【2021上半期】第165回直木賞候補作感想と大胆予想

 管理人:宴
ご来訪に感謝。
ところで、こんなことを思う時がないだろうか?
 

 

  • 直木賞が気になる。
  • 直木賞候補作って面白いの?
  • 宴の受賞作の予想を知りたい。

 

ちょうどよかった!

今回の記事は宴の『第165回直木賞候補作感想と大胆予想』だ。

 

 

 

 

第165回直木賞候補作感想

f:id:s-utage:20210702224229j:plain

 

一穂 ミチ『スモールワールズ』(講談社)

呉 勝浩『おれたちの歌をうたえ』(文藝春秋)

佐藤 究『テスカトリポカ』(KADOKAWA)

澤田 瞳子『星落ちて、なお』(文藝春秋)

砂原 浩太朗『高瀬庄左衛門御留書』(講談社)

 

 

スモールワールズ/一穂 ミチ

夫婦円満を装う主婦と、家庭に恵まれない少年。「秘密」を抱えて出戻ってきた姉とふたたび暮らす高校生の弟。初孫の誕生に喜ぶ祖母と娘家族。人知れず手紙を交わしつづける男と女。向き合うことができなかった父と子。大切なことを言えないまま別れてしまった先輩と後輩。誰かの悲しみに寄り添いながら、愛おしい喜怒哀楽を描き尽くす連作集。

 

感想書評

魔王のように晴れ晴れとさせてくれたり、ピクニックのように苦い後味になったり、ネオンテトラの雑学を知り飼いたくなったりする物語。

 

短編集でありながらどの物語にも物語としての熱量を帯びている。このまま終わるのかなと思わせておいて、きちんと裏切ってくれたり、きちんと丁寧に気持ちの起伏をおこさせてくれる。筆者にありがとうを一千万回言っても足りないぐらいである。

 

心にグイグイと刺さる言葉たちが自然な形で染み渡っていく、清々しい一冊だ。

 

 
僕は魔王になりたい。 

 

おれたちの歌をうたえ/呉 勝浩

「あんた、ゴミサトシって知ってるか?」 元刑事の河辺のもとに、ある日かかってきた電話。その瞬間、封印していた記憶があふれ出す。真っ白な雪と、死体――。あの日、本当は何があったのか? 友が遺した暗号に導かれ、40年前の事件を洗いはじめた河辺とチンピラの茂田はやがて、隠されてきた真実へとたどり着く。 『スワン』で日本推理作家協会賞、吉川英治文学新人賞を受賞。圧倒的実力を誇る著者が、迸る想いで書き上げた大人のための大河ミステリー。

 

感想書評

過去と現在が織りなすドラマティックな物語。

 

小説でドラマを生み出すには人の歴史というのが必要になる。筆者はその歴史を巧みに操り、壮大なドラマを一冊の本にぎゅっと詰め込んだ。友の暗号、40年前の事件。現在と過去がどう絡み合うのか。一体、何が真実なのか。緊迫する展開に心臓が波打って仕方がない。

 

何にもとらわれずに疾走していく展開に、筆者のほとばしる熱量を感じた一冊だ。

 

 
切なくて熱い。
 

 

テスカトリポカ/佐藤 究

メキシコのカルテルに君臨した麻薬密売人のバルミロ・カサソラは、対立組織との抗争の果てにメキシコから逃走し、潜伏先のジャカルタで日本人の臓器ブローカーと出会った。二人は新たな臓器ビジネスを実現させるため日本へと向かう。川崎に生まれ育った天涯孤独の少年・土方コシモはバルミロと出会い、その才能を見出され、知らぬ間に彼らの犯罪に巻きこまれていく――。海を越えて交錯する運命の背後に、滅亡した王国〈アステカ〉の恐るべき神の影がちらつく。人間は暴力から逃れられるのか。心臓密売人の恐怖がやってくる。誰も見たことのない、圧倒的な悪夢と祝祭が、幕を開ける。第34回山本周五郎賞受賞。

 

感想書評

アステカの神々の不穏に酔いしれる物語。

 

