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本と宴へようこそ。
どうも、宴です。
終わる時はどうやっても終わるもの。でも、どうせ終わるのであれば、きちんとした終わりを迎えたいよね。そう、まさにグランド・フィナーレ。
ということで、今回は阿部和重さんの『グランド・フィナーレ』をご紹介させていただきます。
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グランド・フィナーレ/阿部和重
「二〇〇一年のクリスマスを境に、我が家の紐帯は解れ」すべてを失った“わたし”は故郷に還る。そして「バスの走行音がジングルベルみたいに聞こえだした日曜日の夕方」二人の女児と出会った。神町ー土地の因縁が紡ぐ物語。ここで何が終わり、はじまったのか。第132回芥川賞受賞作。(「BOOK」データベースより)
苦しさ | 8/10点 |
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ドキドキ | 6/10点 |
感動 | 6/10点 |
読みやすさ | 8/10点 |
総評 | 8/10点 |
書評・感想文
誘惑に弱い君だから
人間は弱い生き物です。ダメなことを、ダメ、とわかってはいながらも誘惑に勝てず行ってしまう…有名人の方でも麻薬がらみで何度も捕まっている方がいらっしゃいますが、強い意志がもてず、誘惑に勝つことができなかったのでしょう。
とはいえ、そんな人たちも抗おうともがいたはずです。ちょっとぐらいならいいのでは…いや、ダメだ! ああ、でも…
思弁的
本作『グランド・フィナーレ』には人間の弱さが描かれています。そして、その弱さに対して、どうすればいいのかわからず虚空を見つめる男の思弁的な言葉が宙に舞っています。
思弁的な小説というのは、その人物の偏屈だったり、偏った思考がどんどん頭の中に流れてきて、こいつは一体どうなってしまうだろうか、という好奇心と興味がどんどん膨らんでいくものです。共感し得ないのに、共感に近いものを抱いてしまう心の矛盾に自分自身ワクワクしてしまうのです。
グランドフィナーレへ
男は、はっきり言って最低野郎です。共感ポイントはほとんどありません。にも関わらず、物語にグイグイと引き摺り込まれていくのは、男が根っからの悪い人間ではないから。危ういバランスと思弁に心を掻き立てられ、気がつけば男はグランドフィナーレへとまっしぐら。
それは罪滅ぼしなのか、それとも男の中に元々あった正義なのか。人間の弱さ、その弱さがあるからこその人間を、本作は忠実に描いています。
心に残った言葉・名言
酔っ払いの饒舌ほど、この世の調和を乱すものはない。
都市化の推進というのは一方で、新市街地の周囲に無数の小さな田舎を同時に生み出してゆくことなのかもしれないとわたしは考えたりもした。
ルドルフは、水の中にのみ込まれる前に、渾身の力を振り絞って、摘み取ったお花を川岸まで投げて寄越して、遠ざかってゆく岸辺の恋人に向かってこう叫んだの。『僕を忘れないで!』って
阿部和重さんの他作品
最後に
過去にイケナイことをしていた人、それが発覚して窮地に立たされた人、その結果田舎に戻ってきた人にはおすすめだから、ぜひ読んでみてね。
それでは本日はこのへんで。
ご覧いただきありがとうございました。