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本と宴へようこそ。
どうも、宴です。
ケシゴムって便利ですが、春日...あ、カスがいっぱい出ちゃって困ることってありますよね。もしも、ケシゴムが嘘を消せるとしたならば、どれだけのカスが出てしまうのでしょうか。
ということで、今回は白河三兎さんの『角のないケシゴムは嘘を消せない』をご紹介させていただきます。
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角のないケシゴムは嘘を消せない/白河三兎
兄/信彦ー「しばらく家に泊めてよ」「無理」突然上京してきた妹のお願いを、俺は瞬殺するしかない。なぜならウチには…透明人間の恋人が住んでいるから。妹/琴里ー隣を歩いていた彼氏が忽然と消えた。見つけ出して殴らなきゃ、私の初恋は終われない!…でも、どうやってアイツは“消失”したんだろう?兄妹の恋路はいつしか重なり、新たな謎を孕んでいく。疾走!迷走!先の見えない恋と人生の行方は。(「BOOK」データベースより)
消失 | 10/10点 |
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ドキドキ | 8/10点 |
感動 | 7/10点 |
切なさ | 7/10点 |
読みやすさ | 7/10点 |
総評 | 7/10点 |
書評・感想文
透明人間は人類の夢です。大人気漫画『ワンピース』出演のサンジくんも語っていたように(スリラーバーグ編参照)、誰もが一度は夢見る禁断の願いであります。
ところがです。いやいや、待ってくれ、透明人間にも苦悩はあるのだ、そんな簡単に透明人間になりたいだなんて、なんと破廉恥なの! と声を上げた小説があります。
それが白河三兎さん『角のない消しゴムは嘘を消せない』でございます。妹と兄の視点を交互に繰り返しながらも、いつの間にか壮大な展開へと発展していく、切ない恋愛小説でもあり、ハラハラドキドキの透明人間と消失のファンタジーでもある一冊です。
妹の彼氏の消失。そして、兄は透明人間と同棲。これはどうなってしまうのだろう? どう物語は交差していくのだろう? と散々好奇心を煽られた挙句に、物語は予想もしない大きなものへと変わっていってしまいます。ワクワクと好奇心が悲鳴をあげています。
また、白河三兎さんの他作品と比べて少し印象が違うなぁ、と感じまして、それはなんでかなぁ? と首を傾げていたのですが、わかりました。文章の勢いが凄まじいのです。
これは妹琴音が凄まじいせいかと思われます。道を尋ねてきた日本人は親切だと信じてやまないだろう外人に暴言を吐き、子どもをガキだと言ってあしらうロックな女子、琴音。本作は彼女ありきの物語でもあります。
そして、白河三兎さんはいつも突飛な設定で読み手を驚かせてくれますが、やはり今作でも突飛魂を忘れてはいません。ある仕掛けにより、琴音の恋愛模様はがらりと風向きを変えます。これがまた切なさを助長するのです。
それでも、彼女の一途な想いは変わらないし、消しゴムなんかで消されてたまるか、と意気揚々とこの先の人生を歩いていくことでしょう。琴音さん、ファイトです。
角のないケシゴムは嘘を消せないのだから、大丈夫です、きっと。
心に残った言葉・名言
春が透明人間と遭遇しやすい季節という話は聞いたことがない。
「人と人が理解し合うには余計なものが多過ぎるんだよ」
きっと、人の上に立つには人を踏み付けても胸が痛まない鈍感さが不可欠なんだろう。
全ての出産は奇跡であり、全人類は一人一人が奇跡の人だ。
正義は一人一人の心の中にある。本当は誰もがヒーローなんだ。
白河三兎さんの他作品
最後に
切ない物語を読みたい人、彼氏が牛と共に消失した人、透明人間と同性している人にはおすすめだから、ぜひ読んでみてね。
それでは本日はこのへんで。
またのお越しをお待ちしております。