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本と宴へようこそ。
どうも、宴です。
懐かしいと感じるものは世代によって変わってしまいますが、変わらないのは、どれもこれも輝かしい人生の1ページだということ。破ったりしないよう大切にしましょう。
ということで、今回は姫野カオルコさんの『青春とは、』をご紹介させていただきます。
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青春とは、/姫野カオルコ
コロナ禍のさなか、家でひきこもっていた女性が見つけた名簿と一冊の本。地方の高校に通っていた記憶が、映画を見ているかのように浮かびあがる。『ラブアタック!』、『パンチDEデート』、「クミコ、君をのせるのだから。」、ミッシェル・ポルナレフ、スタイリスティックス、『ミュージック・ライフ』、『FMレコパル』、旺文社のラジオ講座…そして、夜の公衆電話からかけた電話。「今からすれば」。見る目を広めた彼女の胸に、突如湧き上がる思いとは。(「BOOK」データベースより)
青春 | 9/10点 |
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ドキドキ | 6/10点 |
感動 | 7/10点 |
切なさ | 7/10点 |
読みやすさ | 7/10点 |
総評 | 8/10点 |
書評・感想文
青春とは何なのか
青春は青い春と書きますが、実際問題、青春の中には夏秋冬も存在します。は! ひょっとして春は贔屓されているのでしょうか。だとすれば夏秋冬の気持ちも考えてほしいものです。
一体春は何様で、青春とは何なのか…その答えの一端が姫野カオルコさん『青春とは、』では描かれています。
素敵な時間旅行
主人公はあるきっかけから過去を振り返ります。そこには僕の世代よりも少し昔のレトロな世界が広がっていました。知らないような、どこかで聞いたことのあるような番組名、当時の流行りの音楽。気分は昭和、素敵な時間旅行のはじまりです。
そこからどんなスペクタクルな青春がはじまるのか…と思えば、主人公、いたって普通の人物で、抱えた憤懣を吐き散らすわけでもなく、何かに熱中しているわけでもありません。わりかし淡々とながれていく青春時代に色をつけるのは姫野カオルコさんのユーモア。些細なエピソードたちが青春としておもしろおかしく輝いていくのです。
そこでハッと気づきます。たとえ些細な出来事ばかりだとしても、自分だけの若かりし頃の思い出は、自分だけの唯一の青春なのだということに。
青春時代は青春時代
そして、もう一つ。青春とは虚像なのだということを知りました。後々知る事実や、大人になってからの気持ちの変化で、青春時代は大きく変わっていくのです。あいつが悪い、と思っていたことが、大人になって、まぁ、仕方がなかったのかもしれない、という風に。
読んでいる最中、ふと自分の何にもなかった青春時代を思い出しました。でも、何もなくはなかったのです。何にもないような時間が大切な青春の1ページたちだったのです。
本作は物語のおもしろい、というだけではなく、自分が過ごした唯一の青春時代というものを感慨深くさせてくれました。そんな過去へのパスポートでもあったのです。
心に残った言葉・名言
お母さんやお父さんという人は、はじめは、お母さんとかお父さんという人ではなかった。みんな、わりとそれを忘れる。忘れるようにしてるというか。
本というものは、きわめてプライベートな部分で接触するものだから、そういう部分に他人が関わるのは避けるべきなのだ。関わるなら、互いの状況をはっきり確認しあった上で関わらないとならない。
青春とは他人に厳しく自分に甘い。今からすれば、青春とはすべて、かっこ悪いの上塗りである。かっこいいことに狂おしく憧れながらも。
数学や物理より、体育の時間は、青春に陰影を濃くつける。とくに共学では。
〈ぶぶ漬けでもどうです〉に似て、〈考えさせてもらう〉は断りの湾曲表現である。
姫野カオルコさんの他作品
最後に
姫野カオルコさんのユーモアを味わいたい人、青春とは何かを知りたい人、ぶぶ漬けが好きな人にはおすすめだから、ぜひ読んでみてね。
それでは本日はこのへんで。
ご覧いただきありがとうございました。