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本と宴へようこそ。
どうも、宴です。
どんな辛いことがあっても、楽しいことがあっても、上を見上げるとそこには青空がいてくれます。たとえ、逃げなければいけない状況に追い込まれたって、青空と一緒なら何も怖くない気がしますね。
ということで、今回は辻村深月さんの『青空と逃げる』をご紹介させていただきます。
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青空と逃げる/辻村深月
深夜、夫が交通事故に遭った。病院に駆けつけた早苗と息子の力は、そこで彼が誰の運転する車に乗っていたかを知らされる…。夫は何も語らぬまま、知らぬ間に退院し失踪。残された早苗と力に悪意と追及が押し寄せ、追い詰められた二人は東京を飛び出した。高知、兵庫、大分、仙台ー。壊れてしまった家族がたどりつく場所は。(「BOOK」データベースより)
苦しさ | 10/10点 |
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ドキドキ | 6/10点 |
感動 | 8/10点 |
切なさ | 8/10点 |
読みやすさ | 7/10点 |
総評 | 7/10点 |
書評・感想文
逃げること
逃げるは恥だが役に立つ。という言葉があります。何を言っているのだ、武士が敵前逃亡などできるものか、恥知らずめ! と今まではぷりぷりぷんぷんしていたのですが、よくよく考えてみると僕は武士でもなければ、逃げることは恥でも何でもなかったのです。
それは意味のあることであり、必要なことでもあったのです。
母と子の逃避行
本作『青空と逃げる』は母と子の逃避行を描いた物語です。場所を転々としながらも生きていく二人の成長。そして、深まる家族の絆には熱いものが込み上げてきます。
もちろん逃避行には理由があるのですが、そこには謎が隠されています。小出しに現れる謎は読み手を撹乱し、ワクワクさせたり不安にさせたりもしますが、本作がただの逃避行の物語ではなく、家族の物語なのだとそっと教えてもくれます。
辻村深月さんが作中にばら撒く伏線は、いつも粋で我々を嬉しい驚きに導いてくれます。ありがたや。
砂かけさん
また、母と子の逃避行の場所それぞれの暮らしは、まるで旅行記を読んでいるかのような趣もあります。
印象に残っているのは『砂かけさん』。お客さんを寝かせ、周りにある砂をかけてもらい、「ああ、気持ちいい」となるリラクゼーションです。その砂をかけるのが『砂かけさん』なのです。
ただ砂をかけるだけだろうに。と甘く見てはいけません。認定試験を受けないとなることができない砂かけマイスターという勲章もあるぐらい技術が必要な職業なのです。気になる方は別府へ行ってみてください。
旅行記と家族の物語が合わさった本作。読了後、僕は青空を見上げてみました。すると、いつもより感慨深い気持ちがわいてきました。青空が一緒なら逃げることも悪くない気がします。
そんな壮大な勇気をもらった一冊でありました。
心に残った言葉・名言
「旦那さんの責任はご家族の責任だとは思いませんか」
失われた"きのう"を辿り、"あした"の思い出を新たに作る。この写真館で撮られる新しい写真は、"あした"を向く覚悟をした人たちの背中を押すものなのかもしれない。
子どもだから何もできないかもしれない。だけど、子どもだからこそ、助けを求めていいんだ。世の中の大人の全員が助けてくれるわけじゃないかもしれない。だけど、誰か一人が助けてくれなくても、次に声をかける別の一人は、きっと助けてくれる。
辻村深月さんの他作品
最後に
急遽逃避行をしなければならなくなった人、家族が大好きな人、砂かけマイスターの人にはおすすめなので、ぜひ読んでみてね!
それでは本日はこのへんで。
ご覧いただきありがとうございました。