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どうも、宴です。
あの子になりたい…他人のことってどうしても羨ましくなったりしますよね。でも、自分は自分にしかなれないのです、どこにいたって。
ということで、今回は寺地はるなさんの『どうしてわたしはあの子じゃないの』をご紹介させていただきます。
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どうしてわたしはあの子じゃないの/寺地はるな
中学の同級生だった男女3人。憧れ、嫉妬、後悔…伝えられなかった言葉は、卒業前に書いた手紙に込められた。30歳の今、あの日の手紙を読むことになってー。今最注目の著者がただ一人のあなたへ贈る感動の物語。(「BOOK」データベースより)
青春 | 10/10点 |
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ドキドキ | 9/10点 |
感動 | 8/10点 |
切なさ | 8/10点 |
読みやすさ | 9/10点 |
総評 | 10/10点 |
書評・感想文
ワクワクする青春小説
どうしてわたしはあの子じゃないのだろう。もしもあの子であればどんなにいいことか…青春時代、ふと沸き起こってしまうそんな気持ちを寺地はるなさんは巧みに描き、これでもか! ってほどの青春小説を作り上げました。
それが本作『どうしてわたしはあの子じゃないの』。狭い閉鎖空間のような田舎町を舞台に、中学の同級生三人の『どうしてわたしはあの子じゃないの』という気持ちが交錯し轟きます。いつ爆発してもおかしくないような破裂寸前の気持ちに不安を感じつつも、ワクワクが抑えきれない熱量高めの青春小説です。
天
物語は三人+αの視点から展開され、『どうしてわたしはあの子じゃないの』が、それぞれ違ったベクトルと熱を帯び、互いの物語で交差していきます。そのすれ違いがまさに青春って感じで、胸を熱くさせられます。
とくに『天(てん)』という主人公格の登場人物には心を奪われました。まだ知見が狭く、何事も諦めきれない年頃のはち切れそうな気持ち、憤懣、憧れ。僕も田舎育ちだったので、その気持ちはよくわかります。それが痛いほど伝わってきて、思わず天を抱きしめたくなりました。でも、通報されるかもしれないのでできなのが歯がゆくてもどかしいです。
熱々の熱
上質な青春小説というのは、読んでいるこちらが燃えてしまうような熱を持ち合わせています。本作もまた熱々の熱を持っていたので、僕の読んできた歴代青春小説トップ10に名を残すことになるでしょう。
1位は何? と訊かれたら答えられないやつだから、訊くのはやめてください。それは訊かない約束ですよ。
心に残った言葉・名言
怒りのせいか普段以上の力が出る。たぶん今なら孫や犬や猫の力を借りずとも大きなかぶを引っこ抜ける。孫も犬も猫もいないけど。
言葉はいっぺん相手にぶつけてしまったら、もう取り消すことなんかぜったいできないんだから。
「他人は自分のさびしさを埋めるために存在するわけじゃないですから」
オシャレをしていたら、家出をしたら、ひとりで歩いていたら、女の子は身体に触られたり、見たくもないものを見せられたり、殺されたりしてもしかたないんだろうか。
他人からの評価は、ある種の呪いだ。
「あなたはあなたにしかなれないのよ。どこにいたって」
他人に『しっかりしなきゃだめだよ』とか『この歳にもなってなにやってるの』とか言うのは、すごく気持ちいいことなんだよ。手軽な優越感に浸るのが趣味の人もいるんだから邪魔しちゃだめだよ
「どうしてわたしはあの子じゃないんだろう、っていつも誰かをうらやましがってた。でもわたしはやっぱり他人の必死さを笑ったり、心配するふりして気持ちよくなったりする側より、笑われる側にいるほうがずっといい」
寺地はるなさんの他作品
最後に
熱い青春小説を読みたい人、田舎育ちだった人、どうしてわたしはあの子じゃないのと思っている人にはおすすめだから、ぜひ読んでみてね。
それでは本日はこのへんで。
ご覧いただきありがとうございました。