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本と宴へようこそ。
どうも、宴です。
できることならば、好きなものに囲まれて生きていたいですよね。でも、そう簡単にはいかないのが人生です。そんな人生の中で、好きなもので生きていこうともがく人を発見いたしました。
ということで、今回は住野よるさんの『麦本三歩の好きなもの 第一集』をご紹介させていただきます。
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麦本三歩の好きなもの 第一集/住野よる
麦本三歩には好きなものがたくさんある。歩くこと。寝坊すること。本を読むこと。食べること。仕事先の図書館では先輩に怒られがちだけど、大好きなチーズ蒸しパンを食べれば気分は上々。休みの日は、お気に入りの音楽を聴きながらひとり時間を満喫するー。何も起こらない毎日だけどなんだか幸せ。そんな三歩の日常を描いた心温まる連作短篇集。(「BOOK」データベースより)
幸せ | 10/10点 |
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ドキドキ | 7/10点 |
感動 | 6/10点 |
切なさ | 7/10点 |
読みやすさ | 10/10点 |
総評 | 9/10点 |
書評・感想文
三歩は何もしていない
本作の主人公、麦本三歩は何もしていません。親族の遺産争いに巻き込まれているわけでも、殺人事件の容疑者として疑われているわけでも、魔王を倒そうとしているわけでもありません。
では、本作『麦本三歩の好きなもの』で、麦本三歩は主人公らしく物語を波立たせるために何をしているのか、と問われると答えるのが難しいのであります。なぜなら、何もしていないのですから。
そんな馬鹿なと思われるかもしれませんが、本作は、おっちょこちょいで、すぐに噛むし、仕事ができる方でもない三歩がただただ日々を奮闘していく。それだけの物語なのです。
三歩はそれで構わない
いやいや、それの何がおもしろいんだよ! とお怒りの方もいるかもしれません。これがね、なんとおもしろいのです。
確かに、何だこいつ…?とムカムカすることもありましたが、それも遥か昔の出来事。気がつくと、三歩の世界観にガッツリと取り込まれていて、三歩はそれでいいのだ、むしろそうでなくては、と思うようになっていたのです。
どうやら、三歩は小悪魔アゲハとはまた違う魔性をもつ女のようです。今や僕は三歩をかわいくて仕方がない生き物だと認識しています。違います、表紙がモモコグミカンパニーさんだからそう言っているわけではありません。抱きしめたいとか思っていません。
自分らしく生きる
何気ない日常を三歩らしく彩り、三歩らしく生きている三歩は本当に素敵です。結果的にに自分らしく生きられるって、何よりすごい物語ではないでしょうか。
三歩の好きなものを、どうぞご一緒に体感してみてください。ハマること間違いなしです。
まぁ、実際職場にこんな奴いたらイラッとするかもしれませんが…
心に残った言葉・名言
どこかの誰かが言っていた。無意味に散歩出来る人こそが価値ある人間なのだと。
無意味と大切じゃないは一緒じゃない。そして、無意味は意味の引き立て役でもない。
声や息が色として見えてしまうような先輩の可憐さに、胃の中からぐわっと、生クリームでデコレーションして食べたろか! という気持ちが湧き上がってきた気がしたけれど、人として心の中だけで殺しておく。
「どう変わってもいいよ。君がどれだけボロボロになっても、なんにもなくなっても、君が死んだとしても、君を好きなままの私が、少なくともいるから、安心して、生きてほしい」
ひょっとして森永派だったのだろうか。どっちも好きだけれど、ブルボンへのディスが怖い先輩の中にあるとしたら、三歩としては捨て置けない。いかに相手が美味しいご飯を作ってくれた怖い先輩だったとしても、ブルボンの為に戦わなくては。
好かれているという嬉しさは、嫌われているという怖さを薄めてはくれても、消してくれはしないのだ。
都会に行けばオシャレなのか何なのかも分かんないものを身に着けている子はいくらでもいるから、布団くらい着ててもいいんじゃないか。
極寒の地で最高級ミルクティーとか飲んだら感動で死んでしまうかもしれない。死因はなんだろう。凶器はそのぬくもり。
住野よるさんの他作品
最後に
のほほんとした心温まる小説が読みたい人、自分らしく生きていたい人、『ジレンマ』を時にはかっこつけて『ディレンマ』と言っちゃう人にはおすすめなので、ぜひ読んでみてね!
それでは本日はこのへんで。
ご覧いただきありがとうございました。