その森の入り口はハンブルク空港。

 
ご来訪に感謝。
ところで、こんなことを思う時がないだろうか?
 

 

  • ビートルズ『ノルウェイの森』は名曲だ。
  • 激しく混乱し、動揺している。
  • 自分が今どこにいるのかわからない。

 

ちょうどよかった。

そんな人にオススメの小説がある。

村上 春樹さんの『ノルウェイの森』だ。

 

あらすじ

暗く重たい雨雲をくぐり抜け、飛行機がハンブルク空港に着陸すると、天井のスピーカーから小さな音でビートルズの『ノルウェイの森』が流れ出した。僕は一九六九年、もうすぐ二十歳になろうとする秋のできごとを思い出し、激しく混乱し、動揺していた。限りない喪失と再生を描き新境地を拓いた長編小説。(「BOOK」データベースより)

 

ノルウェイの森

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僕は激しく混乱し、動揺していた。空を自由に泳ぎ回る雲のように掴めない。何か大事なものを無くした気分に駆られる。この気持ちは、スペイン語でも、スワヒリ語でも、象形文字でも、ダイ語でも言葉に表せない。

 

火傷のようにヒリヒリと。

喪失とも焦燥とも取れないこの感覚は僕の深い部分をチクチク刺激する。こそばゆくて、火傷のようにヒリヒリと頭の中に侵入してくる。やめろ、やめてくれ、と言うのに、いやよいやよも好きのうち、だと勘違いしているのか全然やめてくれない。

 

分かりやすい形あるもの。

本作は生と死を熱く語っているわけでも、大いなる目的にたどり着いたわけでも、大層な目標に達したわけでもない。分かりやすい形あるものを、僕に投げつけてこない。

 

まるで気体である。地縛霊に取り憑かれたかのように、スッと僕の中に入り込む。全身が支配されて身動きが取れない。

 

止まる気はない。

やがてフルマラソンを仮装して走り切ったような心地よさに包まれる。疲れた。そうだ、もう何も考えなくていいのだ。

 

本作が僕の頭の中で、グルグルと回り続けている。止まる気はないようだ。

 

 
それならそれで構わない。 

 

辿り着いた場所。

思い出は現実と直結するようにみえて、真っ直ぐに繋がっているわけではない。美化されたり、精神的な意味合いが付け加えられたり、一流アーティストのパフォーマンスのように自由自在に蠢く。場合によって自分の意思すらも無関係に。

 

錯覚したまま。

壮大なプロローグから始まり、舞台は主人公の過去へとぶっ飛ぶ。過去はどうやら主人公を許さないようで、彼の周りにはどうしても不穏が付き纏っている。

 

そして不穏の近くには、死がいる。彼は一歩間違えてしまえば、その先へと進んでいたかもしれない。そこが幸せな場所だと錯覚したまま。盲目的に。

 

光もあった。

けれど彼の側には光もあった。現実を口の中で吟味するソムリエのような光。生きることそのもののような光

 

いろんなものに殴られ、叩かれたように翻弄されていく彼は滑稽にも見える。満身創痍、フラフラになりながらも彼は繋がりを求めて光の中へと突入していく。何かに縋るように。

 

その先は朧げで不確かな場所だった。

 

 
彼は一体どこにいるのだろう。