本と宴





【おすすめ10冊】読書ノート#21

 管理人:宴
ご来訪に感謝。
ところで、こんなことを思う時がないだろうか?
 

 

  • 次はどんな本を読もうかしらん。
  • いろんな本を読みたい。
  • 宴が読んだ本を教えて欲しい。

 

ちょうどよかった!

今回は宴の読書記録『読書ノート』をご紹介しよう。

 

 

 

 

読書ノート

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おれたちの歌をうたえ/呉 勝浩

「あんた、ゴミサトシって知ってるか?」 元刑事の河辺のもとに、ある日かかってきた電話。その瞬間、封印していた記憶があふれ出す。真っ白な雪と、死体――。あの日、本当は何があったのか? 友が遺した暗号に導かれ、40年前の事件を洗いはじめた河辺とチンピラの茂田はやがて、隠されてきた真実へとたどり着く。 『スワン』で日本推理作家協会賞、吉川英治文学新人賞を受賞。圧倒的実力を誇る著者が、迸る想いで書き上げた大人のための大河ミステリー。

 

感想書評

過去と現在が織りなすドラマティックな物語。

 

小説でドラマを生み出すには人の歴史というのが必要になる。筆者はその歴史を巧みに操り、壮大なドラマを一冊の本にぎゅっと詰め込んだ。友の暗号、40年前の事件。現在と過去がどう絡み合うのか。一体、何が真実なのか。緊迫する展開に心臓が波打って仕方がない。

 

何にもとらわれずに疾走していく展開に、筆者のほとばしる熱量を感じた一冊だ。

 

 
切なくて熱い。
 

 

テスカトリポカ/佐藤 究

メキシコのカルテルに君臨した麻薬密売人のバルミロ・カサソラは、対立組織との抗争の果てにメキシコから逃走し、潜伏先のジャカルタで日本人の臓器ブローカーと出会った。二人は新たな臓器ビジネスを実現させるため日本へと向かう。川崎に生まれ育った天涯孤独の少年・土方コシモはバルミロと出会い、その才能を見出され、知らぬ間に彼らの犯罪に巻きこまれていく――。海を越えて交錯する運命の背後に、滅亡した王国〈アステカ〉の恐るべき神の影がちらつく。人間は暴力から逃れられるのか。心臓密売人の恐怖がやってくる。誰も見たことのない、圧倒的な悪夢と祝祭が、幕を開ける。第34回山本周五郎賞受賞。

 

感想書評

アステカの神々の不穏に酔いしれる物語。

 

本作を一か月間ぐらいずっと読み続けていると、僕は立派なアステカ信仰者になれると思う。どのページをめくってもチラつくアステカの神々。そして、残虐な暴力とアンダーグラウンドな世界は、圧倒的な迫力をもって襲い掛かってくる。にも関わらず、抵抗なんて一切せず受け入れてしまうような作りこまれた深淵が本作にはある。

 

どこへ向かっていくのか、見えない終着点に息をするのも忘れてしまう一冊だ。

 

 
呑み込まれそうになった。 

 

星落ちて、なお/澤田 瞳子

不世出の絵師、河鍋暁斎が死んだ。残された娘のとよ(暁翠)に対し、腹違いの兄・周三郎は事あるごとに難癖をつけてくる。早くから養子に出されたことを逆恨みしているのかもしれない。 暁斎の死によって、これまで河鍋家の中で辛うじて保たれていた均衡が崩れた。兄はもとより、弟の記六は根無し草のような生活にどっぷりつかり頼りなく、妹のきくは病弱で長くは生きられそうもない。 河鍋一門の行末はとよの双肩にかかっっているのだった――。

 

感想書評

家族と絵師の境目を彷徨う物語。

 

芸術まっしぐらで、私生活にも支障をきたす芸術家は、それはそれでかっこいいものである。だが家族だとすれば話が違う。とよは父に囚われ、家族と向かい合い、自分自身とも向き合っていく。その様は、父とは違うけれど、同じように偉大だ。

 

実際に存在した絵師だからこそ感じる時代の定めに胸が締め付けられる一冊だ。

 

