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本と宴へようこそ。
どうも、宴です。
人の技術はどこまでも進化を続けています。猫型ロボットも地球破壊爆弾もいつの日か作られる時が来るのかもしれませんね。もちろん工場で。
ということで、今回は小川洋子さんの『そこに工場があるかぎり』をご紹介させていただきます
そこに工場があるかぎり/小川洋子
日本のものづくりの愛しさと本質を作家の目で伝える。ベストセラー『科学の扉をノックする』に続く、小川洋子さんの工場見学エッセイ。(「BOOK」データベースより)
技術 | 10/10点 |
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ドキドキ | 6/10点 |
感動 | 7/10点 |
ためになる | 9/10点 |
読みやすさ | 7/10点 |
総評 | 7/10点 |
書評・感想文
工場と小川洋子さん
工場とはロマンです。そこで汗水垂らして働く人の面影を感じつつも、でーん、と聳え立つ様はヨーロッパの聖母大聖堂のよう。ネロとパトラッシュよ、永遠に、と感慨深くなります。
また、夜になると工場は昼間のふてぶてしさが嘘のように、美しく煌めくのです。以前僕が見た『工場萌え』というDVDには、たくさんのキレイで美しい工場たちが、その存在を見せびらかすかのようにそびえ立っていました。まるで神羅カンパニーのようです。
もちろん工場によっては、「そんなチャラチャラできるか!」と漢気を放ち、引き続きふてぶてしさを継続するのもあります。工場にも個性があるのです。
そして、小川洋子さん。『博士の愛した数式』という、僕が愛した小説があるのですが、これは本当に傑作。小説はリアルの中にどれだけのファンタジーを違和感なく自然に詰め込めるかが鍵となる、と僕は勝手に思っていますが、その匙加減が絶妙な作家さんなのです。
そんな工場と小川洋子さんの奇跡のコラボレーション。この二つが合わさって面白くないわけがないのです。
職人の技術と機械
本作はいろんな工場に小川洋子さんが出向き、取材をしていくという形式になっています。世にはいろんな工場があること、そして、近年はハイテク化が恐ろしいほどに進んでいるけれど、やはり人の技術とはすごいものなのだ、ということを知ることができます。いわゆる職人の技術というやつです。
機械も随分進化してきましたが、結局人の力には勝てないのかもしれません。人間の底力を見せつけられます。とはいえ、機械もなかなかやるやつなので、お互いの協力が大事なのだと思います。
偉大さを知る
内容としましては、工場がメインなので小川洋子さん節は控えめ。でも全くないわけでもなく、油断していると取材中の発見や感じたことを、「あくまで工場がメインですよ、職人さんが一番ですよ」といった大和撫子風な謙虚な姿勢で、さらりと放ってきます。そこに工場と職人さんへのリスペクトを感じます。
工場で働く人の偉大さ、そして、技術を知り、それを精一杯伝える小川洋子さんの文章に触れ、工場の偉大さを改めて痛感した一冊でした。すごいよ職人さん。すごいよ小川洋子さん。
心に残った言葉・名言
「雨が降ると、町工場から漏れた油で、道が虹みたいに七色に光るんですよ」
日本って何という無駄遣いをしているんでしょう。読み書き算数が当たり前にできる人たちを活躍させられないんですから。
日々、ロングセラー商品を作りながら、ある時、思いも寄らない新しい展開が拓ける。お菓子も小説も、どこか似ている気がする。
「食べることと遊ぶことは子どもの二大天職である」
小川洋子さんの他作品
最後に
工場が大好きな人、小川洋子さんが大好きな人、ためになるエッセイを読みたい人にはおすすめだから、ぜひ読んでみてね。
それでは本日はこのへんで。
ご覧いただきありがとうございました。