本と宴





80分しかもたない。

 
ご来訪に感謝。
ところで、こんなことを思う時がないだろうか?
 

 

  • 最近、記憶が80分しかもたない。
  • 大好きな数式がある。
  • 逆に数学が嫌いだ。

 

ちょうどよかった。

そんな人にオススメの小説がある。

小川 洋子さんの『博士の愛した数式』だ。

 

あらすじ

「ぼくの記憶は80分しかもたない」博士の背広の袖には、そう書かれた古びたメモが留められていた―記憶力を失った博士にとって、私は常に“新しい”家政婦。博士は“初対面”の私に、靴のサイズや誕生日を尋ねた。数字が博士の言葉だった。やがて私の10歳の息子が加わり、ぎこちない日々は驚きと歓びに満ちたものに変わった。あまりに悲しく暖かい、奇跡の愛の物語。第1回本屋大賞受賞。(「BOOK」データベースより)

 

博士の愛した数式

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数学…


僕はその言葉を耳にする度に、嘔吐でもしてやろうか、といつも思う。数学と僕の関係は初対面から最悪で、犬猿とかそういう動物の諍いでは表せないぐらい拗れてしまっている。もうどうしようもない。

 

数学を愛している博士。

そんな僕が忌み嫌い、末代まで祟ってやろうと決意あらたかな数学を愛している博士がいた。ただ難点が一つある。

 
僕は、数字が絡むと記憶が80分しかもたなく、掛け算の7の段も、因数分解も、cosとかtanだとかも記憶の海にキャッチアンドリリース、もうどこにいったかわからなくなるのだが、博士は全ての記憶が80分しかもたない。背広に張り付けられたメモが唯一の記憶の断片である。

 

暖かい空間へと。

そんな博士と家政婦のコミュニケーションは数字。途中から家政婦の息子も加わり、数字の宴は3人を暖かい空間へと誘ってくれる。

 
博士の小動物のように数学を愛でている光景を見ると、数学も可愛いのでははいかしらん、食わず嫌いなのかもしれないな、と訝りもしたが、本作に出てくる数字や数式はやはり僕を悩ます。好きにはなれないかもしれない。

 
けれど3人を繋げた数字と数字を愛する博士は、数字というものの偉大さと温もりを、僕に教えてくれた。それはとても大きくて、とても暖かいものだ。

 

 
√…とは一体?
 

 

博士と家政婦と息子と。

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何事にも熱中している人というのはかわいいし、素敵である。たまにやっかい極まりない人もいるが、そんなものはとらえ方次第。数字に熱中している博士は素敵である。

 
きっと家政婦もそう思ったのではないだろうか。仕事熱心だったこともあるだろうが。

 

数字は記憶という障害をこえて。

博士と家政婦と息子。3人は数字を通して会話をする。80分しか記憶がもたない博士ではあるが、数字は障害をこえて、3人を繋いでいく。

 
これは家族というものだ。もちろん血は繋がっていないし、ビジネス的な関係でもあるのだが、数字に夢中な博士と過ごしている時間は、家族のような絆が3人の中に芽生えている。

 

継続中である。

80分しか記憶がもたないことで生まれる弊害もあるけれど、愛はどんなものをも超えていける可能性があるのだと思い知った。

 
きっと愛は80分以上を超えて継続中であると思う。

 

 
愛は博士を救う。