本と宴





【おすすめ10冊】読書ノート#20

 管理人:宴
ご来訪に感謝。
ところで、こんなことを思う時がないだろうか?
 

 

  • 次はどんな本を読もうかしらん。
  • いろんな本を読みたい。
  • 宴が読んだ本を教えて欲しい。

 

ちょうどよかった!

今回は宴の読書記録『読書ノート』をご紹介しよう。

 

 

 

 

読書ノート

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洋食小川/小川 糸

寒い日には体と心まで温まるじゃがいもと鱈のグラタン、春になったら芹やクレソンのしゃぶしゃぶを。石垣島から届いたパイナップルでタルトを焼いたり、ペンギンの仕事場にトンカツの出前をすることも。一人の夜には、スパイスを煮込んだホットワインを楽しむ。大切な人、そして自分のために、洋食小川は大忙し。台所での日々を綴ったエッセイ。(「BOOK」データベースより)

 

感想書評

食堂のようにいろんなメニューに溢れたエッセイ。

 

文章に突如現れるペンギンという名称は何? と呆気にとられたりもするが、その優雅に見える生活は作家として成功した筆者の生活と人生が垣間見える。飼い犬ゆり根の話、そしれ海外の話など、まさに勝ち組の人生ではないか。

 

芹やクレソンのしゃぶしゃぶもパイスを煮込んだホットワインも、僕は食べたこともないし、想像もつかない。もう羨ましすぎて身体中の毛穴からうろこが出てきそうだ。

 

 
そんな生活を送ってみたい。 

 

ギフト/原田 マハ

忙しさの中で見落としている「贈り物」をあなたへ。第1回「日本ラブストーリー大賞」大賞受賞、『カフーを待ちわびて』の著者が贈る、珠玉のショートストーリー。(「BOOK」データベースより)

 

感想書評

筆者が与えてくれた『ギフト』という名の短編集。というギフト。

 

一つ一つの物語はとても短いが、その中に詰まっている温かさは太陽のように大きく、幸せな余韻を何度も何度も味わうことができる。本作があれば冬でも暖房器具はいらないのではないだろうか。

 

短編だからこそじわりとくる優しさに、最上級の幸せを感じた一冊だ。

 

 
こんなギフトを誰かください。 

 

葉桜の季節に君を想うということ/歌野 晶午

「何でもやってやろう屋」を自称する元私立探偵・成瀬将虎は、同じフィットネスクラブに通う愛子から悪質な霊感商法の調査を依頼された。そんな折、自殺を図ろうとしているところを救った麻宮さくらと運命の出会いを果たして―。あらゆるミステリーの賞を総なめにした本作は、必ず二度、三度と読みたくなる究極の徹夜本です。(「BOOK」データベースより)

 

感想書評

詐欺事件を中心にまわる恋の物語。

 

本作に出てくる詐欺という悪意はいろんな人を不幸にし、傷つけ、騙してはぶん殴る。畜生、居た堪れないではないか! と憤っていたら、なんということでしょう。度々変わる語り手たちの暗躍もあって、見事に騙されてしまった。詐欺ではないか。

 

僕も生きている限り『何でもやってやろう屋』を続けていくことにしよう。

 

 
やってみないとわからないのだから。 

 

嫉妬/林 真理子

高校時代、やけに男を魅きつけた尾高裕美に。東京で生まれ育った美貌の同級生の吉岡暁子に。海外生活をしてきた同僚のエイミーに…。そのおさえても湧き上がる黒い嫉妬の感情に飲まれていく男女を鋭い筆さばきで描いた、切なくも残酷な傑作短編集。(「BOOK」データベースより)

 

感想書評

様々な嫉妬の形が描かれる短編集。

 

醜いものは? と問われたならば、5位以内にはランクインするであろう嫉妬が、まさかこれ程の美しさを帯びるとは思ってもいなかった。本作で描かれる嫉妬は単純な怖さと同時に、女性のたくましさと神秘性をも持ち合わせている。

 

怒りや蔑みだけではなく、歯がゆかったり物思いに耽ったりしてしまう嫉妬のバラエティパックは、お歳暮なんかに贈ると喜ばれることであろう。

 

 
たまには嫉妬するのも悪くないかもしれない。 

 

こんこんさま/中脇 初枝 

「こんこんさま」と呼ばれる北鎌倉の朽ちかけた屋敷に末娘が連れてきたのは、占い師。怪しい闖入者により、てんでばらばらな家族の秘密が思いがけず明かされてゆく―。小さなこどもの瞳から見た、家族再生のささやかなものがたり。(「BOOK」データベースより)

 

感想書評

壊れた家族の再生へと続く物語。

 

一度壊れたものを直していくのは、きっかけさえあれば案外、難しくないのかもしれない。本作の家族にとって、それは詐欺とこんこんさまだった。なかなかこんなきっかけは見たことがないので呆気にとられたが、はじめの一歩はまず気持ちからなのかも。

 

これから家族がどうなっていくのかわからないけれど、ぜひとも幸せな道を歩んでいくことを祈るばかりだ。

 

 
頑張っていただきたい。 

 

