本と宴





【書評・感想文】全ての『推しがいる人』に捧ぐ物語

 管理人:宴
ご来訪に感謝。
ところで、こんなことを思う時がないだろうか?
 

 

  • 推しのことを考えるだけで胸いっぱい。
  • 推しが炎上したらどうしよう。
  • 推しがメディアからいなくなって悲しい。

 

ちょうどよかった!

今回は『【書評・感想文】全ての『推しがいる人』に捧ぐ物語』を紹介しよう。

 

 

 

 

【書評・感想文】全ての『推しがいる人』に捧ぐ物語

 

歩いている時に、向こうの不注意でぶつかってきた相手が新垣結衣だった場合と、推しのやることは大抵許せちゃうよね。

 

どうも、宴である。

 

今回は宇佐見りんさんの『推し、燃ゆ』を全力で紹介していこうと思う。

 

あらすじ

推しが炎上した。ままならない人生を引きずり、祈るように推しを推す。そんなある日、推しがファンを殴った。(「BOOK」データベースより) 

 

なお、表紙は三月のパンタシアや、ジャニーズのアイドルグループSixTONES「うやむや」MVなどのお仕事をされているダイスケリチャードさんが手掛けている。

 

ダイスケリチャードさんのHP ⇨ TOP | daisukerichard

SixTONES「うやむや」MV ⇨ SixTONES - うやむや [YouTube Ver.] (from Album “1ST”)

三月のパンタシアのHP ⇨ 三月のパンタシア Official Website

 

 
表紙が印象的。 

 

宇佐見りんとは?

 

宇佐見りん(うさみ りん)さんは1999年5月16日生まれの作家さん。

 

2019年に『かか』で文藝賞を受賞し、2020年には三島由紀夫賞を最年少で受賞するという華々しい才能の持ち主。

受賞は逃したものの、第42回野間文芸新人賞候補にも選ばれた。

(この時の大賞は、李龍徳さんの『あなたが私を竹槍で突き殺す前に』)

 

そして、『推し燃ゆ』で第164回芥川賞を受賞。

受賞時は、21歳8か月ということで『蹴りたい背中』の綿矢りささん、『蛇にピアス』の金原ひとみさんに次ぐ、史上3番目の若さでの受賞だ。

 

 
すごい人が現れた。 

 

推し燃ゆとは

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推しが燃えた。ファンを殴ったらしい。

 

ページ数144ページのオタク盛りの物語は、推しがいる人にとっては衝撃的で、推しがそもそも何なのかわからない人にとっては意味不明な冒頭の書き出しから始まる。

 

 

 

 

登場人物

 

山下あかり

主人公の女子高生。

家族に母と姉と単身赴任をしていた父がいる。

まざま座というアイドルグループの上野真幸を推している。

 

上野真幸

まざま座のメンバーであかりの推し。

物語早々ファンを殴ったらしく炎上する。

 

 

キーワード

 

推し

好きなアイドルや好きなキャラ、とにかく「好きー!」と思った対象のこと、及びその対象を応援すること。

本作では山下あかりの推しはまざま座の上野真幸である。

 

炎上

炎上と言えば本能寺が有名であるが、現代ではもっぱら非難批判が殺到することを指す。

本作では上野真幸がファンを殴ったことにより、炎上する。

 

ファンブログ

推しへの愛しさが溢れたブログ。

本作では山下あかりがブログをしばしば投稿し、ブログのファンもいるようである。

 

 
推しは一体どうなってしまうの? 

 

ここが面白い!

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注目すべきおすすめ面白ポイントは以下の3点。

 

  • 推しの炎上がもたらす脅威

  • オタクは行こうと思えばどこまでも行ける

  • 推しとは何だったのか

 

 

推しの炎上がもたらす脅威

 

僕はジャニオタなので、その頼んでもいない凄まじく不要なイベントの衝撃を何度も体感したことがあるが、胸を抉られるとかそういう次元の話ではない。

 

オタクにとっては悪霊や猟奇殺人鬼なんかよりも怖い地獄絵図のような出来事なのだ。

 

それにより推しをやめてしまった人、アンチになった人、より強い気持ちで推す人、と様々な道へと歩きはじめる。

 

無駄な人生の岐路を作り出す炎上。

 

その怖さは、オタクである自分を改めて見つめることができる反面、胸をきゅるきゅると締め付けられ、痛いなんてものでは済まされないので、心のバンドエイドをどこかの企業にはぜひとも発売してほしいものである。

 

 

オタクは行こうと思えばどこへでも行ける

 

あかりの推しとの出会い、ハマっていく経緯、推しのために何をするのか、どういう気持ちなのか。

 

それはすごくわかるのだが、オタクには境界線というものがある。

 

そこから先は行っては駄目だよ、という立て札がある場所があるのだが、それがわからず突き進んでしまうと、もう戻ることは叶わない。

 

三島由紀夫さんの『金閣寺』や村田沙耶香さんの『コンビニ人間』のように、大勢の人からは理解されず、世間とのズレが生じることになる。

 

