ご覧いただきありがとうございます。
どうも、宴です。
今回はそんな物語を紹介させていただきます。
どうぞごゆるりとお楽しみください。
あくてえ / 山下 紘加
19歳小説家志望と90歳甲州弁のばばあ、溢れる悪態の応酬。第167回芥川賞候補作。(「BOOK」データベースより)
嫌悪感と哀しみ
悪態は嫌なものです
他人の悪態なんて、出来れば聞きたくないものランキング第1位に3年連続で輝いて殿堂入りしてもおかしくありせん。
本作は、そんな嫌悪感たっぷりの悪態が詰まった一冊です。
いくら小説だからってこんなにも悪態を聞かせてくるなんて…
何を考えているんだ!
と、思っていたのですが、僕が何を考えているんだ! の間違いでした。
悪態は小説で描くべき題材だったのです。
考えてみると悪態は悪口ではありません。
納得のいかないこと、ままならないことがあった時のため息なのです。
つい出てしまう気持ちなのです。
小説はつい出てしまう気持ちを描くのに、適した媒体。
つまり悪態は小説にとって、相性のいい題材なのです。
いやぁ、悪態って本当に最高ですね。
ばばあとの暮らし
悪態といえば、ついついてしまうものですが、ついついてしまう存在No.1をご存知ですか?
それは…
ばばあです。
おばあさんでも、おばあちゃんでもありません。
ばばあなんです。
ばばあと呼ばれてしまう存在なんです。
本作に出てくるばばあは見事なばばあでして、ばばあ中のばばあ、90歳、甲州弁のばばあです。
時にイラっとしますし、甲州弁もイラっとしますし、いろんなことにイラっとします。
でも、何故だか愛しくもあります。
つい悪態をついてしまう。
でも、本当はつきたくない気持ちもある。
本作は、そんなばばあと家族の物語です。
つい悪態をついてしまう、ままならない気持ちを思う存分堪能することができるでしょう。
悪態は逃げ場所
みなさんは辛い時にどうしていますか?
ひょっとして、真っ向から立ち向かっていませんか?
確かに生きるということは戦うことでもあります。
でも、戦い続けるのはしんどいはずです。
時には逃げ場が欲しくなることもあるはずです。
そんな時にいい方法があるんです。
そう、それは悪態。
悪態というのは、ひとつの逃げ場でもあるのです。
本当は言いたくないけど、言わなければ爆発しそうになる。
そんな憤懣の逃げ場。
本作は、それがリアルに描かれた一冊です。
悪態とは必死に生きれば生きるほど吐いてしまうものなのかもしれませんね。
本作がおすすめな人
本作がおすすめなのはこんな方々です。
悪態をついてしまう人
本作の9割は悪態で出来ています。
普段から悪態をついてしまう人には、わかるわかる! と共感することが多いことでしょう。
家族が訳ありの人
家族にはいろんな家族があります。
万引きする家族もいれば、ついつい有頂天になっちゃう狸の家族もいます。
本作の家族も少し訳あり。
不思議な家族の関係に、改めて家族とは何かを問われている気がします。
訳あり家族のみなさんには、読めば読み進めるほど、思うことが出てくるのではないでしょうか。
不満が多い人
心に残った言葉・名言
年をとると、世界との距離ができる。危うい距離だ。若い頃、何気なく歩いていた階段の段差も、容易に手が届いたはずのキッチンの戸棚も、ごく普通のボリュームでの会話のキャッチボールも、何もかも遠い
黙ってにこにこしてるのが優しさじゃないから
困難な日常に真摯に向き合おうとするほど、逃げ場は必要だった
総合評価
今回は山下 紘加さんの『あくてえ』を紹介しました。
1994年、東京都生まれ。現在、会社員。2015年、『ドール』で第五二回文藝賞を受賞(「BOOK」データベースより)
物語 | 6/10点 |
---|---|
登場人物 | 7/10点 |
世界観 | 8/10点 |
構成 | 7/10点 |
文章 | 8/10点 |
総評 | 36/50点 |
ぜひ読んでみてくださいね!
それでは本日はこのへんで。
ご覧いただきありがとうございました。