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本と宴へようこそ。
どうも、宴です。
コロナ禍ではなくても、心がぎすぎすしてしまった時には癒しが欲しいですよね。ご安心ください。ここに心が温まってほっこりするような物語がございます。
ということで、今回は奥田英朗さんの『コロナと潜水服』をご紹介させていただきます。
<おすすめ記事>
コロナと潜水服/奥田英朗
ある理由で家を出た小説家が、葉山の古民家に一時避難。生活を満喫するも、そこで出会ったのは(「海の家」)。早期退職の勧告に応じず、追い出し部屋に追いやられた男性が、新たに始めたこととは(「ファイトクラブ」)。人気プロ野球選手と付き合うフリー女性アナウンサー。恋愛相談に訪れた先でのアドバイスとは(「占い師」)。五歳の息子には、新型コロナウイルスが感知できる?パパがとった究極の対応策とは(「コロナと潜水服」)。ずっと欲しかった古いイタリア車を手に入れ乗り出すと、不思議なことが次々に起こって(「パンダに乗って」)。コロナ禍の世界に贈る愛と奇想の奥田マジック。紙の本にだけ、作中の登場曲が楽しめるSpotifyのプレイリスト付き!!(「BOOK」データベースより)
ほっこり | 10/10点 |
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ドキドキ | 6/10点 |
感動 | 7/10点 |
切なさ | 7/10点 |
読みやすさ | 10/10点 |
総評 | 9/10点 |
書評・感想文
心を癒したい
コロナ禍は大変です。緊急事態宣言の時はとくに大変でした。暇で暇を塗り潰してましたし、心もギスギスと荒んで、このままだと悪の心が芽生えて世界を脅かす存在になるのではないかと、気が気ではなかったです。
そんな時は本作『コロナと潜水服』が精神安定剤として効力を発揮します。僕がこの作品を読んだ時は、大分落ち着いてはいましたけど、それでもまだコロナの影響は他人事ではありません。荒んだ心を癒さなければならないのです。
本作は短編集でして、どの物語にも不思議な出来事が起こります。怪奇現象であったり、特殊な力であったり。でも、おどろおどろしいものではありません。むしろこれは人の心を癒すイリュージョン。ハートウォーミングなマジックです。
潜水服
表題作『コロナと潜水服』では、主人公の子どもがコロナを感知できる疑惑が浮上。それを間に受けた主人公は、コロナにかかったと判断し、潜水服を着る決断をします。
ここで読み手は、まず、ふふ、と笑ってしまうことでしょう。さらに主人公は潜水服で外へ出ます。判断が保健所ではないので外には出られるのです。
考えてみてもください。街で潜水服を着た人間を見たらどうなることでしょう。まず驚くと思いますが、その後、ふふ、と笑ってしまうこと間違いなしです。コロナ禍とはいえ、何だか微笑ましいものを見た気になります。
ハートウォーミングなマジック
他の短編でも多種多様な不思議が待ち受けています。笑えるものであったり、切ないものであったり、熱くなるものであったり。そこには総じてハートウォーミングなマジックが仕掛けられています。
コロナ禍ではなくても、心が荒んでしまった時、本作『コロナと潜水服』を読めば、きっと殺伐とした気持ちが和らいでいくことでしょう。
そして、潜水服が着たくなることでしょう。僕は着たくなりましたが、家族に止められています。無念です。
心に残った言葉・名言
殴り合いって、どこか人間の根源に触れるものがあるね
船は沈んだら元も子もない。ときには乗組員も海に突き落とすってことだ
ブルペンはどこかの外国人選手の名前だとばかり思っていた。
そうか、車が走っていないから排気ガスが発生せず、本来の空の色を取り戻したのか。それを思うと、コロナの世界的感染は、地球を一度きれいにしようと神様が仕組んだことなのではないかと、そんな想像まで湧いて来る。
「今度のウイルスって、子供は罹りにくいみたいじゃない。だから人類は滅びない。霊長類ヒト科は強いのよ。伊達に何万年も子孫をつないできたわけじゃない」
奥田英朗さんの他作品
最後に
心が荒んでいる人、車を買ったらナビが誤作動する人、潜水服が普段着の人にはおすすめなので、ぜひ読んでみてね。
それでは本日はこのへんで。
ご覧いただきありがとうございました。