本と宴





もう1度噛みしめたい思い出。

 
ご来訪に感謝。
ところで、こんなことを思う時がないだろうか?
 

 

  • おやつが食べたい。
  • ライオンって強そうだ。
  • 1日1日を大事にして生きていきたい。

 

ちょうどよかった。

そんな人にオススメの小説がある。

小川 糸さんの『ライオンのおやつ』だ。

 

あらすじ

余命を告げられた雫は、残りの日々を瀬戸内の島のホスピスで過ごすことに決めた。そこでは毎週日曜日、入居者がもう一度食べたい思い出のおやつをリクエストできる「おやつの時間」があった―。毎日をもっと大切にしたくなる物語。(「BOOK」データベースより)

 

ライオンのおやつ

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あれ、無いぞあれがどこにいってしまったのだろう。いつ無くなったのだろう。

 

無くしてしまってから気づくことが沢山ある。落としてしまった財布のように、もう取り戻せないものがあることを、僕らは無くした後に気づく。それがどんなに大事だったか、ということにも。

 

瀬戸内の島にあるホスピス。

瀬戸内の島にあるホスピスは、親切な親戚のように思い出させてくれる。大切な何かがあったことを。生きたいという意思を。

 

当たり前の気持ち。

僕は余命を告げられたことはない。ありがたいことに、だから今生きられている。そんな僕に、本作は「生きたい」という当たり前の気持ちを認識させてくれた。


ホスピスにいる人たちにとって、生きることは当たり前ではない。すぐそこに迫っている死が、願っても届かない「生きたい」を切羽詰まったものにしてしまう。その状況は地獄そのものかもしれない。

 

聖母のように抱きとめる。

けれど、ホスピスのスタッフや島の人は彼らを、聖母のように抱きとめる。生きたいと思うことも、死にゆくことも、悪くはないのだと、安らかな気持ちにさせてくれる。

 
僕は生きたいと改めて思ったことはなかった。でも本作はを読んで、生きたいという強い意思が生まれた。唐突に当たり前ではなくなるかもしれない日常を大切に生きようと思う。

 

 
必死に生きたい。
 

 

思い出とおやつ。

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思い出は今という時間を充実したものにしてくれる。そういえばあの時こんなことがあった。こんなことをされて嬉しかった。あれが出来なくて悔しかった。どんな思い出だとしても、それを糧にして未来は輝いていく

 

おやつの時間。

けれど、人間は忘れやすい生き物である。僕のような忘れ物マイスターにかかれば、ドラクエが今何作目なのかも、ロンドンブーツが今何号なのかも忘れてしまう。

 
おやつの時間は忘れていた記憶を思い出す時間。あの時あの人と食べたアレ、美味しかったなぁ、あの時、あんなことがあったなぁ、こんなこと考えていたなぁ。

 
例え食べられないほどに自分が弱まっていたとしても、思い出を食べることはできる。噛めば噛むほどに、生きてきた時間を味わうことができる。

 

終わりゆく宿命。

ホスピスの入居者はいつか終わりゆく宿命。彼らが選んだおやつと思い出は他の入居者の心にも入り込み、ガタガタと揺れ動かす。それはゆりかごのような心地いい揺れだ。

 
おやつの時間を、雫は入居者やスタッフや犬と一緒にしっかりと噛み締めていく。その光景は生きていることの大切さを歌っているように聞こえた。

 

 
ラヴソングのように。