ご覧いただきありがとうございます。
PON!と宴へようこそ。
どうも、アイアンメイデンに抱かれて眠りたい宴です。
どんな愛情表現にも耐えてみせる自信があります。
さて、そんなわけで今回は『キャンプに目がないのであれば『愚かな薔薇』で気分を味わいましょう』をお届けいたします。
キャンプに目がない
いやぁ、僕ね、目がないんです。
え、何にって...?
そりゃもう、キャンプですよ、キャンプ。
キャンプしかないでしょうに。
僕は昔からキャンプが大好きで、ご近所さんからは「キャンプの申し子だね」とはやし立てられ評判でした。
キャンプがある時なんかは周りのみんなに『キャンプ様』とか『キャンプ神』とか呼ばれていたものです。
その中でも1番楽しみなキャンプが、詳細を全く知らされないキャンプです。
よくわからないけれど、とりあえず親に「行ってきなさい」と言われるキャンプほど心を騒がせるものはありませんでした。
これから何がおこるのか全く分からない…
それこそがキャンプの楽しさを引き立てる栄養剤であり、プロテインなのです。
いやぁ、思い出すなぁ。
とくにあの虚ろ舟乗りの適性を見極めるキャンプは最高だったなぁ…
虚ろ舟乗り
あのキャンプは本当にもうてんやわんやでしたね。
虚ろ舟乗りになるのがあんなに大変だったなんて…
…え?
ああ、すいません、そうかそうか。
虚ろ舟乗りって何? って話ですよね。
ごめんなさい、僕ね、いつも説明足りなくて、キャンプの時なんか周りからよく「誰もがキャンプファイヤーを知っていると思うなよ!」と叱られたりするんですよ。
いけないいけない。
虚ろ舟乗りというのは、舟に乗って外海…まぁ、宇宙船に乗って宇宙を巡る、みたいなイメージをしていただければいいかと思います。
僕も知らされてなかったものだから、びっくりしちゃったんですけど、何だかカッコいい! と思って、気づいた時はワクワクが止まりませんでした。
暴走機関車トーマスのようでした。
でも、何でそんなことをしなくちゃいかないんだろう? と疑問に思いまして、周りの子に聞いてみたんです。
すると、地球はいつか終わりが来るそうで、そのために星々へと旅立たなければいけないそうなんです。
とはいえ、誰もが簡単に行けるわけではないから適正のある子どもを集めてキャンプをするんですって。
うわぁ…!
なんて壮大なのでしょうか。
すごいです。
そういう人なれるなんて、夢のようです。
ぜひとも虚ろ舟乗りになってみたいです!
血切りと変質
でも、どうやら訓練をすればなれる、とかそういう簡単な話ではないようで…
適切があるかどうかは神のみぞ知るそうなんです。
つまりキャンプ参加者みんながみんななれるというわけではないということですね。
ああ、どうかなぁ、僕はなれるのかな。
なりたいなぁ…
でも、適正ってどうやって見極めるのでしょうか。
気になったので周りの子にそっと訊いてみたんです。
大人たちには訊きづらい雰囲気があったのでね。
すると、いろいろと情報が判明したのですが…
え…!
血切り…?
な、何それ…人間の血を…?
う、うう嘘でしょ!?
そ、そんなの、む、無理無理!
僕には無理です!!
え…?
変質…?
な、何なの…?
人間にそんなことがおきてしまうの…?
もうそれって...バケモノなのでは…!?
え…?
ああ、そうなんですね…
どうやらこの町は聖地のような場所らしく、ここでキャンプをすることによって自然と適性が出やすくなるそうです。
ということは、僕もこの町にい続ければ、やがて変化がおきるとでもいうのでしょうか?
変質して、血切りを…!?
い、いやぁー!
噂のあの子
虚ろ舟乗りはカッコよさげだったのですが、僕には荷が重いかもしれません。
というか、周りの子はみんな受け入れているのでしょうか?
もう逃げてしまおうかなぁ、と悶々としていたところ、僕と同じように血切りに抵抗のある子を見つけたんです。
親からも詳しいことは言われなかったようで、僕と同じ境遇でした。
ああ、君はオアシスかもしれない…
よし、早速仲良くなるため話しかけてみよう。
あわよくば…へっへっへ。
と新世界の神になる計画ぐらいよからぬことを企んでいたのですが…
その子に関する妙な噂話を聞いてしまったんです。
あくまで噂話なんですけど、彼女のご両親は亡くなっていまして、で、それがどうやらワケありといいますか、ミステリーといいますか、ちょっと不思議で奇妙なんですよね。
僕はそのあと、町から逃げてしまったのでわからないのですが…
彼女は大丈夫だったのかなぁ…?
愚かな薔薇|恩田陸
そんな物語がここにあります。
SF | 10/10点 |
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キャンプ | 9/10点 |
切なさ | 9/10点 |
吸血 | 8/10点 |
- 吸血鬼ファンタジーを読みたい人
- 宇宙かキャンプへ行きたい人
- 村の物語を読みたい人
みなさんは虚ろ舟乗りになりたいですか?
ああ、そうなんですね。
それはちょうどよかったです。
本作は虚ろ舟乗りに纏わる吸血鬼のようなファンタジーです。
虚ろ舟乗りの適正を確かめる過程はリアルな世界からすると異常であり、小さな村の悪習ように感じられます。
主人公、奈智もそうでした。
周りの子とは違い、彼女はある事情から何も知らされず、虚ろ舟乗りの適正を確かめるキャンプに戸惑いを覚えます。
周りのみんなはそれが当たり前であり、憧れのようでもある。
けれど、奈智はそれに対して違和感や嫌悪感を抱いてしまう。
奈智と周りとの意識のズレ。
なのに、誘惑してくる本能。
僕たちは彼女に共感することでしょう。
そして、その果てに彼女が選んだ選択に感嘆することでしょう。
愚かな薔薇の行く末にご期待ください。
聡いバラは、咲いて、散って、ちゃんと枯れるの。だから賢いのよ
だけど、愚かなバラは枯れない。咲いたまま、永遠に散らないし、枯れない。だから愚かなバラ、というの
もしかして、表だと思っていた世界は、裏だったのではないか?
それでは本日はこのへんで。
ご覧いただきありがとうございました。