタイトルをスパイスとして、さらに深まる疑念が沸いていくだけだ。なんという強烈なスパイスをふりかけてくれたのだろうか。

 

ふと悪童日記の二人が頭を過り、感傷的になってしまった。

 

 
何が嘘なのか。
 

 

凍りのくじら/辻村 深月

藤子・F・不二雄を「先生」と呼び、その作品を愛する父が失踪して5年。高校生の理帆子は、夏の図書館で「写真を撮らせてほしい」と言う一人の青年に出会う。戸惑いつつも、他とは違う内面を見せていく理帆子。そして同じ頃に始まった不思議な警告。皆が愛する素敵な“道具”が私たちを照らすとき―。(「BOOK」データベースより)

 

感想書評

少し不思議で少し不在な物語。

 

ドラえもんが親との絆のように大好きな女子高生、理帆子。彼女が見ている世界は、まるで実際にいる位置よりも一歩後ろにいるような視界で、よく見えない。やがて理帆子は光に照らされる。全てをひっくり返してしまうような光。理帆子を変える光。 僕も一緒に浴びたのだけれど、人間はそう簡単には変われない。でも大事なことに気づけたし、勇気をもらった。

 

理帆子と光にはありがとうと言いたい。

 

 
地球破壊爆弾~。 

 

チャイルド44/トム・ロブ・スミス

スターリン体制下のソ連。国家保安省の敏腕捜査官レオ・デミドフは、あるスパイ容疑者の拘束に成功する。だが、この機に乗じた狡猾な副官の計略にはまり、妻ともども片田舎の民警へと追放される。そこで発見された惨殺体の状況は、かつて彼が事故と遺族を説得した少年の遺体に酷似していた…。ソ連に実在した大量殺人犯に着想を得て、世界を震撼させた超新星の鮮烈なデビュー作。(「BOOK」データベースより)

 

感想書評

とある国の物語。

 

子供をもてあそぶように追い詰める悪魔のような残虐性。ソ連全土にわたる犯行。50を超える被害者。なのに、その連続殺人を認めない国は狂っているとしか言いようがない。そんな国がレオ・デミドフに与えた試練は恐るべきものだった。

 

物語後半の一体これからどうなってしまうんだ感。レオの変化。追い詰められていく状況。 当時のソ連を背景にシリアルキラーを追うレオの姿は、まるでインディージョーンズのようにかっこよかった。

 

 
モンスターを野放しにしていた国に驚愕。
 

 

アヒルと鴨のコインロッカー/伊坂 幸太郎

引っ越してきたアパートで出会ったのは、悪魔めいた印象の長身の青年。初対面だというのに、彼はいきなり「一緒に本屋を襲わないか」と持ちかけてきた。彼の標的は―たった一冊の広辞苑!?そんなおかしな話に乗る気などなかったのに、なぜか僕は決行の夜、モデルガンを手に書店の裏口に立ってしまったのだ!注目の気鋭が放つ清冽な傑作。第25回吉川英治文学新人賞受賞作。(「BOOK」データベースより)

 

感想書評

ボブ・ディランがよく合う物語。

 

青年に誘われた主人公。僕は彼こそが主人公であり、物語の主役だと思っていた。それはあながち間違っていないはずだ。だが、彼は主人公でありながら、物語の介入者でもあった。具合が悪かったのか、それともやむを得ぬ事情があったのかわからないが、途中参加という、学校行事だとしたら気まずい状況からスタートしてしまった主人公は気まずそうに、まるで他人の家にでもはいっていくように、物語に入っていくわけだが、これがもう名演。主演男優賞と助演男優賞を史上初、同時にとってもおかしくはない。

 

あの時、もしも彼が風に吹かれていていなければ、本作は別の形で終幕を迎えていたかもしれない。本当に彼が介入者で良かったと、心から思う。

 

 
たまには本屋でも襲ってみるか。 

 

ららら科學の子/矢作 俊彦

男は殺人未遂に問われ、中国に密航した。文化大革命、下放をへて帰還した「彼」は30年ぶりの日本に何を見たのか。携帯電話に戸惑い、不思議な女子高生に付きまとわれ、変貌した街並をひたすら彷徨する。1968年の『今』から未来世紀の東京へ―。30年の時を超え50歳の少年は二本の足で飛翔する。覚醒の時が訪れるのを信じて。(「BOOK」データベースより)

 

感想書評

浦島太郎の気持ちがわかる物語。

 

30年という月日は街やテクノロジーを目まぐるしく変えていった。思想すらも。 男が日本にいた時代は学生運動が盛んだった。ちょっとファミス行こうぜ! みたいな感覚で参加していた人もいるだろうが、みんなそれなりの思想を持ち合わせていた。見渡せばすぐに思想が、目立ちたがりのクラスメイトのようにひょっこりと顔を出した。 だが、今の時代はどうか。恥ずかしがり屋になってしまい、中々表に出てこないではないか。学生運動とは、一体、何だったのだろう。男は昔に想いを馳せる。

 

心を無くしたまま東京をゾンビのように漂流する男は、30年前の心持ちのまま何を思い、何をみているのだろうか。

 

 
リアル浦島太郎。 

 

太陽の塔/森見 登美彦

何かしらの点で彼らは根本的に間違っている。なぜなら私が間違っているはずがないからだ、と宣う、ひねくれた学生の夢想を描いたデビュー作。第15回日本ファンタジーノベル大賞大賞受賞作。(「BOOK」データベースより)

 

感想書評

ひねくれた恋物語。

 