 
日本にも偉大な絵師がいた。 
 

悲しみの歌/遠藤 周作

米兵捕虜の生体解剖事件で戦犯となった過去を持つ中年の開業医と、正義の旗印をかかげて彼を追いつめる若い新聞記者。表と裏のまったく違うエセ文化人や、無気力なぐうたら学生。そして、愛することしか知らない無類のお人好しガストン……華やかな大都会、東京新宿で人々は輪舞のようにからみ合う。 ――人間の弱さと悲しみを見つめ、荒涼とした現代に優しく生きるとは何かを問う。

 

感想書評

人間の悲しみに満ちた物語。

 

人間の弱さや不完全な優しさや正義。正しいことが何かよくわからず模索して生きる人間の悲しさが舞う新宿は、一周回ろうが何をしようがやはり悲しい。その中で、ひたすらに優しいお人好しなガストンは甘い考えなのかもしれないが、それでも救われるものだ。

 

それなりに豊かな今の時代からでは導き出せないであろう悲しみと救いに胸を打たれた一冊だ。

 

 
人間は悲しい。
 

 

クライマーズ・ハイ/横山 秀夫

1985年、御巣鷹山に未曾有の航空機事故発生。衝立岩登攀を予定していた地元紙の遊軍記者、悠木和雅が全権デスクに任命される。一方、共に登る予定だった同僚は病院に搬送されていた。組織の相剋、親子の葛藤、同僚の謎めいた言葉、報道とは―。あらゆる場面で己を試され篩に掛けられる、著者渾身の傑作長編。(「BOOK」データベースより)

 

感想書評

報道というものの見方が変わる物語。

 

新聞記者といえば、ペンは剣より強し、正義の名の下に彼らは日夜戦い続ける、というイメージがある。しかし実際はそう簡単にはいかない。見えない、いや丸見えなんだけれども、大きな力が影響する。それは退廃的で、腐った硫黄のような匂いがする嫌なもの。

 

報道とは、新聞とは、記者とは。それらを問いながらも、果敢に立ち向かう悠木和雅をみていると、普段何気なく読んでいた新聞を明日から全集中で読むことを、ここに誓いたい。

 

 
最高にハイってやつだ。 

 

俺と師匠とブルーボーイとストリッパー/桜木 紫乃

ギャンブルに溺れる父と働きづめの母から離れ、日々をなんとなく生きる二十歳の章介。北国のキャバレーで働きながら一人暮らしをする彼は、新しいショーの出演者と同居することになった。「世界的有名マジシャン」「シャンソン界の大御所」「今世紀最大級の踊り子」……店に現れたのは、売り文句とは程遠いどん底タレント三人。だが、彼らと言い合いをしながらも笑いに満ちた一か月が、章介の生き方を変えていく。『ホテルローヤル』『家族じまい』著者が放つ圧巻の人間ドラマ! このラストシーンは、きっとあなたの希望になる。

 

感想書評

場末の哀愁感が漂う物語。


本作の舞台は決して華やかな場所ではない。けれど、登場人物たちは元気一発、溌剌と個性を醸し出している。そんな彼らがおくる家族のような、でも家族にはなり得ない共同生活は僕の胸をとらえて、まるで万引き犯を見つけてしまったかのように離してくれない。


憧れる暮らしや生活ではないけれど、不思議と羨ましくなるような人生の1ページが心に染み入る。

 

 
し、師匠… 

 

あひる/今村 夏子

あひるを飼い始めてから子供がうちによく遊びにくるようになった。あひるの名前はのりたまといって、前に飼っていた人が付けたので、名前の由来をわたしは知らない―。わたしの生活に入り込んできたあひると子供たち。だがあひるが病気になり病院へ運ばれると、子供は姿を見せなくなる。2週間後、帰ってきたあひるは以前よりも小さくなっていて…。日常に潜む不安と恐怖をユーモアで切り取った、河合隼雄物語賞受賞作。(「BOOK」データベースより)

 

感想書評

何かよくわからない気持ちになる物語。

筆者は何かを伝えようとしているのかもしれないが、それが判然としない。なのに何だろうか、この気持ちは。心のどこか掴みどころのない場所に、よくわからないモヤっとしたものが引っ掛かってしまい、全然とれやしない。けれど嫌じゃない。気持ちよさすら感じる。

 

何度でもこの感覚を味わいたくなる。筆者にとことんやられてしまったようだ。

 

 
この気持ちは何?
 

