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本と宴へようこそ。

どうも、宴です。
ラプンツェルは巨大な塔に幽閉されていましたが、どうやら現代でも同じような状況のラプンツェルがいるようです。一体どうすれば塔から脱出できるのでしょうか。
ということで、今回は山本文緒さんの『眠れるラプンツェル』をご紹介させていただきます。
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眠れるラプンツェル/山本文緒
最昨日も暇だった。明日もたぶん暇だろう。結婚6年目、専業主婦。子どもはいない。退屈でない暮らしなど、考えただけでゾッとする。多忙な夫は今夜も家に帰らない。この緩やかな生活に、猫と隣家の息子が飛び込んできてから、何かが崩れ始めた。封印したはずの衝動。少年との、二人だけの秘密。嘘は次第に周囲を巻き込んでー。マンション住まいの主婦の平凡な生活が一変する様を、ドラマティックに描いた傑作恋愛長編小説。(「BOOK」データベースより)
ハラハラ | 10/10点 |
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ドキドキ | 9/10点 |
感動 | 7/10点 |
切なさ | 9/10点 |
読みやすさ | 10/10点 |
総評 | 10/10点 |
書評・感想文
暇がもたらした弊害
働きたくない…どうにかして高級マンションに住み、何もせずにダラダラしてていいよ、と言ってくれる方が現れてくれないだろうか…と、僕は常日頃から空想に空想を重ね、そろそろ現実になってくれないだろうか、と思い悩んでいるのですが、どうやら暇は暇で、いろいろと辛かったりお悩みが出てきたりするようです。
働きたくない、と人前で堂々と胸をはって宣言できるうちが花なのかもしれない…そう感じたのは本作『眠れるラプンツェル』を読んだからです。
羨ましくて涎ものの勝ち組主婦の生活。ところが、そこに暇をぶち壊すような出来事がおきたのならば、ずっと忘れていたはずの感情を思い出してしまったのであれば、そして、それが楽しくて仕方がないと思ってしまったならば…感情に突き動かされた勝ち組主婦の心模様と行動がドラマティックに描かれる珠玉の一冊となっております。
崩れゆく暇
専業主婦というのは自由なようで不自由なようです。滲み出るような外への憧れ、その一部を垣間見ることができました。『暇』というのはどうやら『楽』とは少し違うようで、時として自分を苦しめることもあるみたいです。
ところが、とあるきっかけから『暇』という苦しみは崩壊の兆しをみせていきます。そして、止まることの出来ない激流となっていくのです。
あまりにも暇すぎると人は精神に変調をきたすのか、それとも元々そういう兆しがあったのかはわかりませんが、ある段階から僕は主人公の行動が全く読めず、ハラハラしてしまいました。
そんなことしてしまったら、おしまいですよ! と心の中で叫びましたが、もちろんその叫びは届きませんでした。それぐらいドキドキしますし、ワクワクが止められません。主人公と一緒ですね。きっと暇の外にある世界へ行きたかったのでしょう。最後の最後まで、主人公の行動は読めず、僕はただただ驚くしかありませんでした。
忙しいのも、暇なのもほどほどに
忙しすぎるのも身体に悪いとは思いますが、どうやら暇というのも身体に毒なようですね。本作を読んでつくづく思いました。
なので、冒頭で働きたくない…と言っておりましたが前言撤回します。そして、もし専業主婦の方を見かけたら、適度に暇ではない世界を作ってあげたいです。人妻ランドでも作ろうかと思います。いやいや、違います。そういういかがわしいお店ではないですし、いやらしい計画でもありません。本当です、マジでマジで。
ラプンツェルさん、とりあえずお疲れ様でした。心をお安め下さい。
心に残った言葉・名言
「急いで片づけてたもんだから」
「愛人を?」
「そう、押入れ、開けないでね」

どんなに淋しいこともつらいことも、何度も繰り返されると人は慣れる。書いているうちに減っていく鉛筆の芯のように、尖っていた感情が丸く鈍感になっていくのだ。

あーやだ。だから大人は嫌なのだ。どうして楽しかったことを反省したりするのだろう。

ここは緑の孤島に立つ塔で、私にはそこを下りる梯子がない。あったとしても、孤島を取り囲む社会に漕ぎだす舟がない。

塔の鍵は、私が持っていたのだ。
いつでも開けて、出て行ってもよかったのだ。
夫の言うことは正しかった。束縛していたのは夫ではなかった。
看守は、私だったのだ。

超能力が使えるはずの私にも、未来の姿は見えなかった。
何故なら、未来はまだ、決まっていないことだからだ。そうなのだと私は信じよう。
想像すると、本当になる。
生きていれば、いつかそれは本当になる。

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最後に

塔に幽閉されている人、専業主婦の人、近所の少年に勝手にあだ名をつけている人にはおすすめなので、ぜひ読んでみてね!
それでは本日はこのへんで。
ご覧いただきありがとうございました。