筆者が本作で作り出したものは、恋心と勢い。うわあ…と思わず口から出してはいけない種類の吐息が漏れてしまう主人公の恋心は見ていて気味が悪い。100人中95人の人は、彼に嫌悪感を抱き、蔑むことだろう。だが、残りの5人は彼を勇敢なる者、略して勇者と崇めることだろう。何を隠そう、その内1人は僕である。彼の不器用にひねくれた恋心は、物語のもうよくわからない勢いの凄まじさの中にひっそりと浮かび、やがて同化して切なさや歯痒さや儚さを僕に投下していく。なんてことだ。こんな勢いのある哀愁を感じたのは初めてである。

 

まあ、それも、ええじゃないか、と思うけれども。

 

 
ええじゃないか、ええじゃないか。 

 

ななつのこ/加納 朋子

表紙に惹かれて手にした『ななつのこ』にぞっこん惚れ込んだ駒子は、ファンレターを書こうと思い立つ。わが町のトピック「スイカジュース事件」をそこはかとなく綴ったところ、意外にも作家本人から返事が。しかも、例の事件に客観的な光を当て、ものの見事に実像を浮かび上がらせる内容だった―。こうして始まった手紙の往復が、駒子の賑わしい毎日に新たな彩りを添えていく。第3回鮎川哲也賞受賞作。(「BOOK」データベースより)

 

感想書評

手紙が日常に彩りを加える物語。

 

ななつのこ、手紙、駒子の日常。三つの展開からなる本作は忙しないと思いきや、案外そうでもなく、田舎の畦道のような優しさでゆったりと流れる。ノスタルジックな世界観と主人公と不思議な女性。ファンタジーとリアルを融合したようなアンバランスさは、お風呂でいえばちょうど良いお湯加減。そこに駒子自身の、のほほん、とした性格が加われば、もう流れは、ゆったりするしかないよね、と半ば諦めモードだ。

 

そして読了後も、その余韻は続く。今日はゆっくり眠れそうだ。

 

 
日常にほんの少しの彩りを。
 

 

透明人間は密室に潜む/阿津川 辰海

透明人間による不可能犯罪計画。裁判員裁判×アイドルオタクの法廷ミステリ。録音された犯行現場の謎。クルーズ船内、イベントが進行する中での拉致監禁―。絢爛多彩、高密度。ミステリの快楽を詰め込んだ傑作集!(「BOOK」データベースより)

 

感想書評

お腹いっぱいにミステリを堪能できる傑作集。

 

クルーズ船内のミステリイベントの物語がある。そこで起きたもう一つのミステリの、どうなるんだ、どうなるんだ、という鼓動の高鳴りで、僕はクライマックスを迎えそうになった。 時間と共に進行していくミステリイベント。その謎と監禁生活。やがてそれらが合流した時、物語と僕はクライマックスを迎える。その瞬間、僕は盛大なサプライズをされ、隠れていたみんながクラッカーを鳴らしまくっているような心境だった。 うわああ、ありがとう! と筆者に言いたい。こんな素晴らしいミステリを僕に送ってくれて。

 

物語は更なるサプライズも用意してあって、もう僕のお腹はパンパンである。

 

 
涙サプライズ。 

 

グロテスク/桐野 夏生

名門Q女子高に渦巻く女子高生たちの悪意と欺瞞。「ここは嫌らしいほどの階級社会なのよ」。悪魔的な美貌を持つニンフォマニアのユリコ、競争心をむき出しにし、孤立する途中入学組の和恵。ユリコの姉である“わたし”は二人を激しく憎み、陥れようとする。圧倒的な筆致で現代女性の生を描ききった、桐野文学の金字塔。(「BOOK」データベースより)

 

感想書評

グロテスクな物語。

 

ここに描かれているグロテスクは、僕が思い描くグロテスクではない気がする。そう思い調べてみると、グロテスクには様々な意味があった。文学的な意味合いでいうと、共感と嫌悪感の双方を抱かせるような人物をグロテスクと呼ぶらしい。 なるほど。そう考えると、たしかに登場人物たち、主に和恵とユリエと姉はグロテスクだ。とくに姉は語り手でありながらも、グロテスクを胃もたれしそうなぐらい、撒き散らしていた。

 

また、本作は徹底して女性たちの暗い場所が描かれている。明るさをどこかに忘れてしまったのだろうか。その様は、別の意味でのグロテスクも連想されて、もうお腹いっぱいだ。腹十二分目ぐらいは、いっちゃってる。

 

 
人生はグロテスクなものなのかもしれない。 

 

夜は短し歩けよ乙女/森見 登美彦

「黒髪の乙女」にひそかに想いを寄せる「先輩」は、夜の先斗町に、下鴨神社の古本市に、大学の学園祭に、彼女の姿を追い求めた。けれど先輩の想いに気づかない彼女は、頻発する“偶然の出逢い”にも「奇遇ですねえ!」と言うばかり。そんな2人を待ち受けるのは、個性溢れる曲者たちと珍事件の数々だった。山本周五郎賞を受賞し、本屋大賞2位にも選ばれた、キュートでポップな恋愛ファンタジーの傑作。(「BOOK」データベースより)

 

感想書評

歩き続ける乙女を追う物語。

 

キングオブ乙女コンテストがあれば満場一致で優勝してしまう程の乙女に恋をした先輩の気持ちはわからないでもないが、ほとんどストーカーである。そんな先輩の恋心は筆者の言葉の魔術によって、とても純粋なものに感じた。あかん、これはあかん。ストーカーの気持ちに理解をしめすということは、僕もストーカーの素質があるのかもしれないではないか。予備軍ではないか。

 

しっちゃかめっちゃかな二人とその周辺は、予測のつかない運命によって、きっと今日もしっちゃかめっちゃかしていることだろう。いつか京都に行き、たまたま通りかかった時にでも確認することにしよう。

 

 
乙女は行くよ、どこまでも。
 

 


 


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