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本と宴へようこそ。
どうも、宴です。
熱いといえば医療従事者さんです。彼らの命に対する想いは熱くて燃えてしまいそうになります。それはどんなに時代が違っていてもきっと同じです。
ということで、今回は澤田瞳子さんの『火定』をご紹介させていただきます。
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火定/澤田瞳子
藤原氏が設立した施薬院の仕事に、嫌気が差していた若き官人・蜂田名代だったが、高熱が続いた後、突如熱が下がる不思議な病が次々と発生。それこそが、都を阿鼻叫喚の事態へと陥らせる“疫神(天然痘)”の前兆であった。我が身を顧みず、治療に当たる医師たち。しかし混乱に乗じて、お札を民に売りつける者も現われて…。第一五八回直木賞にもノミネートされた、「天平のパンデミック」を舞台に人間の業を描き切った傑作長編。直木賞&吉川英治文学新人賞ダブルノミネート作品。(「BOOK」データベースより)
パンデミック | 10/10点 |
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ドキドキ | 9/10点 |
感動 | 8/10点 |
切なさ | 9/10点 |
読みやすさ | 6/10点 |
総評 | 10/10点 |
書評・感想文
天然痘
昨今のコロナ禍で痛感したのが、医療従事者への尊敬の念。感染する恐怖の中、爆発的に増えた感染者への対応には本当に感謝してもしきれません。
それは時代が違っても同じでした。本作『火定』はコロナと同じく感染症の恐怖を描いた時代小説です。感染症の名前は『天然痘』。致死率は高く、助かっても痘痕というブツブツが残ってしまう可能性が高い、呪いのような感染症です。
パニック
時は奈良時代、藤原四兄弟が治めていた遥か昔の時代になります。当たり前ですがメディアも発達していないので情報も行きわたらない。医療も発達していない。そんな状況化の中、民衆のパニックは当然です。
中には暴徒と化し、恐怖のあまり暴れまわる人々もいました。これを買えば助かりますよ、というインチキなお札でぼろ儲けしたりする輩もいました。土壇場に立たされた人間の狂気には、同じ種族ながらも眩暈がしてしまいます。
医療従事者の想いと熱量
そんな地獄絵図の中、頼もしくも感染症に立ち向かうのは医療従事者たちです。施薬院という病院のような場所にいる医師たちの、命を助けようとする想いと熱量は凄まじいものを感じます。感染症と戦う人間の姿というのはこうも頼もしいものなのか、と感服しました。
現代の医療従事者たちがどんな想いで感染症と戦っているのか。本作はそれが少しだけ想像できる一冊です。改めて、医療従事者への敬意が心に刻まれます。
心に残った言葉・名言
所詮、病とはどこから来るか分からぬ、正体不明の存在。どれだけ薬を飲み、養生しても、病で死ぬ者は死ぬのだし、治る者は治る。病の原因なぞ突き止めたところで、いったい何になるのだろう。
「獄じゃまともな奴ほど、早く死ぬ。自分が生き残るためには、人を蹴落とさなきゃならねぇんだ」
「人ってのは愚かなものでよ。やれ病だ、やれ戦だとなると、何かすがるものが欲しくってならねえらしい。最近じゃ一枚銭百文、二百文という値をつけたって、札は次から次へと飛ぶように売れていくぜ」
「己のために行ったことはみな、己の命とともに消え失せる。じゃが、他人のためになしたことは、たとえ自らが死んでもその者とともにこの世に留まり、わしの生きた証となってくれよう。つまり、ひと時の夢にも似た我が身を思えばこそ、わしは他者のために生きねばならぬ」
「新羅の神を追い払えッ。そうすればこの疫病の流行も収まるぞッ」
もしかしたら京を荒れ野に変えるが如き病に焼かれ、人としての心を失った者に翻弄される自分たちもまた、この世の業火によって生きながら火定入滅を遂げようとしているのではないか。
澤田瞳子さんの他作品
最後に
過去におきたパンデミックを知りたい人、医療従事者に敬意を払っている人、コロナ警察に勤めていた人にはおすすめだから、ぜひ読んでみてね。
それでは本日はこのへんで。
ご覧いただきありがとうございました。