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本と宴へようこそ。
どうも、宴です。
日常には愛が溢れています。それはいろんな形をしていて、人それぞれの物語に花を添えます。川上未映子さんが描く日常はどんな花が添えられるのでしょうか。
ということで、今回は川上未映子さんの『愛の夢とか』をご紹介させていただきます。
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愛の夢とか/川上未映子
あのとき、ふたりが世界のすべてになったー。ピアノの音に誘われて始まった女どうしの交流を描く表題作「愛の夢とか」。別れた恋人との約束の植物園に向かう「日曜日はどこへ」他、なにげない日常の中でささやかな光を放つ瞬間を美しい言葉で綴った七つの物語。谷崎潤一郎賞受賞作にして著者初の短編集。(「BOOK」データベースより)
世界観 | 9/10点 |
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ドキドキ | 7/10点 |
感動 | 7/10点 |
切なさ | 9/10点 |
読みやすさ | 8/10点 |
総評 | 9/10点 |
書評・感想文
川上未映子さんがわからない
川上未映子さんがわかりません。なんでこんなグッとくる物語が書けるのか、思いつくのか、さっぱりなのです。
わからないにも関わらず、物語に、登場人物たちに引き込まれていくあの感じ。夢中で読み進めてしまう没頭感。気がつけば、「うんうん、そうだよね、わかるよ」と登場人物たちに同調している自分がいました。
世界に入り込む
本作『愛の夢とか』はそんな短編集です。川上未映子さん独特のリズムが、僕を本の中へと自然と引きづりこんでいくのです。
はじまりは些細な日常だったはずが、次第に広がる立体的な世界観。それは狂気と紙一重の場合もありますが、不思議なことにすんなりと入っていくことができます。共感とはまた違った感覚で、心地いい読書体験です。
どんなさよなら?
言葉たちもその手助けをかって出ています。
さよならと声にして言ってみると、それは自分の声じゃないように聞こえて、でも、だからといって、自分の声がどんなだったかなんて、最初から知らないわたしには思いだせるはずもなかった。(本文より引用)
ど、どんなさよならなの!? と想像が膨らみますね。
川上未映子さんでなければ作り出せない唯一無二の濃厚な世界。長編とは少し違った川上未映子さんが垣間見える一冊です。あ、お美しい…!
心に残った言葉・名言
テレビをみると、どんな夜も例外なくとても楽しい時間を過ごしているような気分になれてうれしい。抱きしめるどころか名を呼びあったことすらないものたちから贈られてくる贅沢な幇助。
誰も知らない場所なんて。どうやったって辿りつけるわけがなく、そんな場所はこの世界のどこにもありはしないのだ。
「こういうことをくりかえして、知らないあいだに人生が閉じていくのよ。楽しいときは短い。しんどい時間はうんと長い。まるでそのあいだに申しわけ程度に人生があるみたい」
「世界ではもっと最悪なことが起こりうるのよ。想像もできないくらい、ひどいことが起こりうるのよ。こんなところに生まれてくることは——それでも、素晴らしいことなの? 生まれてこなければ、最初からなにもないのに、こんなところにわたしは、これから」
「でも、家もそうですけど、家具も食器もベッドも、あなたの趣味の細々したものから何から何まで人に買ってもらったものなんじゃないですか? 花壇だって門だって、洋服だってぜんぶ旦那に買ってもらったものなんでしょう。そういうものに対して、ほんとに真剣にちょっとの疑いもなく、それらがぜんぶ自分のものだって自信満々に思えるのはどうしてなんですか? 結婚したら自動的にそういう意識になっちゃうってことなんですか?」
過去といまは関係ありそうでやっぱりないんだって。
川上未映子さんの他作品
最後に
川上未映子さんの世界に入り込みたい人、何気ない日常に光を感じたい人、前に住んでいた家をちょくちょく見に行っている人にはおすすめだから、ぜひ読んでみてね。
それでは本日はこのへんで。
ご覧いただきありがとうございました。