 

余命3000文字/村崎 羯諦

 「大変申し上げにくいのですが、あなたの余命はあと3000文字きっかりです」ある日、医者から文字数で余命を宣告された男に待ち受ける数奇な運命とは―?(「余命3000文字」)。「妊娠六年目にもなると色々と生活が大変でしょう」母のお腹の中で引きこもり、ちっとも産まれてこようとしない胎児が選んだまさかの選択とは―?(「出産拒否」)。「小説家になろう」発、年間純文学「文芸」ランキング第一位獲得作品の書籍化。朝読、通勤、就寝前、すき間読書を彩る作品集。泣き、笑い、そしてやってくるどんでん返し。書き下ろしを含む二十六編を収録!(「BOOK」データベースより)

 

感想書評

至高の世界観に心が弄ばれる物語。


もやもやしたり、イライラしたり、困ったり、辛かったり、心の鬱憤を小説によって晴らそうと目論む人は少なくないかと思う。実際、僕も小説に救われた事は何度だってある。本作はそんな心の中に潜む小悪魔に対し、ガツン! と何かを言ってくれるのかと思いきや、何もしてくれない。

 

解決策を提示してくれることも、晴れやかな気持ちになることもない。そこには最高のエンターテイメントと、畏敬の念を抱いてやまない物語が闊歩しているだけだ。ところが、いつの間にか心の小悪魔がどこかに消えてしまっている。恐れをなしたのか、気まぐれなのかはわからない。


僕は本作を読書中、何度も、すげぇ、すげぇ、と小学生がイケナイものを目撃してしまったかのように興奮した。大化の改新にでも遭遇してしまったかのような心持ちである。

 

 
発想がすごい。
 

 

人質の朗読会/小川 洋子

 遠く隔絶された場所から、彼らの声は届いた―慎み深い拍手で始まる朗読会。祈りにも似たその行為に耳を澄ませるのは、人質たちと見張り役の犯人、そして…。人生のささやかな一場面が鮮やかに甦る。それは絶望ではなく、今日を生きるための物語。しみじみと深く胸を打つ、小川洋子ならではの小説世界。(「BOOK」データベースより)

 

感想書評

不思議な思い出たちが胸を打つ物語。


ドラゴンボールならば、かめはめ波であるような、筆者の得意技である不思議な光線が放たれているのだが、秀逸なのは設定である。本作はただの不思議な物語たちではなく、前提として彼らは人質。近くに死が置いてある場所で語られた物語は、僕にただの不思議な物語だとは思わせてくれない。

 

まさにそれは祈りである。助かりたい、とか生きたい、ではない自分が今生きていることに対しての祈りだ。


人質にされているという設定にも関わらず、そこには全く刺々しさが見当たらない。とても優しい朗読会だった。

 

 
素敵な朗読会だ。
 

 

魔法飛行/加納 朋子

もっと気楽に考えればいいじゃないか。手紙で近況報告するくらいの気持ちでね―という言葉に後押しされ、物語を書き始めた駒子。妙な振る舞いをする“茜さん”のこと、噂の幽霊を実地検証した顛末、受付嬢に売り子に奮闘した学園祭、クリスマス・イブの迷える仔羊…身近な出来事を掬いあげていく駒子の許へ届いた便りには、感想と共に、物語が投げかける「?」への明快な答えが。(「BOOK」データベースより)

 

感想書評

ななつのこの続編の物語。


これぞ駒子です! といった風情の駒子の物語もさることながら、やはり重要なのが手紙。前作でもキーマンとして、その界隈では一世を風靡していたが、本作では気になる謎となり、また魔法となって僕と駒子に纏わりつくいてくる。それが駒子の物語と噛み合わさる時、一見バラバラに見えたパーツが、ぎゅん! と1つになる様は圧巻。まさに魔法だ。

 

そんな優しい高揚感に包まれた物語と駒子のささやきに僕はこう返答したいと思う。ハロー、ジスイズ、ドクシャ。駒子がっかりするかなぁ…

 

 
がっかりどころじゃない。 

 

 

 


 


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