ご覧いただきありがとうございます。
ところで、こんなことを思う時はありませんか?

どうも!
死ぬときはラーメンのスープで溺死が希望、管理者の宴です。
今回は、不思議な人間というものを描いた不思議な小説がありましたので、紹介させていただきます。
ごゆるりとお楽しみください。
とんこつQ&A / 今村 夏子
大将とぼっちゃんが切り盛りする中華料理店とんこつで働き始めた「わたし」。「いらっしゃいませ」を言えるようになり、居場所を見つけたはずだった。あの女が新たに雇われるまではー(「とんこつQ&A」)。姉の同級生には、とんでもない嘘つき少年がいた。父いわく、そういう奴はそのうち消えていなくなってしまうらしいが…(「嘘の道」)。人間の取り返しのつかない刹那を描いた4篇を収録。待望の最新作品集!(「BOOK」データベースより)

変わらないもの
世の中も時代も変わっていくものです。
「君だけは変わらないでいてね」と親の都合離れ離れになってしまう幼馴染に言われても、「変われ!」と強盗に脅されても、「君は変わらないといけない」と厚生施設の先生に言われても、無駄です、変わりません。
けれども、変わらないものもあります。
それは今村夏子さんのクオリティ。
正体はわからないのだけれど、心に絡みついて離れない胃もたれのようなもの。
ああ、重い、何なのだこれは、と思わずつぶやいてしまうような何か。
今村夏子さんの作品を読むと、そういう正体のわからないもので、毎度毎度が胸がいっぱいいっぱいになってしまうのです。
本作『とんこつQ&A』も、もちろんのこと変わらないクオリティで、今村夏子節をソーラン節のように踊りあげています。
どっこいしょどっこいしょと。
イントロは表題作、『とんこつQ&A』から。
ラーメンのスープような、濃厚で痛快なメロディをお楽しみください。
なんやねん
『とんこつ』
それは豚の骨のことであります。
大抵の場合は、とんこつラーメンの愛称として使われていることが多いのではないでしょうか。
「とんこつひとつください!」と注文して豚の骨がやってくるのを待ち望んでいる人を、僕は見たことがありません。
どこの馬の骨ですか、そいつは。
そして、『Q&A』
『Q』クエスチョンと『A』アンサー、つまり質問と答えですね。
それが合体するとあらびっくり、『とんこつQ&A』になるのです。
で、みんな思うわけです、「なんやねんとんこつQ&Aって!」と。
ということで、全くどんな話なのか想像もつかないので、読んでみると「なんやねん!」。
そう、「なんやねん!」の嵐だったんです。
最初は主人公の成長話かと思いきや、あれ、何だか違う。
主人公の憤懣を描く物語なのかな…うーん、違うな。
あ、ちょっと怖い話になるのかな? …いや、違う。
なんやねん!
とんこつQ&Aという物語は、とにかく極上の「なんやねん!」をくれます。
そして、これこれ、これが今村夏子さんだよ〜! という喜びに打ち震えることでしょう。
ぶるぶるとね、ぶるぶると。
さぁどうぞ、周りの目なんか気にせず、存分に震えちゃってください。
人間の弱さと怖さ
本作は表題作を合わせて4篇が収録されています。
表題作『とんこつQ&A』は、なんやねん! をくれるお話でした。
それでは、他3篇は何をくれるのか?
なんとありがたいことに、人間の弱さと怖さ、そして、切なさをくれるんですね。
クズさ、と言い換えてもいいかもしれません。
たとえば、『嘘の道』という物語では、人間の弱いからこその怯えや身勝手さが招く地獄のようなものが描かれています。
仕方ないこともあるとは言え、同じ人間として怖いな、と感じます。
他2篇に関しても、人間の弱さと怖さと切なさをいろんな角度から、違和感と共に描かれています。
ああ、人間って…と思いますし、小説ってまだまだいろんな可能性があるのかもしれないな、と思い知らされました。
人間の弱さと怖さになんでやねん!
とんこつQ&Aはハマればハマるほどにハマっちゃう今村夏子さんらしい作品です。
ぜひとも、チェックしてみてくださいね。
心に残った言葉・名言
Q15.メニューにとんこつラーメンがないのに、どうしてお店の名前は"とんこつ"なの?
総合評価
今回は今村 夏子さんの『とんこつQ&A』を紹介しました。
1980年、広島県生まれ。2010年「あたらしい娘」で第26回太宰治賞を受賞しデビュー。「こちらあみ子」と改題し、同作と新作中編「ピクニック」を収めた『こちらあみ子』で2011年に第24回三島由紀夫賞を受賞。2017年『あひる』で第5回河合隼雄物語賞、『星の子』で第39回野間文芸新人賞、2019年「むらさきのスカートの女」で第161回芥川賞を受賞(「BOOK」データベースより)
物語 | 7/10点 |
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登場人物 | 8/10点 |
世界観 | 10/10点 |
構成 | 8/10点 |
文章 | 10/10点 |
総評 | 42/50点 |
ぜひ読んでみてくださいね!
それでは本日はこのへんで。
ご覧いただきありがとうございました。