あかりはその立て札が見えなかったようなので、今後推しが出来そうな人は、立て札をもっとゴージャスに歌舞伎町の燦然と煌めくネオン看板のように装飾しておくことをおすすめする。

 

 

推しとは何だったのか

 

オタクにとって推しとは、自分を支えてくれる尊い神のような存在。

 

推しが「これが好き」と言えばその対象物を死に物狂いで探し出すだろうし、「これが嫌い」と言えば全世界にある対象物を焼き払ってしまう可能性を秘めている。

 

けれども、辛いことがあった時や崖から突き落とされて転落しそうな時、神はきっと何もしてくれはしないだろう。

 

それに気づいた時、心はどこへ行ってしまうのだろうか。

 

加速していくあかりのオタク活動に一抹の不安を覚えずにはいられない。

 

 

 

 

総評

 

推しが燃えた物語。

 


萌えた、ではなく、燃えた、である。


僕はジャニオタなので、その頼んでもいない凄まじく不要なイベントの衝撃を体感したことがあるが、胸を抉られるとかそういう次元ではない。


いろんな感情が渦巻くのだ。


推しは悪くない! という感情。


けれど、あれ、悪いな…という感情。


それでも応援しなければ! という感情。


応援してていいのだろうか…という感情。


それらがごちゃ混ぜになり、もう何が何だかわからない。


本作は極端な例もあるが、そんな気持ちが緻密に描かれた傑作である。

 

 

推しがいる人にとっては、ぜひ読んで頂きたい小説であるし、オタクに理解がない人にも、一度咀嚼して頂きたいと、ロシアの方々が寒さ対策のために飲むアルコールぐらい強めに思う。

 

 
あかりはどこへ向かっていくのだろうか。
 

 

モデルや元ネタは?

 

あかりの推しである上野真幸が、SnowManの岩本照くんがモデルなのでは? という噂がある。

 

疑惑は以下の2点から発生したものだと思われる。

 

  • 2014年にファンを殴り謹慎。

  • 子供時代にピーターパンのミュージカルに出演していた。

 

 

岩本照くんは2014年に粘着質なファンにまとわりつかれ、振り払ってしまった際に肘が女性の目を強打。

これが殴ったことになり、謹慎処分をうけた。

 

また、小学生時代に『岩本ひかる』という芸名で、ピーターパンのミュージカルに出演していた。

どうやらピーターパン役ではなくジョンという役だったようだが、たしかに上野真幸とかぶる点が見受けられる。

 

ただ、宇佐見りんさんはある俳優の推しだそうで、とくに言及もしていない。

 

真相は藪の中である。

 

 
岩本てる、じゃないよ、ひかる、だよ!
 

 

余談

 

ちなみに、僕が推していた彼はグループをやめ、今は一人で活動をしている。

 

あの時の凄まじい衝撃とその後にトコトコやってきた倦怠感、これからどうすればいいのかわからず、ここがデパートならば係員に呼び出してほしいぐらいの迷子感は異常であった。

 

そして彼はスキャンダルも多く、度々炎上していた。

 

平成の本能寺は彼だと思う。

 

※令和では、そこまでスキャンダルなし。

 

 
グループもソロも引き続き応援してるよ。 

 

心に残った言葉、名言

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「触れ合えない地上より触れ合える地下」

 歴代オタク名言集に刻み込まれるであろう。

 

 

ワイヤーにつるされた推しが頭の上を飛んで行った瞬間から人生が始まったと言ってもいい。

 推しとの出会いは人生の始まりの瞬間! すごくよくわかる!!

 

 

もう生半可には推せなかった。

そこがターニングポイント。

 

 

「あんた見てると馬鹿らしくなる。否定された気になる。あたしは、寝る間も惜しんで勉強してる。ママだって、眠れないのに、毎朝吐き気する頭痛いって言いながら仕事行ってる。それが推しばっかり追いかけてるのと、同じなの。どうしてそんなんで、頑張ってるとか言うの」

耳が痛いお言葉である。

 

 

やめてくれ、あたしから背骨を、奪わないでくれ。

ほっといてほしいよね。

 

 

推しは人になった。

これほど痛烈な言葉はない。

 

 

這いつくばりながら、これがあたしの生きる姿勢だと思う。

境界線を踏み越えた結果である。

 

 
オタクには刺さる言葉たちである。 

 

まとめ

 

推しをもつということは天竺を目指すぐらいに険しい道のりである。

 

推しへのハマり具合にもよるけれど、それはなかなか他人には理解されにくいものであろう。

 

本作はその理解されにくい部分を、極端な箇所もあるけれど緻密に綴った、全世界に推しをもつ人々にはぜひとも読んで頂きたい物語である。

 

推しがいない人にも、本作を読んでオタクというものを、ほんの少しでも理解して頂ければと思う。

 

 

 
ぜひ読んでみてね!
 

 

 


 


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