本と宴





【書評・感想文】生きる喜びを見失ってしまったのならば、うらぶれた町の物語を読めばいいと思う

管理者:宴

ご来訪に感謝。

ところで、こんなことを思う時がないだろうか?

 

 

  • 惚れたら身を賭けるしかない。
  • 嘘をついて生きている。
  • 心淋し。

 

ちょうどよかった!

そんな人におすすめの小説がある。

 

『やけに入り組んでて行き止まりの多い巨大迷路』と『川』って人生のようだよね。

どうも、宴だよ。

 

memo

けれども、出口のない迷路はない。

 

今回は『うらぶれた町の物語』ということで、西條奈加さんの『心淋し川』をご紹介していこうと思う。

 

うらぶれた町の物語

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あらすじ

不美人な妾ばかりを囲う六兵衛。その一人、先行きに不安を覚えていたりきは、六兵衛が持ち込んだ張形に、悪戯心から小刀で仏像を彫りだして…(「閨仏」)。飯屋を営む与吾蔵は、根津権現で小さな女の子の唄を耳にする。それは、かつて手酷く捨てた女が口にしていた珍しい唄だった。もしや己の子ではと声をかけるが―(「はじめましょ」)他、全六編。生きる喜びと哀しみが織りなす、渾身の時代小説。

 

筆者の西條奈加さんは1964年11月9日生まれ。

 

<主な受賞歴>

2005年『金春屋ゴメス』で第17回日本ファンタジーノベル大賞大賞受賞。

2012年『涅槃の雪』で第18回中山義秀文学賞受賞。

2015年『まるまるの毬』で第36回吉川英治文学新人賞受賞。

2021年『心淋し川』で第164回直木賞受賞。

 

<他作品>

『三途の川で落しもの』

『銀杏手ならい』

『隠居すごろく』

 

 

 

心淋し川

管理者:宴
どんな川?
 

 

書き出し

その川は止まったまま、流れることがない。

 

心淋し川(うらさびしがわ)が流れる心町(うらまち)を舞台にした六篇の時代小説。

 

短編集ではあるが、同じ場所を舞台にしているため登場人物が物語をこえて行き来していたり、え、あんたそうだったの!? という衝撃の事実が隠されていたりと、心忙しない。

 

生きることは辛いことかもしれないけれど、うあうあともがき苦しみ、そして喜びに触れていく住人たちは、もはや心豊か川なのではないだろうか。どうだろうか。

 

STEP
心淋し川
ちほと元吉の恋物語。
STEP
閨仏
六兵衛と4人の妾の物語。
STEP
はじめましょ
与吾蔵とゆかとはじめましょ。
STEP
冬虫夏草
吉と富士之助の歪んだ物語。
STEP
明けぬ里
ようと明里の嘘の物語。
STEP
灰の男
驚きの物語。

 

心淋し川

管理者:宴
こんな川。
 

 

表題作「心淋し川」は女の弱さとそれに反した強さ、そして男の身勝手さが矢面に立ったCDアルバムでいうところのリード曲、もといリード話。

 

「女ってのは、男に惚れると、びっくりするほどきれいになる。内に秘めた恋心が、肌から透けちまうんだ。あんたみたいな堅物じゃ、なおさらだよ。たぶん、おとっつぁんやおっかさんも、薄々は気づいているように思うがね」

 

「女が本気になるのは、惚れた男のためだけさ。手に入れようと思ったら、我が身を賭けるしかないんだよ」

 

現代だと女性も社会進出を果たし、いろんなことができる時代であるが、この時代はまだ性の垣根は大きく、女性は男性についていくのが定石という風潮があったかと思われる。

 

とはいえ、女性の強さはこの時代から健在。ちほの堂々とした振舞いに対し、元吉のなんとも情けないことか。男はいつの時代も身勝手なものである。

 

次の物語である閨仏でも、次のような身勝手な一節がある。

 

六兵衛に限らず世の男たちは、女の悋気は手に余るとばかりに面倒がって放り投げる。

 

男性諸君よ、気持ちはわかるが女性の気持ち、もう少し考えようね、と身勝手な男性代表である僕が申しております。

 

身勝手なものベスト3
  • 引退宣言翌日に活動再開宣言。
  • ジャイアニズム。
  • 流川楓。

 

親と子

 
 
 
 
管理者:宴
無償の愛って素敵。
 

 

親と子の愛は素晴らしいものであるが、その愛、間違えていないかい? と思わず注釈を入れたくなる親子もいる。

 

「子供のためと口にする親ほど、存外、子供のことなぞ考えてないのかもしれないな」

 

よくいるのがモンスターペアレントという輩。おそらく子どものこと考えてますよアピールとそんな自分が大好きなのだろうけども、それは本当に子どもの気持ちを考えてのことなのかい? そこにダムはあるのかい?

 

冬虫夏草という物語では、そんな親と子の物語が描かれる。これはもうホラーである。呪怨の伽倻子や、リングの貞子の次にきっと来るのは吉で間違いない。

 

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親子たち

 

寂寥

管理者:宴
寂しい…
 

 

人間は平等ではない。女子から常に蔑まれ、鬼でも来たかの如く騒がれ続ける僕のような人間もいれば、天界から舞い降りてきたペガサスの如くきゃあきゃあ騒がれるジャニーズ系の男子もいる。なんてことだ、理不尽極まりない。

 

生まれた時の境遇や環境が劣悪であればある程に人生の難易度はハードモード。ではそれをどうやって攻略していくのか。簡単なのは自分を騙し続けることだろう。

 

ーーいちばんの嘘つきは明里だろうな。

 

嘘ってバレたら終わりだけれど、バレなければ嘘をつき続けなくてはならない。その苦しみはどれほどのものだろうか。芸能人とかによくありそうだけれど、自分が自分ではなくなっていくような感覚って怖くて震えてしまう。

 

虚に等しく、死に近いものーーその名を寂寥という。

 

灰の男という物語でも語られているが、明里もずっと死に近い場所にいたのかもしれない。傍から見れば幸せに見えたけれど、内心は苦しみのビックウェーブにうたれ続けていたのではないだろうか。だとしたらつらみだ。

 

嘘をつくしかない時。
  • え、一緒にいた女の人? お、お母さんだよ。
  • この服似合う?
  • カメラ回してないやろな?。

 

 

 

まとめ

さて、今回は西条奈加さんの『心淋し川』を紹介させていただいたが、いかがだっただろうか。

 

うらぶれた町の情緒。

ワケありの住人たち。

生きるということ。

 

生きづらい時代の中で生きていく登場人物たち。時代によって生きずらさは変わっていくけれども、どんなに時が経っても生きる喜びと苦しみは通ずるのだと感じた。

 

そんな彼らから僕はプレゼントをもらった。それは生きていく勇気である。彼女の誕生日にあげたら怒られるであろう大切なプレゼントを、僕は生涯大事に育てていきたいと思う。

 

それでは本日はこのへんで。

ごきげんよう。

 

 

管理者:宴

ご覧いただきありがとうございました!

ぜひ読んでみてね!

 

 


 


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