本作を一か月間ぐらいずっと読み続けていると、僕は立派なアステカ信仰者になれると思う。どのページをめくってもチラつくアステカの神々。そして、残虐な暴力とアンダーグラウンドな世界は、圧倒的な迫力をもって襲い掛かってくる。にも関わらず、抵抗なんて一切せず受け入れてしまうような作りこまれた深淵が本作にはある。

 

どこへ向かっていくのか、見えない終着点に息をするのも忘れてしまう一冊だ。

 

 
呑み込まれそうになった。 

 

星落ちて、なお/澤田 瞳子

不世出の絵師、河鍋暁斎が死んだ。残された娘のとよ(暁翠)に対し、腹違いの兄・周三郎は事あるごとに難癖をつけてくる。早くから養子に出されたことを逆恨みしているのかもしれない。 暁斎の死によって、これまで河鍋家の中で辛うじて保たれていた均衡が崩れた。兄はもとより、弟の記六は根無し草のような生活にどっぷりつかり頼りなく、妹のきくは病弱で長くは生きられそうもない。 河鍋一門の行末はとよの双肩にかかっっているのだった――。

 

感想書評

家族と絵師の境目を彷徨う物語。

 

芸術まっしぐらで、私生活にも支障をきたす芸術家は、それはそれでかっこいいものである。だが家族だとすれば話が違う。とよは父に囚われ、家族と向かい合い、自分自身とも向き合っていく。その様は、父とは違うけれど、同じように偉大だ。

 

実際に存在した絵師だからこそ感じる時代の定めに胸が締め付けられる一冊だ。

 

 
日本にも偉大な絵師がいた。 

 

高瀬庄左衛門御留書/砂原 浩太朗

神山藩で、郡方を務める高瀬庄左衛門。50歳を前にして妻を亡くし、さらに息子をも事故で失い、ただ倹しく老いてゆく身。残された嫁の志穂とともに、手慰みに絵を描きながら、寂寥と悔恨の中に生きていた。しかしゆっくりと確実に、藩の政争の嵐が庄左衛門を襲う。

 

感想書評

高瀬庄左衛門の生き様が胸に響く物語。

 

つい鬱憤を時代のせいにしてしまう人は今でも絶えない。けれど、僕たちは今の時代に生きて死んでいくしかない。高瀬庄左衛門の生き様は現代にも通ずる芯のあるもの。決して時代のせいにせず、真摯に立ち向かい生きている。

 

悲しみや喜び、諦念。いつの時代でも、どうしようもないことはたくさんあるけれど、そんな時は本作を思い出して強く生きていこうと思う。

 

 
高瀬庄左衛門のように生きたい。
 

 

 

大胆予想

僕の予想はこれだ!

 

 

⇩⇩⇩⇩

 

 

⇩⇩⇩⇩

 

 

スモールワールズ/一穂 ミチ

ばーん! 

 

 

前回の受賞作、西條奈加さんの『心淋し川』が時代小説。そして、ここ数年現代が舞台の受賞作が少な目な気がしたので、そろそろ現代小説がくるのでは? と思い『高瀬庄左衛門御留書』『星落ちて、なお』をまずは除外。どちらも面白かったけれども。

 

次に『テスカトリポカ』は、舞台が日本であるとはいえ、アステカ色が強い。一概に言えないけれども、やはり外国の風が入っている作品は受賞しずらいのではないだろうか。

 

そして『おれたちの歌をうたえ』は、2度目の候補入りということもあり迷いに迷った。ただ、激しい熱量と勢いのある展開は小説として素晴らしいが、ミステリー作品として見た時にどう判断されるのか、なんとも言えないなぁ、と思ってしまった。

 

ということで、一穂 ミチさんの『スモールワールズ』が受賞するのではないか、と。

 

まず、直木賞は意外と短編作品の受賞が多いと思ったのと、文章の安定感、物語の豊かさ、読了後の得体の知れない気持ち。これらを踏まえると、直木賞に相応しいのは本作ではないだろうか、と予想。

 

 

全然違っていたら謝る準備はできている。

 

 
ご覧いただきありがとうございました! 

 


 


にほんブログ村 本ブログへ