ご覧いただきありがとうございます。
どうも、宴です。
そんな物語があります。
桜井奈美さんの『殺した夫が帰ってきました』という小説です。
殺した夫が帰ってきました
都内のアパレルメーカーに勤務する鈴倉茉菜。茉菜は取引先に勤める穂高にしつこく言い寄られ悩んでいた。ある日、茉菜が帰宅しようとすると家の前で穂高に待ち伏せをされていた。茉菜の静止する声も聞かず、家の中に入ってこようとする穂高。その時、二人の前にある男が現れる。男は茉菜の夫を名乗り、穂高を追い返す。男はたしかに茉菜の夫・和希だった。しかし、茉菜が安堵することはなかった。なぜなら、和希はかつて茉菜が崖から突き落とし、間違いなく殺したはずで…。秘められた過去の愛と罪を追う、心をしめつける著者新境地のサスペンスミステリー!(「BOOK」データベースより)
殺したはずの夫は普通帰ってこない
小説において重要なのは、もちろん内容、物語の面白さです。
て、その次に手を抜いていけないのがタイトル。
やはりインパクトがあって、忘れられないようなタイトルの小説は心に残りますし、読みたくなっちゃいますよね。
たとえば、住野よるさんの『君の膵臓をたべたい』という小説。
え、すごいグロそう! と心が躍りまして読むに至りましたが、実際に膵臓を食べる気配はなく、グロさなどそっちぬけで爽やかな風か吹いていました。
どうやら膵臓は食べたいだけだったみたいです。
更にたとえば、村田沙耶香さんの『殺人出産』という小説。
え、すごいグロそう! と心が躍りましたが、どうせグロくなんか…ありました。
それなりにグロい風が吹いていたのです。
すっごいいい風でした。
そして、本作【殺した夫が帰ってきました』…
なんてことでしょう、ワクワクするではありませんか。
読みたくなってしまうではありませんか。
心にいつまでも刻まれてしまうではありませんか。
え、ゾンビなの? ホラーなの?
僕の止まらぬワクワクは大変グロいことになっていきました。
憎しみか、愛おしさか
殺したいものといえば? で第一位の夫(僕調べ)。
でも、実際に殺すことはなかなかできませんよね。
やっちゃった人たちもいますけど、大変なことになっていますよね。
ここにもまたひとり大変なことになってしまった人がいます。
物語冒頭、鈴倉茉菜は夫を殺したことを嘆きます。
それはこうなるはずではなかったという怨念のような後悔のような嘆きです。
ところが、なんとまぁ、夫は茉菜の元に帰ってきてしまったのです。
衝撃すぎです。
殺したはずの夫帰ってきた嫁。
自分を殺した嫁の元に帰ってきた夫。
そこからはじまるのは一体どんな物語なのか。
生まれるのは憎しみか、愛しさか。
全く想像のつかない展開が待ち受けています。
妻と夫の違和感
僕は今のところ夫どころか妻も殺していませんし、殺した妻が帰ってきてもいません。
なので、その2人の邂逅がどのような感じになるのかなどわかったものではないのですが…
とてつもない違和感を感じます。
それは殺してしまった夫への罪の気持ちなのか。
殺したはずの夫に見え隠れする怪しさなのか。
とにかく本作は、全編に渡り違和感に包まれています。
ボタンが上手くはまっていないような違和感。
この違和感こそが本作の1番の面白さです。
ぜひ、殺した嫁と殺したはずの夫の生活をお楽しみください。
本作がおすすめな人
本作がおすすめなのはこんな方々です。
夫を殺したい人
本作は夫を殺した鈴倉茉菜が鍵となる物語です。
鈴倉茉菜に共感するもよし、殺したはずの夫を自分の夫に当てはめてスカッとしたり、自分ならこうすると妄想を膨らませるのもよし。
夫を殺したい人には最高に楽しめる小説となっています。
誰にも言えない罪を犯した人
誰にも言えないし、裁かれていないけれど、過去にちょっとした罪を犯してしまった…
小学校の同級生に僕は宇宙人だと嘘をついたまま卒業してしまった…
そんなわだかまっている罪を犯した人に本作はぴったりです。
夫婦もののミステリーが読みたい人
心に残った言葉・名言
ひとり言が抑えられないのは、老化現象だって母が言っていたわ
仕事と人格が一緒なら、この世の悪人のすべては無職ってことになるけど、そうじゃないよね? 悪人はどこにでもいるよ。
総合評価
今回は桜井奈美さんの『殺した夫が帰ってきました』を紹介しました。
2013年、第十九回電撃小説大賞で大賞を受賞した『きじかくしの庭』でデビュー。21年、コミカライズ版『塀の中の美容室』が、第二十四回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞(「BOOK」データベースより)
物語 | 8/10点 |
---|---|
登場人物 | 4/10点 |
世界観 | 8/10点 |
構成 | 8/10点 |
文章 | 7/10点 |
総評 | 35/50点 |
ぜひ読んでみてくださいね!
それでは本日はこのへんで。
ご覧いただきありがとうございました。