本と宴





【書評・感想文】ひょっとしたら大切な人は間違った道へ行こうとしているのかもしれないと思ったら、信じていることが揺れる物語を読めばいいと思う

管理者:宴

ご来訪に感謝。

ところで、こんなことを思う時がないだろうか?

 

 

  • 都合が悪くなると「帰れー!」って思う。
  • 浄水器を売らなければいけない。
  • 両親は河童なのかもしれない。

 

ちょうどよかった!

そんな人におすすめの小説がある。

 

『赤信号なのにみんな道路を渡っている最中、きちんと止まる子ども』と『星』って輝いてみえるよね。

どうも、宴だよ。

 

注意

子どもが見ていたら真似するかもしれないから、赤信号はきちんと止まろう。

 

今回は『信じていることが揺れる物語』ということで、今村夏子さんの『星の子』をご紹介していこうと思う。

 

信じていることが揺れる物語

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あらすじ

大切な人が信じていることを、わたしは理解できるだろうか。一緒に信じることができるだろうか…。病弱なちひろを救うため両親はあらゆる治療を試みる。やがて両親は「あやしい宗教」にのめり込んでいき…。

 

筆者の今村夏子さんは、1980年2月20日生まれ。

2010年に『あたらしい娘』で太宰治賞受賞、改題した『こちらあみ子』が2011年に第24回三島由紀夫賞受賞。

2017年に『星の子』で第157回芥川賞候補、及び第39回野間文芸新人賞受賞。

2019年に『むらさきのスカートの女』で第161回芥川賞を受賞。

 

<他作品>

『あひる』

『父と私の桜尾通り商店街』

 

 

 

星の子

管理者:宴
信じることは大切だよ。
 

  

物心ついた時から宗教が日常に組み込まれていたちひろが揺れ動く物語。

 

ある奇跡を目の当たりにしてから、あやしい宗教にはまった両親。そんな両親を信じたいちひろ。けれど、外の世界はちひろに、それはおかしいのでは? と遠回しに疑問を投げつけてくる。

 

物語とちひろは引っ込み思案なようで多くを語らない。その代わりに文章外で訴えてくる悲しみや惑いは痛切だ。

 

はたして、ちひろと両親は一体どうなっていくのだろうか…

 

STEP
宗教。
両親が宗教にはまる。
STEP
周りの目。
あれ、その宗教あやしくない?
STEP
揺れる日常。
でも、信じたい。

 

あやしげな宗教

管理者:宴
宗教のある生活。
 

 

世の中はあやしげなもので溢れている。けれど、あやしいと思われたものが、実は素晴らしいものであったこともある。では、あやしい、と、素晴らしい、の境界線はどこなのだろうか。

 

『身体の中で宇宙に一番近い部位であり、また全身の神経が集まる場所でもある頭頂から直接働きかけることにより、血液中のリンパ球がより一層刺激される』

 

薬を入れたお酒を大量に飲まされて、意識失ってるあいだにICチップ埋めこまれて、目が覚めたとたんに催眠術かけられて、水晶と花瓶両方買わされた……とか

 

あ、これはあやしいね。ちひろの両親は奇跡を目の当たりにし、ちひろ自身は物心ついた時点で宗教が日常として存在していた。けれども、はたから見れば明らかにあやしい。

 

宗教は素晴らしい、宗教はあやしい、というちひろの揺れは物語をそれ相応のマグニチュードで揺らしていく。

 

あやしいものベスト3
  • 祖父が語る偉大な先祖。
  • 行けたら行くね。
  • 親の武勇伝。

 

外の世界

 
 
 
 
管理者:宴
宗教への目は厳しい。 

 

宗教に対する周りの目というやつは、眼球が懐疑的で出来ているのではないか、と不安になるほど鋭いし冷たいものである。まぁ、仕方がないのだけれども。

 

進行方向に背を向けて座っていたせいか、自分が景色に突き飛ばされていくような、妙な居心地の悪さを感じていた。

 

生まれた時からすぐそこに宗教があったちひろは、宗教をおかしい、とは判断していない。とはいえ、学校へ行き、外の世界に触れる機会の多いちひろは、おかしい、という目を感じ取らざるを得ない。それは歯がゆくてどかしい痛みである。

 

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周りの目一覧

 

宗教は悪なのか?

管理者:宴
難しい問題。 

 

それにしても絶妙なのは、宗教のあやさしと、宗教にいる人たちの良さを半々ぐらいで描いているところだ。僕は本作を読んで、宗教が悪いとも、それを懐疑的に見る人たちが悪いとも思えなかった。どちらの気持ちも痛いぐらいに伝わってくる。

 

南先生に送ってもらったときに公園で見た怪しい人、あれうちの親なんだ

 

痛々しいちひろ。だが、彼女は心の内を語ることはない。筆者のすごいところは、読み手の心を揺さぶる事実を描いていることである。この何とも言えないモヤモヤがたまらない。

 

それでも信仰心の薄い僕は、大抵の宗教はあまり良いものではないと思っている。だが、そこにいる人たちはよろしくない人たちなのかと言えばそうでもない気がする。

 

……ぼくは、ぼくの好きな人が信じるものを、一緒に信じたいです。……それがどんなものなのかまだ全然わからないけど、ここにくればわかるっていうんなら、おれ来年もここにきます。わかるまでおれはここにきま、えー、くることを、おれはおれの好きな人に、約束します

 

これをきいて、僕は宗教を悪だと捉えることは出来なかった。またそれを批判する人たちがみんな良いものだとも思えやしなかった。

 

普通とは何か、悪とはどちらなのか。はっきりしないことが多い現代社会には、ひたすらに考えることが必要なのかもしれない。

 

出来れば信じたい言葉
  • 「この国を良くします!」
  • 「正社員にしてやる」
  • 「明日から働く」

 

 

 

まとめ

さて、今回は今村夏子さんの『星の子』を紹介させていただいたが、いかがだっただろうか。

 

ちひろが見た内と外からの宗教。

周りの目。

信じたい気持ち。

 

宗教と周りの目。その悪と良を絶妙なバランスで描いた本作は、僕にいろんなものを叩きつけてくる。ちひろは恥ずかしがり屋なのか、心の内を曝してくれない。でも、だからこそ感じる歯がゆさとやるせなさが本作には充満していた。

 

やりきれない部分もあるけれど、ちひろが少しでも幸せだと感じているのであればいいなぁ。

 

それでは本日はこのへんで。

ごきげんよう。

 

 

管理者:宴

ご覧いただきありがとうございました!

ぜひ読んでみてね!

 

 


 


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