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本と宴へようこそ。
どうも、宴です。
どんなに抗おうとしても、巻き込まれる時はどうしたって巻き込まれてしまうものです。辛いことも苦しいことも砂嵐も誰にだってある人生のひとかけら。一穂ミチさんはそんな人に星をあげちゃいます。
ということで、今回は一穂ミチさんの『砂嵐に星屑』をご紹介させていただきます。
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砂嵐に星屑/一穂ミチ
出世コースでもない、恋愛もうくまできない。それでも続く人生。旬も過ぎ社内不倫の“前科”で腫れ物扱いの40代独身女性アナウンサー。娘とは冷戦状態、同期の早期退職に悩む50代の報道デスク。好きになった人がゲイで望みゼロなのに同居している20代タイムキーパー。向上心ゼロ、非正規の現状にぬるく絶望している30代AD…。世代も性別もバラバラな4人を驚愕の解像度で描く、連作短編集。(「BOOK」データベースより)
砂嵐 | 10/10点 |
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ドキドキ | 6/10点 |
感動 | 6/10点 |
切なさ | 7/10点 |
読みやすさ | 8/10点 |
総評 | 7/10点 |
書評・感想文
力強い一冊
人の悩みは尽きないもので、神様も大変だろうなぁ、と感慨深くなる今日この頃。本作『砂嵐に星屑』はテレビ局を舞台にした連作短編集です。
テレビ局(主に報道)で働く年代も職種もバラバラな登場人物たちが、爆発しそうなわだかまりや憤懣を抱え、それでもどうにか前へ進もうとする力強い一冊となっております。
人をよく見て、もっと知ること
物語は春夏秋冬に分かれていて、それぞれ種類の違う人生の世知辛さに蝕まれています。ある事情により東京に飛ばされ、戻ってきたアナウンサー。娘と同僚の早期退職に悩む報道デスク。好きになったゲイと暮らすタイムキーパー。何となくテレビ局で働くAD。みんな懸命に生きていますが、だからこその壁がそこにはありました。
朧げに仄めかされた苦悩が、徐々に明るみになり、爆発しそうなところでそれを止めてくれるのはやはり人です。人をもっとよく見て、人をもっと知っていくと、そこには幸せがあるのかもしれない…本作はそんなことを思わせてくれます。
応援歌であり、秘密道具
舞台はテレビ局でしたが、本作が与えてくれた前向きな希望は、どんな職業の人にもきっと刺さるはずです。
『砂嵐に星屑』は頑張って働く人への応援歌であり、背中を押してくれるドラえもんいらずのひみつ道具なのですから。
心に残った言葉・名言
再開発に次ぐ再開発で全容が見えてこないのは東京も同じだが、みんなそんなにサグラダ・ファミリアみたいな事業がやりたいの? とふしぎになってしまう。
おねしょの思い出を繰り返し語る親戚みたいに、古い情報ほど繰り返し拡散されるシステムはいったい何なのか。
あの子はひとりじゃないんだから、心細さを分かち合う相手がいるんだから、自分があれこれ考える必要はないって、気持ちや時間を割くのをやめた。いつからこんなけちな人間になっていたのだろう。
心折れる出来事というのは、傷の大小よりタイミングに左右されるのだろう。
恥じるな、引け目感じるなっていう圧もひとつの暴力やろってぼくは思う
薄い関わりであろうと縁は縁で、思いがけず誰かの魂にそっと指先が掠める瞬間というのは確かにあり、自分が望むと望まざるとに関係なく、尊い一瞬だと思う。それを疎んじたり軽んじたりしていたら、人の間で生きていけない。
一穂ミチさんの他作品
最後に
人生を頑張っている人、テレビ局にお勤めの人、不倫でどこかに飛ばされてしまった人人にはおすすめだから、ぜひ読んでみてね。
それでは本日はこのへんで。
ご覧いただきありがとうございました。