誰もいない夜に咲く/桜木 紫乃

親から継いだ牧場で黙々と牛の世話をする秀一は、三十歳になるまで女を抱いたことがない。そんな彼が、嫁来い運動で中国から迎え入れた花海とかよわす、言葉にならない想いとは―(「波に咲く」)。寄せては返す波のような欲望にいっとき身を任せ、どうしようもない淋しさを封じ込めようとする男と女。安らぎを切望しながら寄るべなくさまよう孤独な魂のありようを、北海道の風景に託して叙情豊かに謳いあげる、傑作短篇集。(「BOOK」データベースより)

 

感想書評

仄暗い生活の中で光を見つけていく短編集。

 

都会では目に見えにくい地方の問題や苦労を、筆者は北海道という広大な土地の情緒と風景と共に投げかける。その中で生きていく登場人物たちはボロボロだけれど、健気で力強い。道産子魂ここにあり、だ。

 

どんな境遇でも必死に生きていけば咲くことができるのだと、本作は訴えかけるように叫んでいる。

 

 
いろんな北海道を堪能できる一冊。 

 

有頂天家族二代目の帰朝/森見 登美彦 

狸の名門・下鴨家の矢三郎は、親譲りの無鉄砲で子狸の頃から顰蹙ばかり買っている。皆が恐れる天狗や人間にもちょっかいばかり。そんなある日、老いぼれ天狗・赤玉先生の跡継ぎ“二代目”が英国より帰朝し、狸界は大困惑。人間の悪食集団「金曜倶楽部」は、恒例の狸鍋の具を探しているし、平和な日々はどこへやら…。矢三郎の「阿呆の血」が騒ぐ!(「BOOK」データベースより)

 

感想書評

 狸と天狗と人間がしっちゃかめっちゃかする物語。

 

前作の、あの面白さを維持できるのか、そして超えられるのか? と訝っていたらあっさりと超えてきた。狸も天狗も人間も奮闘に次ぐ奮闘ぶりに、胸で茶が湧かせそうなほど熱くなる。

 

前作を読んでいるからこその衝撃と二代目という新しい風に吹き飛ばされてしまいそうだ。

 

 
阿保の血が騒ぐ。
 

 

銃/中村 文則

雨が降りしきる河原で大学生の西川が出会った動かなくなっていた男、その傍らに落ちていた黒い物体。圧倒的な美しさと存在感を持つ「銃」に魅せられた彼はやがて、「私はいつか拳銃を撃つ」という確信を持つようになるのだが…。TVで流れる事件のニュース、突然の刑事の訪問―次第に追いつめられて行く中、西川が下した決断とは?新潮新人賞を受賞した衝撃のデビュー作。単行本未収録小説「火」を併録。(「BOOK」データベースより)

 

感想書評

銃に魅入られた男の物語。

 

理由がよくわからないけれど、何かに魅了され夢中になることはよくあることではあるが、残念なことに男が夢中になったものは銃。人を殺傷する道具である。銃そのものではなく、銃の意味にまで魅入られた男の運命は手に汗握るスリルを常に纏っている。

 

迷いと誘惑の中の逡巡と行動は男をどこへ向かわせるのか。片時も目が離せない一冊だ。

 

 
男にとって銃とは何だったのだろう。
 

 

スモールワールズ/一穂 ミチ

夫婦円満を装う主婦と、家庭に恵まれない少年。「秘密」を抱えて出戻ってきた姉とふたたび暮らす高校生の弟。初孫の誕生に喜ぶ祖母と娘家族。人知れず手紙を交わしつづける男と女。向き合うことができなかった父と子。大切なことを言えないまま別れてしまった先輩と後輩。誰かの悲しみに寄り添いながら、愛おしい喜怒哀楽を描き尽くす連作集。

 

感想書評

魔王のように晴れ晴れとさせてくれたり、ピクニックのように苦い後味になったり、ネオンテトラの雑学を知り飼いたくなったりする物語。

 

短編集でありながらどの物語にも物語としての熱量を帯びている。このまま終わるのかなと思わせておいて、きちんと裏切ってくれたり、きちんと丁寧に気持ちの起伏をおこさせてくれた。筆者にはありがとうを一千万回言っても足りないぐらいである。

 

心にグイグイと刺さる言葉たちが自然な形で染み渡っていく、清々しい一冊だ。

 

 
僕は魔王になりたい。 

 

高瀬庄左衛門御留書/砂原 浩太朗

神山藩で、郡方を務める高瀬庄左衛門。50歳を前にして妻を亡くし、さらに息子をも事故で失い、ただ倹しく老いてゆく身。残された嫁の志穂とともに、手慰みに絵を描きながら、寂寥と悔恨の中に生きていた。しかしゆっくりと確実に、藩の政争の嵐が庄左衛門を襲う。

 

感想書評

高瀬庄左衛門の生き様が胸に響く物語。

 

つい鬱憤を時代のせいにしてしまう人は今でも絶えない。けれど、僕たちは今の時代に生きて死んでいくしかない。高瀬庄左衛門の生き様は現代にも通ずる芯のあるもの。決して時代のせいにせず、真摯に立ち向かい生きている。

 

悲しみや喜び、諦念。いつの時代でも、どうしようもないことはたくさんあるけれど、そんな時は本作を思い出して強く生きていこうと思う。

 

 
高瀬庄左衛門のように生きたい。
 

 


 


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