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どうも、宴です。
夢の国に生まれれば、夢だけで生きれたのかもしれない。でも、夢の国『ネヴァーランド』にあるのは夢だけではありませんでした。夢なら覚めてほしいぐらいの残酷さも、盛りだくさんだったのです。
ということで、今回は小林泰三さんの『ティンカー・ベル殺し』をご紹介させていただきます。
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ティンカー・ベル殺し/小林泰三
夢の中では間抜けな“蜥蝪のビル”になってしまう大学院生・井森建。彼はある日見た夢の中で、活溌な少年ピーター・パンと心優しい少女ウェンディ、そして妖精ティンカー・ベルらに拾われ、ネヴァーランドと呼ばれる島へやってくる。だが、ピーターは持ち前の残酷さで、敵である海賊のみならず、己の仲間である幼い“迷子たち”すらカジュアル感覚で殺害する、根っからの殺人鬼であった。そんなピーターの魔手は、彼を慕うティンカー・ベルにまで迫り…ネヴァーランドの妖精惨殺事件を追うのは殺人鬼ピーター・パン!(「BOOK」データベースより)
残酷さ | 10/10点 |
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ドキドキ | 9/10点 |
感動 | 4/10点 |
切なさ | 8/10点 |
読みやすさ | 9/10点 |
総評 | 9/10点 |
書評・感想文
夢と現実が交差
アリス殺し、クララ殺し、ドロシイ殺し…これまでにも小林泰三さんはいろんなメルヘンを殺害してきました。メルヘンに彼女を寝取られでもしたのでしょうか。
そして、今回満を持して、「よし、殺そう」と企まれたのが本作『ティンカー・ベル殺し』。子どもたちの味方である『ピーター・パン』の意外な真実に触れつつ、夢と現実を行き来するサスペンスチックなミステリーなのでございます。
シリーズ第4弾で、前作の登場人物や知っておいた方がおもしろい部分もありますが、読まなくてもとくに問題はなし。むしろクオリティがあがっている分、本作を読んでおもしろければ前作をプレイバックしちゃうのもアリかもしれません。
流れとしては前作までと同様、夢の世界のキャラクターと現実世界の人間がリンクし、互いに影響し合う。そして、この設定を利用したハラハラドキドキの事件が巻き起こっていくわけです。
ネヴァーランド
今回の舞台はかの有名な『ネヴァーランド』。ところで、僕はピーター・パン情報をほとんど知らない夢のない子ども時代を過ごしてきたのですが、イメージとしてはピーター・パンは子どもの味方で、ネヴァーランドは夢のような国、という印象でございました。
が、何なのでございましょう。このネヴァーランドの世界は…!
絶対的な存在として君臨し、子どものままであるが故の残虐非道な行為を平然と行うピーター・パン。
いつもどこかで争いが巻き起こる血生臭いネヴァーランド。
主人公の夢キャラクターである蜥蜴のビルとピーター・パンのトンチンカンなやりとりには苦笑するけれども、そんなもの吹き飛ぶぐらいに夢が壊されていくではありませんか。
どうやら原作のピーター・パンは割と血なまぐさいようです。なので忠実といえば忠実。でも、これはすごい。寺田心くんとか子供店長には絶対に読ませられない。
ワクワクが止まらない!
血で血を洗うネヴァーランドの影響は、リンクしている現実世界にも影響をおよぼします。夢の世界と現実の世界から放たれる殺伐とした緊迫の展開に、心がどこか遠くに持っていかれそうになってしまいます。もうどちらからも目と心が離せない!
その果てに真実と救いはあるのか。この流れから一体どういうクライマックスを迎えるのか。最後の最後まで疑心暗鬼がフルスロットルで回転中。ワクワクが止まることを知らない一冊でした。
心に残った言葉・名言
「友達を食べてはいけないんだよ」

「あなた、遺体を食べたのね」

ワトソンと言えば、おまえに決まっているだろ。ワトソン以外の名前でおまえのことを呼ぶやつがいたら、即刻死刑だ。わかったか、ビル?」
「ピーター、自殺するの?」

今日何回唾を飲み込んだとか、今日何回瞬きをしたとか、今日何回息をしたとか、答えられるか? それと同じで殺した妖精の数なんかいちいち覚えちゃいない。

ピーター・パンは成長することも死ぬこともないんだ。

死ぬってことは物凄い大冒険なんだぞ!

小林泰三さんの他作品
最後に

ネヴァーランドに行きたい人、ピーター・パンが大好きな人、ここ最近夢の中で蜥蜴になっている人にはおすすめだから、ぜひ読んでみてね。
それでは本日はこのへんで。
ご覧いただきありがとうございました。
